内容説明
マリアナ沖海戦とは何だったのか?飛行機が主役であった太平洋での戦い。その中でも航空母艦対航空母艦の海戦は、他では見られないものといえる。昭和19年6月のマリアナ沖海戦は、日本9隻、アメリカ15隻の空母が参加するという、太平洋上、いや歴史上でも最大級の戦いであった。しかしその知名度は低い。漠然としたイメージで語られることが多いのである。これまで各航空隊の生い立ちからマリアナ沖海戦に至るまで、当時の生存者に調査した出版物はほとんど見られない。マリアナ沖海戦までにどのような訓練が実施され、どう戦い、そしてどうなったのか?本書は空母搭乗員にスポットをあて、これまで顧みられることの少なかった記録、記憶を、たんねんにつなぎ合わせ、マリアナ沖海戦の全貌を復元した労作である。
目次
母艦飛行隊、陸上基地へ
一航戦壊滅す
第二航空戦隊も陸上へ
次期作戦に備えて
低速の商船改造空母
一航戦再建へ
三航戦(六五三空)編成
第二航空戦隊、またもや再建
タウイタウイ
サイパンへ
決戦の日(六月十九日)
勝敗は決定的に(六月二〇日)
退却
マリアナ沖海戦総括
その後の空母飛行隊
著者等紹介
川崎まなぶ[カワサキマナブ]
昭和50年生まれ。東京電機大学工学部卒業、ネットワーク関連企業に勤めるエンジニア(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
90
戦史で無視されがちなミッドウェー海戦〜昭和20年2月の空母航空隊消滅、特攻に至るまでの苦闘を、史料の博捜と生存者の証言で辿った価値ある一冊。何せ生存者の生物的寿命が尽きつつある為、このタイミングでしか聞けなかった証言が満載である。東條首相の首を飛ばしたマリアナ決戦、その重要なエポックであるマリアナ沖海戦がなぜ敗北したかを余すことなく摘抉している。2024/09/03
兵衛介
5
確かに重要度の割には注目度が低く未だによくわからない点が多いマリアナ沖海戦について、非常によく調べてある。当事者へのインタビューも多く充実の一冊。アウトレンジ戦法は当時考えられる最も合理的戦法だった、よく言われる航空隊の練度不足も飛行時間でみれば実はハワイ攻撃時の機動部隊と大差なかった、などの意外な新知見もあり満足。根本的な敗因は通信や情報伝達の不備にあるのではと感得した。2011/09/25
roatsu
3
惨敗を喫しマリアナ諸島を救えず日本機動部隊が再起不能になった海戦ということは知られているが実態をここまで綿密に調べた著作はなかったのでは。貴重な写真もいくつか載せられており、史料として高い価値があると思う。それまでのソロモン方面の海空戦で貴重な母艦航空隊を五月雨式に投入して消耗しジリ貧の自軍戦力と強大化した米機動部隊の威力を無視して手前勝手な戦果を夢見たアウトレンジ戦法など成功するはずもなく。懸命に戦って散った将兵達がただ哀れである。2013/07/15
杞人
2
航空隊というものは、訓練や移動だけでどんどん機材や人員を消耗していくものなのだ。偵察や攻撃に成功したものの、洋上航法を誤り機位を失して自爆するとの最後の通信。そして掲載の出撃前の搭乗員集合写真。…南太平洋~マリアナの間の機動部隊の行動をまとめてくれる書籍は稀少なので内容も大変興味深かった。2009/08/28
Tatsu
1
海戦の生存者へのインタビューや関連資料などよく調べられており、良書だと言える。ただ海戦参加者の飛行時間についての推測(飛行練習生の経歴より推算して真珠湾参加者とほぼ同じ程度の飛行時間であったとの結論)は少し?かも・・。ただ、当時の零戦52型、21型、彗星、天山、99艦爆、などではいくら搭乗員の連度が高くても、当時の米海軍の防空網を突破することは難しかったと思われる上、遠距離攻撃は無線機の低性能や航法援助システムの欠如のため被害を増やしたとの結論にはうなづける。ソロモンの航空戦以降、米軍と日本軍との航空戦の2012/11/20
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