出版社内容情報
《内容》 ◆本書は膨大な量の情報の中から，特に注目すべきトピックを選び，その分野の第一人者が内外の文献をふまえて最新の進歩を展望している.
◆文献抄録ではなく，その内容，評価が理解できる.
◆どのような重要な業績，文献があったかを確実にフォローできる.
◆主要文献を網羅しているので，reference sourceとしても極めて便利である.
序
20世紀を振り返ると，基礎医学の領域では遺伝子の発見に引き続く分子生物学が，また臨床医学の領域では物理的計測による画像解析法が著しく進歩し，医学の発展に大きく貢献した．2000年にはヒトゲノム計画においてすでにその概要が明らかにされたが，遺伝子のすべてが解析されたわけではなく，今後解決すべき多くの問題があることから，21世紀はポストゲノムの時代といわれている．
一方で，社会に目を向けると，21世紀に入った最初の年である2001年には，国際テロ組織による航空機を用いた世界貿易センタービルと米国国防省へ同時多発テロ事件，それを機に勃発したアフガン戦争や細菌兵器としての炭疽菌騒動など，不幸な事件での幕開けとなった．さらに，世界のグローバル化により社会構造にも変革が必要な時代になり，21世紀に向けて多くの難問が突きつけられている．このような背景の中，国内政治では様々な分野で変革の兆しがみえ始めている．医学に関しても例外ではなく，医師の診療レベルの向上を目指した医学部学生教育の改革が議論され，クリニカルクラークシップの導入を目指して全国共通試験が4年生の終了時に実施されることが決定されるなど，新たな時代に向けて動き出している．腎臓病学の領域でも，研究の質の向上と診療レベルの向上を目指して腎臓専門医は何をすべきかが問われている．日本腎臓学会「学会のあり方委員会」ではホームページの作成，一般医向けの腎疾患診療指針の作成，市民公開講座の充実，国際交流などを企画し，一般医や一般の人々に腎専門医からの情報をいかに発信するかなどの問題を検討している．実際，臨床の現場では腎臓専門医は不足しており，このような活動を通して多くの若い先生方に腎臓病学に興味をもって頂きたいと思っている．
腎臓病の研究においてもポストゲノムの時代を向えた基礎研究の進歩を受けて，遺伝子レベルで発見された蛋白分子の機能解析が進められ，この領域だけでも多数の新たに見出された分子が注目を集めている．さらに，腎臓病学は生理学，病理学，循環器，内分泌，高血圧，膠原病・リウマチ，糖尿病，透析，血液浄化などの分野と密接に関連しており，この分野を含めると，毎年多くの新しい発見がある．毎年本書の編集企画にあたり，腎臓病学の進歩という観点から，周辺の分野を含めて基礎と臨床の両面から注目される項目を抽出し，最先端の知識を整理して貰える専門書を目指しており，編集者一同，本書の読者諸兄に満足して頂けることを念願している．
最後に，本書に対するご意見，ご要望，またはご叱責などは今後の企画に反映させるべく努力したいと考えております．皆様のご支援，ご指導を宜しくお願い申し上げます．
2002年1月
編集者一同
《目次》
目 次
I．Basic Nephrology
1．腎発生におけるoncogene Mafの役割 ＜土谷 健 今城純子＞ 1
2．メサンギウム細胞増殖とビタミンK依存性増殖因子，Gas6
＜柳田素子 北 徹 土井俊夫＞ 7
3．Podocyteに発現する細胞骨格関連蛋白 ＜栗原秀剛＞ 15
4．無機リン酸トランスポーターファミリー
＜伊藤美紀子 瀬川博子 桑波田雅士 宮本賢一＞ 22
5．ペプチドトランスポーター ＜寺田智祐 乾 賢一＞ 27
6．メガリンと尿細管でのビタミンD活性化 ＜新木敏正＞ 35
II．診断・画像診断
1．治療抵抗性ネフローゼ症候群と尿中podocyteの動態
＜松田昭彦 永野忠相 御手洗哲也＞ 41
2．進行性腎障害の尿中wt1 mRNA検出とisoform分析の意義 ＜久保かなえ 三村俊英＞ 46
3．ヘリカルCT ＜渡井至彦 野々村克也 小柳知彦＞ 50
4．ポジトロン断層撮影法（PET） ＜玉木長良 塚本江利子 久下裕司＞ 55
III．腎炎・ネフローゼ
1．遺伝子異常が明らかにされた巣状糸球体硬化症 ＜服部元史 伊藤克己＞ 59
2．IgAヒンジ部糖鎖異常とIgA腎症 ＜比企能之 安田宜成＞ 64
3．糸球体疾患と糸球体内皮細胞障害 ＜花房規男 南学正臣＞ 76
4．腎炎・ネフローゼ合併妊娠 ＜藤垣嘉秀＞ 83
IV．間質・尿細管
1．虚血性/粥状硬化性腎症 ＜山口 裕＞ 89
2．尿細管間質への遺伝子導入 ＜宇都宮保典＞ 94
3．間質線維化におけるConnective tissue growth factorの役割 ＜伊藤恭彦＞ 99
V．腎臓と高血圧
1．高血圧の遺伝子異常 ＜鈴木洋通＞ 105
2．AII受容体拮抗薬の有用性 ＜伊藤貞嘉＞ 110
VI．腎不全
1．急性腎不全における予後の予測; E2F1発現の意義 ＜寺田典生＞ 116
2．高ホモシステイン血症とMTHFR C677T遺伝子変異
＜桜林 耐 鈴木正司 平澤由平＞ 122
3．腎不全と破骨細胞形成・活性化 ＜風間順一郎＞ 131
4．Cardiovascular risk factorとしてのsleep apnea ＜石村栄治 庄司哲雄 西沢良記＞ 136
VII．血液浄化法
1．大規模試験からみた適正透析（hemodialysis adequacy） ＜小川洋史＞ 143
2．急性腎不全を合併する多臓器不全のAPACHE-IIによる生命予後評価
＜佐中 孜 内藤 隆 西村英樹 樋口千恵子 久保和雄＞ 148
3．Bioartificial tubules ＜斎藤 明＞ 157
4．硬化性被嚢性腹膜炎に関する最近の話題 ＜沼田美和子 中山昌明＞ 163
VIII．移 植
1．長期生着の決定因子 ＜花房 徹 高原史郎＞ 168
2．免疫寛容 ＜武内 巧＞ 174
3．移植後リンパ球増殖疾患（PTLD） ＜小池淳樹 山口 裕 堀田 茂＞ 179
IX．小児科領域
1．遺伝性腎疾患に関する最近の知見: 原因遺伝子の解明はどこまで進んだか？
＜五十嵐 隆＞ 185
2．Multicystic dysplastic kidneyとMAPKのdysregulation ＜粟津 緑＞ 193
3．新生児，乳児腎不全治療の現況 ＜伊藤克己 永渕弘之 服部元史＞ 199
X．泌尿器科領域
1．尿路奇形の臨床 ＜島田憲次 松本富美＞ 205
2．EDの最近の治療 ＜石井延久 粉名内和成＞ 213
XI．電解質・酸塩基平衡
1．腎疾患と酸塩基平衡障害 ＜宮田幸雄 浅野 泰＞ 222
2．ミネラルコルチコイドの最近の知見 ＜成清武文 北村健一郎 冨田公夫＞ 229
XII．治療法
1．最近のCa拮抗薬の有用性 ＜佐藤武夫 木村健二郎＞ 241
2．多角的強化療法による糖尿病性腎症の寛解 ＜赤井裕輝 早坂恭子 佐藤 博＞ 250
3．エリスロポエチン療法のtarget Ht ＜阿部貴弥 秋澤忠男＞ 258
4．腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術 ＜小野佳成＞ 264
索 引 271
目次
Ｂａｓｉｃ Ｎｅｐｈｒｏｌｏｇｙ
診断・画像診断
腎炎・ネフローゼ
間質・尿細管
腎臓と高血圧
腎不全
血液浄化法
移植
小児科領域
泌尿器科領域
電解質・酸塩基平衡
治療法
著者等紹介
伊藤克己［イトウカツミ］
東京女子医科大学教授
浅野泰［アサノヤスシ］
自治医科大学教授
遠藤仁［エンドウヒトシ］
杏林大学教授
御手洗哲也［ミタライテツヤ］
埼玉医科大学総合医療センター教授
東原英二［ヒガシハラエイジ］
杏林大学教授
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