内容説明
セカイ系をめぐる諸問題について、ゼロ年代が終わりをつげようとするいま、時代的な意義と批評的な射程を捉え返し、広範かつ多様に展望する。また、セカイ系的な「リアル」を最も身近に体験してきた二〇代から三〇代の若手論者たちを中心とした初めての本格的なセカイ系評論集。
目次
1 社会とメディア―ネオリベラリズム・サイバースペース(セカイ系と例外状態;セカイ系とシリコンバレー精神―ポスト・サイバーパンク・エイジの諸相)
2 サブカルチャー―ライトノベル・アニメ・コミック(『イリヤの空』、崇高をめぐって;「セカイ系」作品の進化と頽落―「最終兵器彼女」、『灼眼のシャナ』、「エルフェンリート」;セカイ系ライトノベルにおける恋愛構造論)
3 文学―ミステリ・純文学(モナドロギーからみた舞城王太郎;虚空海鎮―『虚無への供物』論;セカイ系の終わりなき終わらなさ―佐藤友哉『世界の終わりの終わり』前後について;青木淳悟―ネオリベ時代の新しい小説(ヌーヴォー・ロマン))
4 表象と身体―映画・演劇(セカイへの信頼を取り戻すこと―ゼロ年代映画史試論;「セカイ」の全体性のうちで踊る方法―快快(faifai)論)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はすのこ
10
評論家はセカイ系の亡霊を追い続けているが、セカイ系は衒学的概念ではなく、ただのそれっぽいアニメ全体を指す用語であり、それでしかない。カタカナのセカイ系の無限的可能性から、漢字の世界を語る事は出来ないのに、敷衍に敷衍を重ねる。そんな一部始終を見たい方には本書をオススメする…。私はもういいかなぁ。2016/03/30
メルキド出版
8
笠井潔「セカイ系と例外状態」シュミット「例外状態」、宅間守と加藤智大、「コードギアス 反逆のルルーシュ」を主に『ゼロ年代の想像力』を批判する。中でも宇野常寛が提唱したセカイ系と決断主義の動員ゲーム=バトルロイヤルの分割をいずれもセカイ系的と喝破する論旨は鮮やか。またエヴァンゲリオンをセカイ系的な社会の消失と捉える宇野に対し、笠井は象徴的な父殺しが不可能になった社会の的確な反映だとする。宇野はセカイ系をひきこもりだと批判した。だかしかしいま現出している問題はシリアルキラーである。笠井の舌鋒はいまに通じる。2022/08/05
Takayuki Oohashi
5
この本は、全部読んだわけでなく、アニメやラノベなどの評論の所だけ読了しました。特に笠井潔の評論で、「コードギアス 反逆のルルーシュ」を論じている所が興味深かったです。笠井によると、この作品は憲法九条的平和主義に対する挑戦であるとのことです。ただのアニメにそんな社会的な意図があるというのは、サブカルを社会的に理解したい自分にとって非常に刺激を受けました(僕の主義信条はともかく)2015/01/07
メルキド出版
2
「序文『セカイ状』化する世界に向けて」限界小説研究会、藤田直哉「セカイ系の終わりなき終わらなさ―佐藤友哉『世界の終わりの終わり』前後について」 、岡和田晃「青木淳悟―ネオリベ時代の新しい小説(ヌーヴォー・ロマン)」読了。東浩紀が批判した佐々木敦の作家論隆盛予想に一日の長があるのではないかと思わせる評論2作だった。2009/11/02
漆黒猫
1
セカイ系というジャンルについて語った本。結構難しい事も書いている。極小的な人間関係が突然セカイの滅亡に関わるとかいうのが定義らしいが、いろいろなアニメやら例を挙げられている。売れているということは訴求効果はそれなりにあるのだろう。2022/11/11