ファイナンスのための確率微分方程式―ブラック=ショールズ公式入門

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  • サイズ A5判/ページ数 252p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784501617905
  • NDC分類 413.6
  • Cコード C3041

出版社内容情報

 十年前には,私はこのような数学的厳密さに欠ける本を書くことなど思いもよらなかった。当時は恥ずかしいという気持ちがあったし,今でも私の数学の仲間のほとんどがそのように考えている。しかし,学生や実務家たちとの交流から,平易でより多くの人びとにもわかる数学の本が望まれていることを確信した。
 私はこの本を,1992年ビクトリア大学ウエリントン校(ニュージーランド)の商学部の学生に対する確率微積分学コースの講義ノートとして書き始めた。私はポートフォリオ理論と投資解析の個人指導をやりそこねていたので,もっと他の得意な教科を担当するように期待されていた。当時,経済学と数学のスタッフたちの間ではブラック=ショールズのオプション・プライシングを扱おうという議論がなされていた。すでに確率ファイナンスに関するコースがチェーリッヒETH,コロンビア大学,スタンフォード大学などの先進的な研究機関で開設されていた。そして経済学や数学の学生やスタッフたちだけでなく,ファイナンス分野の実務家たちもこの新しいトピックを知るべきであるとの一般的な合意があった。
 まもなく,私は入門レベルの確率微積分学を教えるために利用できる文献がほとんど無いことに気付いた。「入門」と「確率微積分」との組合せそのものが矛盾している事実がよくわかった。確率微積分は上級の数学的テクニックを必要とし,測度論や関数解析や確率過程の基礎を知らないと完全には理解できない。しかし,私は初級確率論について知識のある人や微分や積分の法則を使いこなせる人であれば,興味さえあれば,確率微積分の主な考え方を理解できると確信している。この確信は,ビクトリア大学ウエリントン校での経済学,統計学および数学専攻の学生用のコースと,フローニンゲン大学の数学科における経験によって裏付けられている。私は1994年ローザンヌでのスイス・アクチュアリー協会のサマースクールや1997年フローニンゲン,および1998年5月レーベン大学でのファイナンス数学に関するワークショップにおいても同じような印象を持った。
 いろんな分野の同僚や友人および学生たちが私の講義ノートを読んで,これを一冊の本にするようにと奨めてくれた。これらの中には極値事象に関する本の共著者である Claidoa Kluppelberg と Paul Embrechts やウエリントンの統計・OR学科の元同僚である David Vere-Jones などがいる。Claudia は World Scientific 社の確率シリーズの編集者である Ole Barndrff-Nielsen と接触することを提案してくれた。彼は私がこの本を書いている間つねに激励してくれた。
 多くの同僚や学生たちが本書の校正をいろいろな段階で手伝ってくれた。とくにウエリントンの Leigh Robers とフローニンゲンの Bojan Basrack と Diemer Salome には感謝したい。彼らの批評は非常に助けになった。サセックス大学の Carole Proctor には大いに感謝します。彼女は文体的にも数学的にもつねに刺激的な論点の源であった。さらに,フローニンゲン大学の数学科の同僚および学生たちの暖かい支援に感謝の意を表します。
 Thomas Mikosch
Gronigen,June 1,1998

第1章 確率論と確率過程
1.1 確率論の基礎知識
  1.1.1 確率変数
  1.1.2 確率ベクトル
  1.1.3 独立と従属
 1.2 確率過程
 1.3 ブラウン運動
  1.3.1 定義と性質
  1.3.2 ブラウン運動から生成される過程
  1.3.3 ブラウン運動標本経路のシミュレーション
 1.4 条件つき期待値
  1.4.1 離散条件の下での条件つき期待値
  1.4.2 σ-集合体について
  1.4.3 条件つき期待値
  1.4.4 条件つき期待値の計算規則
  1.4.5 条件つき期待値の射影的性質
 1.5 マルチンゲール
  1.5.1 定義と性質
  1.5.2 例
  1.5.3 公平なゲームとしてのマルチンゲール
第2章 確率積分
 2.1 リーマン積分とリーマン=スチルチェス積分
  2.1.1 リーマン積分
  2.1.2 リーマン=スチルチェス積分
 2.2 伊藤積分
  2.2.1 動機となる例
  2.2.2 単純過程の伊藤確率積分
  2.2.3 伊藤確率積分
 2.3 伊藤の公式
  2.3.1 微分の連鎖法則
  2.3.2 伊藤の公式-簡単な場合-
  2.3.3 伊藤の公式の拡張
 2.4 ストラトノビッチ積分とその他の積分
第3章 確率微分方程式
 3.1 微分方程式
 3.2 伊藤確率微分方程式
  3.2.1 確率微分方程式とは
  3.2.2 伊藤の公式による伊藤確率微分方程式の解法
  3.2.3 ストラトノビッチ積分による伊藤微分方程式の解法
 3.3 線形微分方程式
  3.3.1 加法ノイズをもつ線形方程式
  3.3.2 乗法ノイズをもつ同次方程式
  3.3.3 一般の場合
  3.3.4 解の期待値と分散関数
 3.4 数値解
  3.4.1 オイラー近似
  3.4.2 ミルシュタイン近似
第4章 ファイナンスへの応用
 4.1 ブラック=ショールズの価格付け公式
  4.1.1 ファイナンス入門
  4.1.2 オプションとは?
  4.1.3 オプションの価格付け問題の数学的形式化
  4.1.4 ブラック=ショールズ公式
 4.2 速度変換による方法
  4.2.1 測度の変換とは?
  4.2.2 測度変換によるブラック=ショールズ公式の解釈
付録A 付録
 A.1 収束モード
 A.2 不等式
 A.3 ブラウン標本経路の性質
 A.4 一般伊藤確率積分の存在証明
 A.5 ラドン=ニコディムの定理
 A.6 条件つき期待値の存在と一意性の証明

付録B 記号

Bibliography(日本語)

Bibliography

索引

内容説明

確率論の基礎からファイナンスへの応用、ブラック=ショールズ公式の導出までを文系学生にも理解できるように解説。現代金融工学のエッセンス。

目次

第1章 確率論と確率過程(確率論の基礎知識;確率過程 ほか)
第2章 確率積分(リーマン積分とリーマン=スチルチェス積分;伊藤積分 ほか)
第3章 確率微分方程式(微分方程式;伊藤確率微分方程式 ほか)
第4章 ファイナンスへの応用(ブラック=ショールズの価格付け公式;測度変換による方法 ほか)

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