出版社内容情報
東京電機大学工学部第二部では,学生は勿論,一般の方々にも受講でき,試験に合格すれば単位収得も可能な公開科目を設置しています.筆者が推測するに,「電波に関心はあるが数式が多くて難解だ」という方や,「電波に関してあまり深く学ぶつもりはないが,一通りの知識は得ておきたい」という方はかなり居られるので,これらの方々を対象に1998年度から電波とその応用を開講しました.
幸いにして多くの熱心な受講者があり,配布資料が行き渡らなくて,ご迷惑をかけたこともありました.そこで,いっそのことテキストを書こうと思い立った次第です.執筆内容を決めるに当たって,次のような原則をたてました.
(1)受講者はある程度の電磁気学の知識を有していることを前提にする.
(2)しかし,微分,積分は使用しない.
(3)15回の講義回数を想定し,15章構成とする.
(4)前半8章を電波の基礎的な説明に当てる.
(5)後半7章を電波の応用に当て主なシステム,機器などを紹介する.
(6)1章は10ページとし,槻要,内容,問題から構成する.
(7)内容は4節,1節は2ページを原則とする.
(8)節は左側に説明,右側にこれに対応する図面,表を配置する.
(9)図面が少ない場合は解説,例題等を掲載する.
(10)問題はバラエティを持たせ,ヒントをつける.
電波の基礎としては,電波とは何か,電波の性質,アンテナ,電波伝搬,変調を取り上げて最低限必要と思われる事項を説明します.
1章では電磁波とはどういうものか,電波と電磁波はどう違うのか,電波はどのように応用されているかについて,2章では電波の速度,波長と周波数の関係,固有インピーダンス,ポインティングベクトルなどを解説します.
3,4章を使ってアンテナを概説します.3章では,電波の発生源,指向性,利得,インピーダンスなど,4章では,アンテナを線条,磁流,開口面,アレーに分けて,代表的なアンテナを紹介します.5,6章で,電波伝搬について述べます.5章では,自由空間伝搬のほか,色々な伝搬形態,6章では大地,大気,建物等の影響および周波数による伝搬の違いを述べます.
7,8章で変調を解説します.7章ではAMの色々,FM,PM,パルス変調などアナログ変調を,8章ではPCMの性質,ASK,FSK,PSK,スペクトル拡散などディジタル変調を説明します.
後半では,電波の応用面を述べます.この分野の技術は日進月歩ですから,現在最新と思って書いても,すぐ古くなってしまう危険性を持っています.しかし,そうなったらまた書き換えるつもりで,あえて紹介することにしました.
本書では,電波応用3分野の中でも最も脚光を浴びている通信に重点を置きました.9章では衛星通信の槻要,距離による分類,多元接続,アンテナのパタン制御を,10章では移動通信の移動システムとしての課題,電波利用上の課題,動向などについて述べます.11章では,FWA,無線LAN,無線ホームリンク,インターネットアクセスを取り上げました.12章は放送で,アナログ放送の槻要,衛星ディジタルおよび地上波ディジタル放送等を概説します.
13章ではレーダについて,レーダ方程式,パルスとCWレーダ,サーチとトラッキングレーダ等を紹介します.14章ではレーダホーミング,航空機管制,ITSを説明し,15章で,リモートセンシング,エネルギー応用,医療応用,免許不要の電波を取り上げました.
執筆に当たっては,数多くの資料,書籍を参考にさせていただきました.その主なものは巻末に列挙しました.各著者に対し深く感謝申し上げます.また,巻末には,付録として,本書を利用していただくに当たり参考になると思われる事項を集めてみました.
本書の刊行に当たっては,東京電機大学出版局植村八潮課長,松崎真理さんに多大のご指導とご援助を,TeXフォーマットの作成に当たっては三美印刷の松崎さんに,種々ご協力をいただきました.また,図面の作成,原稿のチェックなどで,工学部情報通信工学科電波応用研究室の皆さんに御世話になりました.あわせてお礼申し上げます.
思いきって書いてみたものの,自分の未熟さを痛感させられました.間違いや,ピントはずれの記述も多いことと思います.これらについては,大小にかかわらずご指摘賜れば幸いです.もし,刷を改める機会があれば,できるだけ充実させて行さたいと考えております.
2000年7月
著者しるす
1 電磁波とは
1.1 電磁波とは
1.2 アンペアの法則とファラデーの法則
1.3 電波と電磁波
1.4 電波の応用
章未問題1
2 電波の性質
2.1 波長と周波数
2.2 電界・磁界と進行方向
2.3 位相定数・固有インピーダンス
2.4 ポインティングベクトル
章未問題2
3 アンテナの基礎
3.1 電波の発生源
3.2 放射源間の関連
3.3 アンテナの指向性
3.4 利得・インピーダンス
章未聞題3
4 アンテナの色々
4.1 線条アンテナ
4.2 磁流アンテナ
4.3 開口面アンテナ
4.4 アレーアンテナ
章未聞題4
5 電波伝搬の基礎
5.1 自由空間内の電波伝搬
5.2 反射と屈折
5.3 回折
5.4 散乱・表面波
章未聞題5
6 電波伝搬の色々
6.1 大地・地形の影響
6.2 大気・電離層の影響
6.3 建物の影響
6.4 周波数による伝搬特性
章未開題6
7 アナログ変調
7.1 変調のいろいろ
7.2 振幅変調
7.3 角度変調
7.4 パルス変調
章未聞題7
8 ディジタル変調
8.1 PCMの特性
8.2 ASK,FSK,PSK
8.3 多値変調
8.4 スペクトル拡散
章未聞遭8
9 衛星通信
9.1 衛星通信の概要
9.2 衛星通信の利用形態
9.3 多元接続方式
9.4 ビーム制御
章未聞題9
10 移動通信
10.1 移動通信の概要
10.2 移動システムとしての課題
10.3 電波利用上の課題
10.4 移動通信の動向
章未開題10
11 その他の無線通信
11.1 固定無線アクセス
11.2 無線LAN
11.3 無線ホームリンク
11.4 インターネットアクセス
章未聞題11
12 放送
12.1 アナログ放送
12.2 衛星ディジタル放送
12.3 地上ディジタル放送
12.4 放送の動向
章未開題12
13 レーダ
13.1 レーダ方程式
13.2 パルスレーダとCWレーダ
13.3 サーチレーダとトラッキングレーダ
13.4 レーダ信号処理
章未聞題13
14 計測・制御
14.1 レーダホーミング
14.2 航空機用電波航法機器
14.3 ITS
章未聞題14
15 その他の応用
15.1 リモートセンシング
15.2 エネルギー応用
15.3 医療への応用
15.4 免許不要の電波
章未聞題15
付録
A.1 主要定数
A.2 量記号および単位記号
A.3 デシベル
A.3.1 相対値を表す場合
A.3.2 絶対値を表す場合
A.3.3 ネーパ
A.4 ベクトル
A.5 座標系とベクトル表示
A.6 三角関数・双曲線関数
A.7 近似式
A.8 確率密度関数
A.9 単位の名杯(接頭語)
A.10 ギリシャ文字
参考文献
索引
目次
電波とは
電波の性質
アンテナの基礎
アンテナの色々
電波伝搬の基礎
電波伝搬の色々
アナログ変調
ディジタル変調
衛星通信
移動通信〔ほか〕