出版社内容情報
《内容》 新しい技術であるヘリカルCTによる腹部画像を写真を中心にわかり易く解説したものである.本法では連続したデータから任意の位置(時間)で画像再構成ができ,また造影効果の高いフェイズ内での広範囲スキャンができる.本書ではヘリカルスキャンの原理,撮影技術,三次元画像処理から,肝胆膵脾,消化管,腎,副腎,膀胱,子宮,卵巣などの腹部臓器の診断までが,鮮明な写真と明快な記述により示されている.序 今年は1895年のROENTGENによるX線発見から,ちょうど100年にあたる.CTの発明はX線発見以来の出来事といわれたが,すでに20余年が経過した.CTは,ほぼ同じタイミングで発達・普及してきた超音波検査とともに,血管造影などの侵襲の多い検査に対し,非侵襲的検査として,今や臨床医学の中に完全に組み入れられている. 十数年前に発明された磁気共鳴画像法(MRI)は,撮像時間が長く,しかも発明当初は,これを短縮することは技術的に不可能とされていたにもかかわらず,たゆまない技術革新により,撮像時間は短縮され,画質も格段に向上した.装置もよりコンパクトになり,徐々に普及度が高まってきたため,技術的に限界にきたと思われていたCTは,MRIにより少しずつ置き換えられる傾向が現われていた. そのような状況下に出現したのが,ヘリカルCTである.スリップリング機構を用いたX線管球の連続回転,それをサポートする高熱容量の管球,画像を瞬時に再構成するコンピュータの進歩,精巧に移動する検査テーブルなど,多くの技術的進歩が複合されて,はじめて可能となった.連続回転する管球と連続移動する検査テーブルの組み合わせにより,連続スキャンがちょうど螺旋を描くようになることから,ヘリカル(あるいはスパイラル)CTといわれている. ヘリカルCTにより,1回の呼吸停止下で,たとえば全肺あるいは全肝を連続的に撮影することが可能となり,小さな腫瘤の診断などに有利となったほか,コンピュータによる画像再構成,とくに立体表示などが容易となった.検査時間も明らかに短縮された.それまでMRIに圧倒されかけていた画像診断における位置を,一挙に回復したといってもよい. 東邦大学大橋病院にヘリカルCT装置の最新鋭装置のGE横河メディカルシステム社製CT HiSpeed Advantageが導入されて,すでに約2年半が過ぎた.このたび,これまでのとくに腹部における臨床使用経験をまとめる機会を得た.本書が腹部のCT診断にかかわっていられる方々に,少しでもお役に立てば幸いである. 臨床各科の医師,およびCT室の技師の諸君の日頃のご協力を感謝します.さらに日常の技術的サポートをしていただいた,GE横河メディカルシステムの皆様,また本書の企画・編集を推進していただいた中外医学社の高橋衛氏,および稲垣義夫氏に感謝します.1995年3月東邦大学放射線医学第二講座 平松慶博 《目次》 目次I.総論□1 CTの歴史的背景 〈平松慶博〉2 A.CTの歴史 2 B.装置の進歩:世代による分類 2 C.新しいCT時代の幕開け 4 D.ヘリカルCTの条件 5 E.ヘリカルCTで可能にになったこと 5□2 ヘリカルスキャンの原理 〈畦元将吾,堀内哲也,郷野誠〉7 1.ヘリカルスキャンの概念 7 2.ヘリカルスキャンの特長 7 3.ヘリカルスキャンの種類 7 4.ヘリカルスキャンの長所 9 5.ヘリカルスキャンのシステム構成 10 6.画像再構成とデータ補間 10 7.slice sensitivity profile (SSP) 12 8.ヘリカルスキャンの留意点 12 9.高効率検出器との組み合わせによるヘリカルスキャン 13□3 ヘリカルスキャンの撮影技術 〈新木操〉15 A.撮影開始の準備 15 B.高速CT装置のスキャン方法 17 C.ヘリカルスキャンのスキャン方法 19 D.造影 20 E.撮影条件 22 F.臨床における撮影 24□4 三次元画像処理 〈村上省吾〉29 A.三次元画像作成 30 1.撮影法 30 2.造影法 30 3.再構成(リコンストラクション) 30 4.三次元画像作成 31 B.三次元表示方法 32 1.SSD (shaded surface display) 32 2.MIP (maximum intensity projection) 32 3.MPR (multiplanar reformation) 33 C.用語説明 35 D.三次元画像作成に伴う注意点 39 E.三次元画像の今後 39II.各論□1 肝・胆・膵・脾 〈五味達哉〉42 A.肝臓 44 B.肝細胞癌 45 C.肝細胞癌の治療後の評価 57 D.肝内胆管細胞癌 65 E.転移性肝癌 66 F.肝海綿状血管腫 69 G.肝膿瘍 73 H.脂肪肝 74 I.門脈圧亢進症 75 J.胆嚢癌 77 K.肝外胆管癌 78 L.総胆管嚢癌 78 M.膵臓 78 N.膵癌 80 O.膵島腫瘍 83 P.脾臓 84□2 消化管 〈平松慶博〉85 A.食道 85 B.胃 87 C.小腸・大腸 96 D.腹腔・腸間膜・大網 97□3 腎・副腎・尿管 〈長基雅司〉98 A.腎細胞癌 102 B.腎盂尿管腫瘍 110 C.副腎腫瘤性病変 111□4 膀胱 〈桑島章,村上省吾〉112 1.膀胱癌の高速撮像 112 2.膀胱癌の再構成画像を用いた診断 116□5 子宮・卵巣・前立腺 〈桑島章,村上省吾,五味達哉〉119□6 腎・副腎以外の後腹膜 〈村上省吾〉124 A.リンパ節転移 124 B.大動脈 130 C.下大静脈 134 D.後腹膜腔 138索引 141