内容説明
内科診療から眼差す身体医学と精神医学の境界線。
目次
第1章 器質か心因か
第2章 鬼の首をとった気になる前に
第3章 心因反応の方程式
第4章 メスの深さ
第5章 “病気”でないことの伝え方
第6章 動揺が症状に影響を与える
著者等紹介
尾久守侑[オギュウカミユ]
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室。2014年横浜市立大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院で初期研修。2016年慶應義塾大学医学部精神・神経科に入局。慶應義塾大学病院、下総精神医療センター、静岡てんかん・神経医療センター、南多摩病院内科などに勤務。2018年慶應義塾大学医学部博士課程に入学し、現在に至る。精神保健指定医。精神科専門医。詩人としても活動しており、『国境とJK』(思潮社、2016、第22回中原中也賞最終候補)、『ASAPさみしくないよ』(思潮社、2018、第69回H氏賞最終候補)、『悪意Q47』(思潮社、2020、第9回エルスール財団新人賞受賞)などの著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Iwata Kentaro
14
こういう本が書けるという才能がすごいし、本を出す会社もすごい。「心因」に関しては各々異なるアプローチがあり、ぼくも若干異なるアプローチをしているけど、いずれにしてもアプローチは全て自らの体験(インプットによるアウトプット)だ。これは追体験しないと同じ体験ができない。が、文字化して未体験な人に「追体験」した気にさせるのはすごい技術を要する。本書はそれに、けっこう成功しているのではないか。2021/01/29
macho
13
心身の健康に関してこれまで考えていなかった方略を学べます。相撲の「心技体」がいかに真に迫った言葉か本書を読んで理解しました。器質を頭から離してはいけないこと、事柄に対するレッテル貼りの愚かさ、それらを踏まえた上で自分の発信する意見の大事さを確認できました。ハッとしたのは、自分が心因の増幅装置になりうる可能性があるということ。これには動揺しました。著者の名前はカミュと呼ぶようです。親は哲学意識してる?と思ったらやはりそのようです。『不条理』から光明を見出すカミュの哲学を感じることができる書籍。後輩本。感謝。2023/12/26
Satoshi Hara
6
再読。心因反応の方程式が秀逸で、これを意識すると身体疾患で説明のつきにくい患者さんの訴えを聞いても冷静に対応できるようになったと感じる。メスの深さや動揺、心身相関の患者さんへの伝え方、神経衰弱のゲシュタルトをつかんで引き算、除反応など、もう参考になることばかり。サイカイアトリーコンプレックスや思春期外来も読もう。2022/07/11
呼吸器内科医K
1
詩人もされているだけあって、文章が自由自在で読み応えがある。内容もとても考えさせられる。方程式の考え方は目から鱗だった。2021/02/10
さとし
0
心身医学を志している身なので「器質も心因も」のスタンスのつもりだが、心因よりになってしまうことには自覚的になるべきと感じる。心因反応の方程式はすごくしっくりきた。身体因の治療をしつつ、心因と脆弱性にアプローチしているイメージ。逆に、心因と脆弱性が大きすぎて身体因への治療が全く効かない症例はよく経験するしなあ。2021/01/28