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出版社内容情報
《内容》 ◆本書は膨大な量の情報の中から,特に注目すべきトピックを選び,その分野の第一人者が内外の文献をふまえて最新の進歩を展望している.
◆文献抄録ではなく,その内容,評価が理解できる.
◆どのような重要な業績,文献があったかを確実にフォローできる.
◆主要文献を網羅しているので,reference sourceとしても極めて便利である.
序
この20年ほどの間に,神経科学の研究分野は途方もなく拡散し,今や一人の人間の能力ではその全ての領域を見渡すことなど,全く不可能になってしまった.ちょっと専門分野が違えば,まるで言葉の通じない外国に行ったようなもので,そういった違った専門領域の研究者ばかりが集まる学術集会に足を踏み入れたりすれば,それこそたちどころに異文化体験をすることになる.それどころか,自分の専門領域での専門用語だけしか知らなければ,失語症に陥ったのと同じである.そういった中で,本書のような総合的レビューの存在意義はどこにあるのだろうか.テーマの選び方,そしてその著者の語り方がうまくなければ,専門外の読者にとっては,ジャルゴンにしかきこえないかもしれない.そんな恐れを抱きつつ,2002年のAnnual Reviewを編集した.
私たちの基本的な方針は,最先端のものでありながら,しかも他の専門領域の研究者にも充分に興味をもっていただけるであろうテーマ,あるいは少なくとも神経科学を学ぶ研究者であれば最低限知っていただきたいと考えられるテーマを選び,そしてそれを,誰にでも理解できるように書いていただける著者を選ぶ,ということである.
本書は,必ずしも最初の項目から順に,ページを繰って読んでいただく必要はない.編者が望む本書の読み方は,以下のようである.読者の方々には,まず目次に目を通していただきたい.そこに書かれているタイトルをご覧になって,もし一度も聞いたことがない用語が使われているようであったら,まずその項目をお読みいただき,新しい言葉と新しい概念を学んでいただきたい.たとえそれが全く専門外の領域の話題であったとしても,それをよく知ることによって,そこから自分の専門領域の研究における何か新しいアイディアが生まれてくるかもしれないからである.次ぎにもし,自分はこれならよく知っているという,ご自分の専門領域のテーマを見出されたなら,その項目の著者が一体全体何をいいたいのか,どんなことを考えているのかを,充分批判的に読んでいただきたい.そして来るべきその領域の学術集会で,著者と活発に議論していただきたい.最後にもし,もうこんなこと誰でも知っているよ,と思われるような古いテーマを見出されたなら,そんな中で一体何が新しいんだろうという興味をもって,じっくり読んでいただきたい.そこには,読者の知らなかった,あるいは気がつかなかった新しい知識が書かれているはずである.
いずれにせよ,本書の目指すところは,読者の方々に,有意義な異文化体験をして頂くことである.それができれば,編者一同の望外の喜びである.
2002年1月
編集者一同
《目次》
目 次
I.Basic Neuroscience
1.ユビキチンリガーゼParkinの基質探索研究 <鈴木俊顕 田中啓二> 1
2.メラトニンと睡眠 <服部淳彦> 7
3.痛みと痒みの神経機構 <國本雅也> 18
4.神経幹細胞の臨床応用 <吉崎崇仁 岡野栄之> 25
II.検査法
1.近赤外線による脳機能検査法 <渡辺英寿> 33
2.術中運動誘発電位(MEP) <貴島晴彦 加藤天美 吉峰俊樹> 39
3.双極子追跡法の原理と応用 <本間生夫 政岡ゆり 岡本良夫> 44
III.診断基準(疾患概念,症候群の変遷を含む)
1.Panic disorder--疾患概念の変遷と診断基準 <渡辺壮一郎 上島国利> 53
2.ALSの診断基準 <佐々木彰一> 60
IV.治療法
1.Vascular depressionとpost stroke depression--特にSSRIによる治療に関連して
<篠原幸人> 70
2.t-PA動注法と静注法の優劣 <滝沢俊也> 79
3.多発性硬化症のインターフェロン療法 <斎田孝彦 小澤恭子 松井 真> 89
4.神経血管減圧術 <藤巻高光> 98
5.聴性脳幹インプラント <関要次郎> 110
V.感染症
1.インフルエンザ脳症 <富樫武弘> 114
2.非ヘルペス性急性辺縁系脳炎 <庄司紘史 東 公一 西坂慎也 若杉京子> 119
VI.脳血管障害
1.接着因子と組織因子 <山本正博> 124
2.脳血管障害の遺伝子治療--現況と将来 <大森信彦 阿部康二> 132
3.高脂血症と脳血管障害 <中村治雄> 140
4.抗血小板療法--単独療法と併用療法
<内山真一郎 中村智実 山崎昌子 岩田 誠> 146
5.Reversible posterior leukoencephalopathy syndrome <千葉厚郎> 158
VII.脳腫瘍
1.Dysembryoplastic neuroepithelial tumor(DNT) <河本圭司> 166
2.PNET(primitive neuroectodermal tumor) <山王直子 寺本 明 長嶋和郎> 172
VIII.外傷
1.低髄液圧症候群 <広畑 優 重森 稔> 178
2.脊髄・脊椎損傷に対する基礎研究・臨床の現況 <花北順哉> 183
IX.変性疾患
1.Parkinson病の精神障害とその対策 <山本光利> 190
2.副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy: ALD)--治療法研究の進歩
<小野寺理 辻 省次> 197
3.基底核疾患に対する脳深部刺激療法 <片山容一 大島秀規> 209
X.代謝性疾患
無セルロプラスミン血症(aceruloplasminemia) <森田 洋> 216
XI.脱髄性疾患
Guillain-Barre候群の病態評価 <古賀道明 結城泰伸> 224
XII.末梢神経疾患
1.家族性アミロイドポリニューロパチー <池田修一> 234
2.Critical illness polyneuropathy(CIP) <畑中裕己 園生雅弘 清水輝夫> 244
XIII.脊髄疾患
脊髄動静脈奇形・動静脈瘻 <小野由子> 251
XIV.筋疾患
プレクチンとプレクチン異常症--plectin and plectinopathy <川井 充> 261
XV.自律神経疾患
睡眠時無呼吸症候群 <宮本雅之 宮本智之 平田幸一> 268
XVI.機能性疾患
1.群発頭痛とその近縁疾患 <鈴木則宏> 281
2.ナルコレプシーとhypocretin(orexin)receptor 2遺伝子異常
<日比野浩之 栃木 衛 梅景 正 佐々木司> 291
XVII.高次脳機能障害
1.前頭葉機能とその障害 <三村 將> 296
2.Williams症候群 <永井知代子> 306
XVIII.小児神経疾患
1.頭蓋縫合早期癒合症 <坂本博昭 北野昌平> 315
2.Rett症候群とmethyl-CpG-binding protein 2遺伝子 <野村芳子> 324
3.出生前子宮内胎児手術 <大井静雄> 333
XIX.疫学,社会医学
脳腫瘍の疫学 <竹島秀雄 倉津純一> 339
索 引 347
目次
Basic Neuroscience
検査法
診断基準(疾患概念、症候群の変遷を含む)
治療法
感染症
脳血管障害
脳腫瘍
外傷
変性疾患
代謝性疾患
脱随性疾患
末梢神経疾患
脊髄疾患
筋疾患
自律神経疾患
機能性疾患
高次脳機能障害
小児神経疾患
疫学,社会医学
著者等紹介
柳沢信夫[ヤナギサワノブオ]
関東労災病院院長
篠原幸人[シノハラユキト]
東海大学教授
岩田誠[イワタマコト]
東京女子医科大学教授
清水輝夫[シミズテルオ]
帝京大学教授
寺本明[テラモトアキラ]
日本医科大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。