小児薬物療法ハンドブック

小児薬物療法ハンドブック

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  • サイズ A5判/ページ数 570p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784498045880
  • NDC分類 493.92
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 小児に対して薬を使用する際に必要な知識を実践的に解説した臨床書である.成人と違って注意すべき点,有効性・安全性を踏まえて用量・用法をどのように行うか,副作用,併用療法の注意についてなどを,現在得られているデータ,EBMに基づいて実際に役立つように示している.総論として基本的な知識を解説した後,薬効分類別にその考え方・作用・適応・有効性と安全性・使用法・副作用・禁忌・相互作用・注意点等を具体的に記載した.正しい小児薬物療法の啓蒙書であると同時にベッドサイドマニュアルとして役立つことを目的とした画期的な書である.

 小児の薬物療法は小児医療の中核をなすものである.しかし,成人に比し,適応や用量が明記されず(オフラベル使用),製薬会社も非採算性のため,関心をもつことが少なかった.40年もの昔のShirkeyのTherapeutic Orphanは今なお小児医療における新しい課題である.
 明日の世界を担う小児医療のこのような現状を打破するため,1997年,クリントン米国前大統領の声明をきっかけに,小児の薬物開発の国際的な共同作業が進行中である(ICH topic E 11).我が国では大西鐘壽日本小児臨床薬理学会運営委員長の御尽力により,オフラベル使用の問題が行政レベルで取り上げられ,松田一郎日本小児科学会薬事委員長のもと,新しい小児の薬物開発ガイドラインも作成された.今後は米国のPPRU(Pediatric Pharmacology Research Unit)のようなネットワーク作りが必要であろう.
 この本は2000年秋に久留米市で開催させていただいた第27回日本小児臨床薬理学会の開催に間に合わせて出版する予定であったが,刊行が大幅に遅れてしまった.早くから素晴らしい原稿を届けてくださった執筆者の方々には,申し訳ない気持ちでいっぱいである.しかし,お届け下さった原稿に目を通させていただくと,いままでにない本当に有用な小児の薬物ハンドブックができたと自負するものである.欧米にもこのような本はないと思う.
 小児の臨床薬理学(発達薬理学)は成人の臨床薬理学にはない,発達という視点からのダイナミズムがあり,多くの魅力にあふれている.成人の臨床薬理学よりも,専門的な知識を要するレベルの高い領域といえよう.この本を読まれた若い方々が,発達薬理学に関心をもち,EBMによる小児の薬物治療を確立して欲しいと願っている.
 この本は日本小児臨床薬理学会の生みの親である吉岡 一先生ならびに私に発達薬理学だけでなく,医学教育学,先天性代謝異常症,小児栄養,新生児スクリーニング,トータルケア,行動科学的アプローチ,POSなどの新しい医療,海外医療協力など多くのコンセプトを植え込んで下さった恩師,山下文雄先生に捧げるものである.
 お世話になった中外医学社の荻野邦義氏ならびに上村裕也氏には貴重なコメントを頂いた.
 最後に,盆や正月,土日もなく,ワーカホリックでほとんど家庭を顧みる余裕がなく,毎日,深夜帰りのbad husbandに少ししか不平をいわなかった妻ひでみにも感謝したい.
  2001年10月
    吉田一郎    

《目次》
目 次
I.総 論
1.EBMと薬物療法  <吉田一郎>  2
  1.テーラーメイド医療  2
  2.EBMにおける治療評価  2
  3.P-drugをどのようにして決定するか  4
  4.薬物情報をどのように入手するか  4
2.こどもの臨床薬理  <中村秀文>  6
  1.薬の吸収と初回通過効果  6
  2.薬の分布と蛋白結合率  8
  3.薬の代謝  10
  4.薬の腎臓からの排泄  12
  5.肝機能低下時の薬物投与  13
  6.腎機能低下時の薬物投与  13
3.小児臨床薬理学者の役割  <中村秀文>  16
  1.薬の臨床試験/薬物動態学・薬力学の研究  16
  2.臨床コンサルテーション  17
  3.EBM(Evidence-based Medicine)の実践  18
  4.小児臨床薬理学の啓蒙/教育  18
  5.小児臨床薬理学スタッフの育成  19
4.Therapeutic Drug Monitoring(TDM)  <石崎高志>  20
  1.小児科領域におけるTDMの必要性  20
  2.血中薬物モニターにおいて必須となる臨床薬物動態理論  20
  3.対象薬物とその適応クライテリア-どんな薬物でどんな時か  21
  4.薬物血中濃度測定の意義  24
  5.薬物血中濃度解釈上の注意  26
  6.TDMの落とし穴  27
  7.TDMの我が国における保険適用  30
5.妊娠・授乳中の薬物治療  <伊藤真也>  32
  1.妊娠中の薬物治療  32
  2.授乳時の薬物治療  36
6.こどもの薬の上手なのませ方  <木下博子>  37
  1.薬はどうやってのませるの?  37
  2.のみづらい薬はどうやってのませればいいの?  38
7.薬理遺伝  <田上昭人>  44
  1.薬物代謝の遺伝的要因  44
  2.薬物反応性の遺伝的要因  45
8.薬の副作用  <伊藤 進>  49
  1.薬の副作用の定義  49
  2.薬の副作用の分類と重篤度  49
  3.こどもと薬の副作用  50
  4.薬の副作用と症状  50
9.新薬の開発をどう行うか  <辻本豪三>  53
  1.薬理ゲノミックス  53
  2.ゲノム創薬  53
  3.SNPとテーラーメイド医療  54
  4.今後の小児臨床治験  55
II.各 論
1.救急蘇生薬  <安次嶺 馨>  58
  小児の心肺蘇生の特徴  58
  救急蘇生薬使用の基本的考え方  58
  蘇生薬の使用法  60
  蘇生薬使用時の注意  61
2.解毒剤  <市川光太郎>  71
  解毒剤使用時の臨床医学的条件  71
  解毒剤の種類と投与法  72
3.静脈栄養輸液剤  <山東勤弥,岡田 正>  79
  基本輸液(糖・電解質液)  79
  アミノ酸製剤  83
  脂肪乳剤  86
  ビタミン  92
  微量元素  111
4.経腸栄養  <雨海照祥>  120
  小児の栄養療法の目標設定と介入  120
  栄養療法の効果判定の構成項目  120
  栄養アセスメントの横軸と縦軸  120
  経口摂取の構成要素  122
  小児における経腸栄養法の意義  122
  特殊栄養素の吸収機序  122
  主な経腸栄養剤の組成  123
  特殊病態の経腸栄養  123
5.皮膚外用薬(ステロイド外用剤)  <山本一哉>  137
  外用剤使用の基本的考え方  137
  揃えると便利な外用剤  137
  ステロイド外用剤の現況  140
  日本皮膚科学会による「アトピー治療ガイドライン1999」  141
  スキンケア  144
6.眼科用薬  <山川良治>  150
  眼組織の特異性  150
  点眼液・眼軟膏の小児に対する安全性  150
  点眼について  151
  投与方法について  151
  小児に特有の眼疾患  151
7.全身麻酔・局所麻酔・鎮痛薬  <田村高子>  161
 全身麻酔薬  161
  全身麻酔薬使用の基本的考え方  161
  全身麻酔薬の薬理作用  161
  全身麻酔薬(全身麻酔)の適応  161
  有効性と安全性からの全身麻酔薬の選択  162
  全身麻酔薬の使用法と使用時の注意  162
 吸入麻酔薬  163
  静脈麻酔薬  167
  局所麻酔薬  173
  局所麻酔薬使用の基本的考え方  173
  局所麻酔薬の薬理作用  174
  有効性と安全性からの局所麻酔薬の選択  175
  局所麻酔薬の使用法  176
  小児への局所麻酔薬使用時の注意  177
  局所麻酔薬中毒  177
 鎮痛薬  186
  小児の疼痛管理と鎮痛薬使用の基本的考え方  186
  鎮痛薬の選択  187
  使用法と注意  188
8.解熱薬  <吉田一郎>  198
  解熱薬使用の基本的考え方  198
  解熱薬の薬理作用  198
  解熱薬の適応  198
  有効性と安全性からの解熱薬の選択  199
  解熱薬の使用法  199
  解熱薬使用時の注意  200
9.呼吸器用薬,アレルギー薬  <岩田 力>  207
 呼吸器用薬  207
  呼吸器用薬使用にあたっての基本的な考え方  207
  呼吸器用薬の薬理作用  207
  鎮咳薬  207
  去痰薬  215
  気管支拡張薬  218
 アレルギー薬  230
10.循環器系用薬  <門間和夫>  238
  慢性心不全の治療用の利尿薬  238
  ジギタリス薬  240
  血管拡張薬  242
  高血圧の降圧薬  245
  抗不整脈薬  246
  動脈管作動薬  249
11.神経系用薬  <山下裕史朗>  253
 抗てんかん薬  253
  てんかんの発作型分類とてんかん類型診断の重要性  253
  抗てんかん薬使用の基本的考え方  254
  抗てんかん薬をいつ始めるか  255
  血中濃度モニタリングの意義と評価  255
  抗てんかん薬をいつ中止するか  256
  熱性痙攣の薬物治療  266
  痙攣重積の薬物治療  267
 頭痛薬  269
  頭痛の診断と評価  269
  頭痛の発症機序  271
  頭痛の薬物治療  271
 脳圧降下剤  273
  頭蓋内圧亢進の臨床症状と原因  273
  脳浮腫  274
  頭蓋内圧亢進の治療  275
 小児の鎮静薬  277
12.向精神薬とその近縁の薬  <星加明徳,宮島 祐,武隈孝治>  282
  向精神薬とその近縁の薬を使用する際の基本的考え方  282
13.腎臓用薬  <軍神香美>  293
 利尿剤  293
  利尿剤使用の基本的考え方  293
  利尿剤の作用部位への到達機序および薬理作用  294
  薬物動態  295
  利尿剤の耐性  295
  利尿剤の適応  296
  副作用  297
  利尿剤使用時の注意(他剤との相互作用)  298
  利尿剤の使用法  298
  ループ利尿薬  298
  サイアザイド系利尿薬  300
  カリウム保持性利尿薬  302
  浸透圧利尿薬  303
  炭酸脱水素酵素阻害剤  304
 電解質剤  304
  電解質剤の基本的考え方  304
  輸液用電解質剤  304
  内服用電解質剤  312
14.内分泌用薬  <横谷 進>  315
15.糖尿病・低血糖治療薬  <浦上達彦>  339
 糖尿病治療薬  339
  糖尿病の治療の基本  340
  1型糖尿病の治療薬  341
  2型糖尿病の治療薬  346
 低血糖治療薬  349
  低血糖症の分類  350
  低血糖症の治療  351
16.先天代謝異常症治療薬  <大浦敏博>  354
  アミノ酸・有機酸代謝異常症治療薬  354
  ライソゾーム治療薬  364
  金属代謝異常症治療薬  365
  トランスポーター異常症治療薬  366
  プリン代謝異常症治療薬  368
  ビタミン依存症治療薬  369
  アシドーシス・酸性尿治療薬  373
17.貧血治療・造血薬  <吉田信之,宮崎澄雄>  376
18.出血・凝固異常治療薬  <白幡 聡>  385
19.抗腫瘍薬  <久保田 優>  398
  抗癌剤使用の基本的考え方  398
  抗癌剤の薬理作用  398
  抗癌剤の使用法  399
  抗癌剤の副作用  399
  利用するにあたって  400
20.消化器用薬  <小林昭夫>  418
21.抗菌薬,抗真菌薬  <津村直幹>  436
 抗菌薬  437
  小児に使用される主な抗菌薬  439
  小児の代表的な細菌感染症  450
  疾患別抗菌薬選択の考え方と実際  450
 抗真菌薬  461
  小児に使用される主な抗真菌薬  461
  代表的な真菌感染症の治療例  464
22.抗ウイルス薬  <後藤泰浩,森島恒雄>  469
  抗ウイルス薬使用の基本的考え方  469
  抗ウイルス薬の薬理作用  469
  抗ウイルス薬の適応  469
23.抗寄生虫薬  <山口真也,中村安秀>  483
  小児科領域における寄生虫疾患  483
  蟯虫症  483
  先天性トキソプラズマ症  485
  マラリア  488
  ランブル鞭毛虫症  489
24.リウマチ・膠原病薬,免疫調整薬  <藤川 敏>  494
  リウマチ・膠原病薬の基本的な考え方  494
  薬剤の作用機序  494
  適応  495
  禁忌と副作用  495
25.ワクチン,予防接種  <神谷 齊>  514
  予防接種の基本的考え方  514
  予防接種の種類と接種期間  514
  ワクチンの考え方  520
  各論  527
26.漢方薬の小児に対する使用法  <春木英一>  536
  漢方薬使用の基本的考え方  536
  漢方の薬理作用  536
  漢方薬の適応  537
  有用性と安全性からの漢方薬の選択  537
  漢方薬の使用方法  538
  漢方薬使用時の注意  538
治療薬索引  547
事項索引  561

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