胃内視鏡検査の実際

胃内視鏡検査の実際

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  • サイズ A4判/ページ数 293p/高さ 27cm
  • 商品コード 9784498041431
  • NDC分類 492.14
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 序  胃を中心とした上部消化管内視鏡検査は,機器の改良・進歩に伴い,その検査方法も複雑になり,さらにその所見の解釈を巡って次々と新しい観点から研究が進められ,今日著明な発展をきたしている。しかしその一方,本検査の普及と共に検査自体極めて容易なものに考えられ,深い洞察を欠いた安易な検査が行われる傾向も無しとしない。この様な時にあえて本書を企画した理由は,内視鏡検査の意義を正しく理解し,いかに無理なく内視鏡検査を実施し,臨床上有用なものにしていくか,さらにまた現在この領域ではどの様な事項が大きい問題となり,それについてどの様な考え方がなされているか,かつまたその動向,将来の展望はどの様なものなのか更めて考えて頂きたいと願ったからである。  本書の当初の企画段階では,編者が会長を務めた第29回日本消化器内視鏡学会総会における主要なシンポジウム,パネル ディスカッションの内容を基に各司会者並びに演者に詳細に書いて頂き,この総会のプロシーディングス的な意味を持たせたものにすることを考えたが,総会終了後日時が経過したこともあり,またこの時取り上げた各主題は今日でも依然重要な課題であり,かつ今後一層の発展が期待される分野でもあることから,これらを主体にさらに新しく企画を練り直し項目を選定し,この様な内容となった。このため日常見る疾患については必ずしも総花的に触れてはいないが,重要な疾患のいくつかを取上げ,それぞれの疾患では,今日どのようなことが問題になっているのか,またそれについてどのように考えられているか等を各著者に重点的に記述して頂いた。したがって本書の内容は今後の研究,将来の動向にまで深く突っ込んだものになったと思っている。  一方これだけでは熟練者には有用であっても初心者には理解し難いとも思われるので,この様な方々にも十分役立つ様,はじめの数章では現在上部消化管内視鏡検査の主流となっているパンエンドスコープの検査手技,機器の取り扱いを具体的に解説し,次いで側視式スコープの検査手技にも触れ,さらに両機器の特徴,各種病変の診断に於けるそれぞれの機種の持つ意味,意義を詳述して頂いた。これにより,これから内視鏡検査を始める方々にとっても,十分役立つ内容になったと思っている。  各疾患の診断に関連した章では,前述の如くそれぞれの疾患の静的な意味での診断基準等はあえて省略し,現在論争の的となっている事項に重点をおき執筆して頂き,いわば動的な意味の診断学とも言える内容となった。具体的には,胃癌では特に早期胃癌を巡る最近の話題を中心とし,IIB型早期癌の診断上の問題点,スキルス胃癌の初期像,胃癌の深達度診断を,消化性潰瘍については瘢痕の詳細な所見,それから推定される潰瘍の治癒状況,経過,さらに慢性胃炎についてはその分類をめぐる最近の考え方,病態生理をふくめてのその意義等を解説し,ついで特殊な内視鏡検査として,色素内視鏡検査,超音波内視鏡検査,内視鏡を応用した消化管機能検査等の現況と問題点を取り上げた。  またこの総会で編者が会長講演として行った『内視鏡の歴史と学会の歩み』のうち歴史の部分の内容を序章として巻頭に付け加えた。今日の内視鏡の発展を考えるとき,過去の発展の歴史を無視しては今後の発展はあり得ず,また歴史を振り返ることで今後の研究の方向づけも出来ると考えたからである。  また最近特に進歩の著しい電子スコープについては章を改めて詳述した。電子スコープが登場して数年を経るが,これが今後どの様な方向に進むか不安と期待をもってみられているのも事実である。これについての編者自身の考えを詳述し今後の展望に触れてみた。  以上より本書はこれから内視鏡検査を始める人にも,またすでに熟練した方々にも十分参考になる内容のものとなったと自負しているが,読者諸兄姉にとって多少なりとも役立つところがあれば編者並びに著者らにとって望外の幸と考えている。 1989年4月 防衛医科大学校第2内科教授 丹羽寛文    《目次》 目次 §1.序説 歴史と現況〈丹羽寛文〉 1.初期の内視鏡 2 2.軟性胃鏡 4 3.胃カメラのアイデアと胃壁透光法 5 4.最初の胃カメラ 6 5.Gastrophotor 7 6.胃鏡による撮影 8 7.ガストロカメラの開発 8 8.胃カメラの実用化と改良,進歩 9 9.胃ファイバースコープの開発と改良 10 10.内視鏡による治療 12 11.電子スコープ 12 §2.検査法 A.パンエンドスコープによる検査法〈中村孝司〉 18 1.検査前の注意 18 a.内視鏡検査を始める前の心がまえ 18 b.検査前の機器の点検 18 c.検査前処置 19 d.検査台 19 e.術者の防御 19 f.患者の体位 20 2.パンエンドスコープの挿入法と観察法 20 a.挿入法 20 b.食道の挿入と観察 26 c.胃の観察手技 27 d.球部への挿入と球部内観察 35 e.再び胃の観察 36 f.再び食道の観察 38 g.スコープの抜去と術後の処置 38 h.観察の順序について 38 i.生検上の注意点 39 3.検査の記録,フィルムの撮影および読影 39 4.偶発症とその対策 40 B.側視式ファイバースコープによる検査〈望月福治 池田 卓 長南明道〉 43 1.側視式ファイバースコープの特徴 43 2.側視鏡の現況 43 3.側視鏡によるルーチン検査 43 a.撮影順序 46 b.ルーチン検査時に病変が発見された場合 48 c.撮影枚数 48 4.部位別の撮影法 48 a.噴門部 48 b.胃体部 49 c.胃角部 50 d.幽門前庭部 50 e.十二指腸球部 50 f.食道 51 5.病変に対する撮影法 51 §3.機種と問題点 A.パンエンドスコープの立場よりみた側視鏡の問題点〈多賀須幸男〉 56 1.胃の内視鏡検査に従来はなぜ側視鏡が用いられたか 56 2.前方視と側視のちがい 56 3.今日の前方視鏡・側視鏡 56 4.側視鏡と前方視鏡で観察できる範囲の比較 57 a.机上で作図した観察範囲 57 b.Uターン時にファイバースコープの陰になる範囲 58 c.胃体部の観察 59 d.胃角小彎の観察 60 e.大彎と幽門の観察 61 5.観察距離と鮮鋭度 61 6.臨床例での側視鏡と前方視鏡の比較 62 7.細径前方視鏡の信頼性 62 8.パンエンドスコープの立場から側視鏡に期待するもの 63 むすび 63 B.側視鏡の立場よりみたパンエンドスコープの問題点〈八尾恒良〉 64 1.パンエンドスコープのメリット 64 2.パンエンドスコープの“メリット”の問題点 65 3.胃の観察能についてのパンエンドスコープのメリットとデメリット 65 a.噴門部癌の診断能について 66 b.胃体部(C領域)の診断能 66 c.M領域(胃角部)の診断能 70 d.A領域の診断能 71 4.胃生検の問題 71 5.実地臨床における直視鏡と側視鏡 72 C.前方視鏡と側視鏡による胃病変の観察能の比較〈福地創太郎〉 75 1.前方視鏡および側視鏡の特性と長所短所 78 2.胃内部位別の前方視鏡と側視鏡の差異 80 a.噴門部病変 80 b.胃体部の病変 80 c.胃角部の病変 83 d.幽門部病変 83 むすび 85 D.観察と写真判定〈城島嘉昭〉 86 1.検査件数ならびに対象 86 2.使用機種の変遷 87 3.機種の選定 87 4.患者に対する前準備 88 5.観察,写真撮影の順序 88 6.部位の決定 88 7.大きさの決定 89 8.所見読影上の問題点 89 9.反復検査,定期検査 89 10.写真撮影および判定 91 §4.胃癌 A.早期胃癌の内視鏡診断〈小黒八七郎〉 94 1.早期胃癌の概念と定義 94 2.早期胃癌の肉眼分類 96 3.早期胃癌とその肉眼型の頻度 98 4.隆起性早期胃癌の診断 100 5.中間型早期胃癌の診断 104 6.平坦型早期胃癌の診断 105 7.微小胃癌の診断 110 8.陥凹性早期胃癌の臨床病理 111 9.IIcの診断 112 10.早期胃癌の悪性サイクル 114 11.IIIの診断 117 B.IIb型早期胃癌の内視鏡診断〈鈴木 茂〉 118 1.判定基準と頻度 118 a.判定基準 118 b.頻度 119 2.IIbの診断と特徴 120 a.大きさと診断 120 b.部位と診断 122 c.組織型と診断 123 3.IIbの内視鏡所見 124 4.IIbの内視鏡分類とその特徴 125 5.報告例にみるIIbの特徴 126 6.IIb内視鏡診断の問題点と将来 127 むすび 130 C.スキルスの初期像と内視鏡診断〈中澤三郎 芳野純治〉 131 1.完成されたスキルスの内視鏡像 132 2.比較的限局したスキルスの原発巣 132 3.胃底腺領域内の早期癌の形態 134 4.スキルスの超音波内視鏡診断 135 むすび 138 D.胃癌の深達度診断〈今西 清 三村征四郎 奥田 茂〉 139 1.早期胃癌と進行胃癌の肉眼病型分類 140 2.早期類似進行胃癌(類進癌) 142 a.臼状をしめすI型 146 b.臼状をしめさないI型 146 c.IIa型 146 d.IIb型 146 e.IIc集中(-)型 147 f.IIc集中(+)型,IIc+III型,III+IIc型 147 3.胃癌の占拠部位と深達度診断 148 4.胃癌組織型と深達度 149 5.深達度診断の的中率 150 6.赤外線内視鏡による深達度診断 152 むすび 153 §5.消化性潰瘍 A.胃潰瘍の治癒経過〈竜田正晴 飯石浩康 奥田 茂〉 158 1.内視鏡的コンゴーレッド-メチレンブルーテスト 158 2.酸分泌機能からみた胃潰瘍の治癒・再発 160 3.色素内視鏡検査からみた胃潰瘍の治癒 161 4.H2-blockerと胃潰瘍の治癒経過 167 むすび 170 B.拡大内視鏡による胃潰瘍の経過と再発〈大井田正人 西元寺克禮 岡部治弥〉 171 1.胃潰瘍辺縁粘膜模様の経時的変化 171 a.拡大内視鏡による潰瘍辺縁再生粘膜模様 172 b.潰瘍の経過と拡大内視鏡的辺縁粘膜模様の変遷 172 2.再発と拡大内視鏡所見 178 a.潰瘍開放期の粘膜模様と再発 178 b.潰瘍瘢痕期の粘膜模様と再発 179 3.拡大観察の問題点 180 むすび 181 C.十二指腸潰瘍の内視鏡的治癒判定〈榊 信廣 竹本忠良〉 182 1.十二指腸潰瘍の病理組織学的治癒判定 183 2.文献からみた内視鏡的治癒判定 184 3.機能内視鏡からみた内視鏡的治癒判定 185 4.再生絨毛の形態からみた内視鏡的治癒判定 187 a.新しい十二指腸潰瘍stage分類の提案 187 b.臨床経過からみた瘢痕パターン 190 c.瘢痕パターンの病理組織学的検討 190 d.瘢痕パターンと病態 191 5.日常診療における内視鏡的治癒判定 192 D.十二指腸潰瘍の瘢痕像と再発,経過〈芦田 潔 折野真哉 大柴三郎〉 195 1.十二指腸潰瘍の病型と再発率 195 2.単発・多発潰瘍 196 a.瘢痕形態 196 b.瘢痕形態と再発率 196 c.瘢痕形態の推移 199 d.瘢痕と色素吸収能 200 e.瘢痕形態と病理組織学的所見 201 3.線状潰瘍 203 むすび 207 §6.慢性胃炎 A.慢性胃炎の内視鏡診断〈岡崎幸紀 飯田洋三 多田正弘〉 210 1.慢性胃炎の概念と分類 210 2.慢性胃炎の臨床的位置づけ 213 3.慢性胃炎の内視鏡診断の実際 214 a.内視鏡器機 214 b.前処置 215 c.検査法 215 d.検査所見 216 4.慢性胃炎の病態生理と内視鏡検査 218 a.萎縮の進展と内視鏡検査 218 b.腸上皮化生の病態生理と内視鏡検査 220 c.表層性変化と内視鏡検査 220 むすび 221 B.胃・十二指腸疾患と背景胃粘膜〈市岡四象〉 223 1.消化性潰瘍とその背景粘膜 223 a.十二指腸潰瘍 224 b.胃潰瘍 225 2.胃ポリープとその背景胃粘膜 226 3.早期胃癌とその背景胃粘膜 227 a.腸上皮化生 228 b.多発病変 228 §7.特殊な内視鏡検査 現況と問題点 A.色素内視鏡 コントラスト法のルーチン化〈井田和徳〉 232 1.コントラスト法のルーチン化 232 2.コントラスト法の目的 233 3.コントラスト法の手技 234 a.前処置 234 b.色素液の散布法 235 c.施行上のポイント 236 d.禁忌,不必要な例 237 4.内視鏡像 237 a.胃粘膜像 237 b.胃癌 239 c.良・悪性の小びらん 243 5.著者らの内視鏡検査 245 6.診断に及ぼすコントラスト法の効果 246 B.超音波内視鏡〈中澤三郎 中村常哉〉 248 1.検査法 248 a.EUSの種類 248 b.描出法 249 c.検査手技 249 d.正常胃壁の超音波像 249 2.EUSによる胃癌深達度診断 250 a.胃癌の超音波像 250 b.EUSによる胃癌の深達度診断とその問題点 251 3.EUSによる胃潰瘍の診断 253 a.胃潰瘍の深達度診断 253 b.胃潰瘍のEUS像の組織学的な成り立ち 254 c.胃潰瘍の治癒経過 255 d.EUSによる潰瘍の再発および難治の判定 256 4.EUSによる粘膜下腫瘍の診断 256 C.電子スコープ〈丹羽寛文〉 258 1.電子スコープの原理と構造 258 2.電子スコープによる内視鏡検査の実際 261 3.電子スコープの映像(動画像) 262 4.撮影像の実際 262 5.電子スコープの問題点 262 a.画像自体に関連したもの 262 b.操作性の問題 266 6.電子スコープの将来に期待するもの 267 むすび 271 D.内視鏡を応用した消化管機能検査 273 1.運動,分泌〈関口利和〉 273 a.ヒト消化管運動測定方法 273 b.内視鏡下で測定できる方法 274 c.内視鏡を用いて測定する理由 275 d.内視鏡下で測定する不利な点 275 e.内視鏡下内圧測定法の精度 275 f.食道運動について 276 g.胃運動について 276 h.幽門運動について 277 i.胆管,膵管について 277 j.小腸について 277 k.大腸運動について 277 むすび 278 2.PDと血流,吸収〈並木正義 原田一道 鈴木安名〉 280 a.内視鏡を応用した機能検査法の現状 280 b.PDと血流 280 c.消化吸収 285 d.慢性膵炎における青色消失時間 285 むすび 286 索引 288

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