覚せい剤依存症 (第2版)

覚せい剤依存症 (第2版)

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  • サイズ A5判/ページ数 183p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784498028197
  • NDC分類 493.155
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 本書は1982年初版刊行以来好評に迎えられてきたが,この度最近の研究の知見,社会状況にのっとり,全面的に改訂した.覚せい剤にはどのような働きがあるのか,なぜ乱用されるのか,覚せい剤による精神異常などの臨床上の問題点,覚せい剤乱用の社会的問題点などの項目のほか,今回新たにわが国における乱用の現状と対策についても取り上げ,その基礎から臨床,社会的側面など多方面から平明に解説している. 改訂版の発刊にあたって  1992年2月,私は機会を得て,タイ・ミャンマー国境の「黄金の三角地帯」の一隅を訪れた.かつてのケシ畠にはコーヒー豆が栽培されていた.しかし手入れは悪く,日本人の常識からは農耕と言える状態ではなかった.その夜,案内してくれた取締官と食事をしながら,彼に「大学での専攻は」と尋ねたところ,農学というので「麻薬取締官をやめて,農業指導者にもどりなさい.」と勧めた.  帰ったところへ台湾から「大学生の間で覚せい剤乱用が激増しているので一度来て欲しい.」との手紙が届いた.韓国,タイ,フィリッピン等でもメスアンフェタミン乱用がみられる.という話しを聞いていたので,ただごとではない,と感じた.北アメリカ西海岸でも,コカインとともにメスアンフェタミンが乱用されている.このようなことを調べているところへこのモノグラフ改訂の話しが電話されてきた.佐藤教授や福井,小沼両博士の名前を告げておいたところ,私にももう1度参加するように,との要請があった.  薬物乱用と依存の分野は,いま,新しいステージに入りつつある.基礎科学の分野では神経伝達物質や神経ペプチドの研究の進歩と,それに基く精神学の生物学的メカニズムの解明が進んでいる.これはこの分野の臨床に大きな影響を与えるだろう.その反面で,1980年代からのコカイン乱用はサルコ・テロリズムという言葉を生むほど激しい様相を呈している.アヘン・ケシの非合法栽培地は,「黄金の三角地帯」とともに,「黄金の三ヶ月地帯」も復活し,これはインド北部へと拡がっている.さらに南米北部のコカ栽培地域や中米でもアヘン・ケシの非合法栽培がみられる.旧ソ連の崩壊とともに中国西部から東欧にかけての広大な地域の情報が不充分になった.頼れるのは健康教育の重点を薬物教育にスライドさせることだけかもしれない.  わが国の場合,伝承的薬物教育は優れていたが,保健の教科教育での薬物のとり上げ方は1990年まで極めて消極的であった.中学の保健の教科書に薬物乱用がとり上げられたのは今年からである.したがって,早急に薬物教育の方法を確立してなくてはならない.  このように考えてくると,このモノグラフの改訂は,いまでなくてはならなかった.この分野の専門家だけではなく,供給面を担当される司法関係の方々にも読んでいただきたい.また,従来,専門家が少かった看護の分野の人々にも関心を頂いて欲しい.そして,医師だけでなく,基礎科学,ソシアルワーク,看護教育等の方々からも,この分野の専門家が育って欲しい期待している. 1993年7月5日 編者 初版の序  覚醒剤の乱用は戦後の大流行のあとに続いて現在第2の流行期にある.今回の流行は昭和45年頃から始まったのでもう10年以上になるが,一向に衰退の兆しなく,むしろ年毎に憎悪の傾向にあり,ますます深刻な社会的問題と化しつつある.おそらく読者各位も覚醒剤が関連する犯罪や悲惨な中毒者の話を目にし耳にするたびに,なぜ覚醒剤は乱用されるか,覚醒剤にはどのような作用があるか,覚醒剤中毒とはどのようなものか,なぜ覚醒剤は止められないのか,などの疑問を持たれたに違いない.編者らもしばしばこのような質問攻めに遇い,乞われるままに専門外の方にも推せんできる纒まった参考書はないかと探してみたが,なかなか適切なものは見当らず,そのような本の必要性を痛感していた.そこへたまたま中外医学社からそのものズバリの企画の相談を持込まれ己れの非力を省みるひまもなく,喜んで取りまとめの役をお引き受けした次第である.幸い研究に臨床に第一線でご活躍の専門家のかたがたの熱心なご協力が得られ,ここに覚醒剤に関する基礎的,臨床的および社会医学的解説書を世に送ることができて大変嬉しい.本書の題名の覚醒剤依存症ということばはやや難解な印象を与えるかもしれないが,いわゆる覚醒剤中毒のことである.ではなぜわざわざ依存症というなじみの薄いことばが用いられなければならないのか,その理由は本書を読めば容易におわかり頂けることと思う.  覚醒剤の乱用問題は医学生や実地医家にとってももはや他人ごとではなく,われわれの身辺に迫り,日常の生活に接点を持つ問題となりつつある.  このときに当たり,本書をその本態のより良き理解とより深い問題の把握に役立たせて頂ければ執筆者らにとってこれ以上の喜びはない.  本書の実現は中外医学社編集部高橋衛氏のご尽力に負うところが大きい.深く感謝する次第である. 1982年1月 編者    《目次》 目次 1.覚せい剤のはたらき  薬理作用・行動作用 〈田所作太郎・栗原 久〉 1.覚せい剤とは 1 2.覚せい剤にはどのような作用があるか 3 3.覚せい剤により動物の運動はどう変るか 3 4.繰り返し使用により変化する覚せい剤の作用 6 5.学習行動と覚せい剤 12 6.食欲と覚せい剤 15 7.反跳現象について 16 8.覚せい剤のしくみ  その神経化学的考察 18 9.覚せい剤の毒性 21 10.覚せい剤の吸収から排泄まで 22 11.覚せい剤の効用 23 2.覚せい剤はなぜ乱用されるか  覚せい剤の依存性と依存症 〈柳田知司〉 A.薬物乱用はなぜおこる 25 1.乱用とは 25 2.適正使用と乱用の区別 26 3.乱用が起る機序 27 a)薬物側の要因 27 b)人の側の要因 27 c)社会的要因 28 B.乱用される薬物,されない薬物 29 1.乱用される薬物とその作用 29 a)麻薬性鎮痛剤 29 b)その他の鎮痛剤 31 c)全身吸入麻酔剤および有機溶剤 31 d)睡眠剤・抗不安剤 31 e)アルコール 32 f)覚せい剤およびその類似薬 32 g)コカイン 33 h)幻覚剤 34 2.乱用されない薬物 34 C.くすりに頼るこころとからだ  薬物依存とは 35 1.薬物依存と依存性 35 2.こころとくすり  精神依存 36 a)精神依存の本態は快適な気分 36 b)能動快感と受動快感 37 D.覚せい剤の依存性 38 1.覚せい剤の精神依存性  サルも好きな覚せい剤 38 2.耐性および身体依存症 42 E.薬物中毒と覚せい剤依存症 42 1.「○○○中毒」は時代おくれの用語 42 2.依存症とは 44 3.覚せい剤依存症 45 a)精神依存による症候 45 b)急性作用による症候 46 c)退薬による症候 46 d)慢性的作用による症候 47 F.覚せい剤乱用はなぜ危険 47 3.覚せい剤の精神毒性 〈加藤 信〉 A.薬物による精神異常 51 1.精神毒性について 51 2.薬物による精神症状の特徴 52 a)外因性精神障害 52 b)薬物によっておこる精神症状にはどんなものがあるか 54 B.覚せい剤による精神症状 57 1.覚せい剤による精神症状にはどんなものがあるか 57 a)1回使用しただけでおこるもの 57 b)覚せい剤を繰り返し使用した後に現れるもの 58 c)覚せい剤の使用を中止した後にも残る症状 59 2.覚せい剤による精神異常とその発現のしくみ 60 a)覚せい剤と脳内カテコールアミンとの関係 61 b)覚せい剤の精神毒性と脳内カテコールアミン系 64 4.覚せい剤による精神異常の臨床 〈佐藤光源〉 A.背景と頻度 67 B.覚せい剤による精神異常の類型分類 68 C.覚せい剤の急性中毒,退薬状態およびせん妄 70 1.急性中毒 70 2.退薬状態withdrawal 72 3.せん妄delirium 72 D.覚せい剤精神病 74 1.概念と分類 74 2.原因 75 3.臨床症状 76 a)臨床像の多様性 76 b)臨床症状 77 c)受診時にみられやすい精神症状 80 4.診断 80 5.臨床経過 82 6.後遺症 82 7.予後 82 8.治療 82 5.覚せい剤依存症の臨床 〈小沼杏坪〉 A.覚せい剤関連精神疾患の区分 86 B.覚せい剤の使用様態 89 1.機会的使用 90 2.依存的使用 90 a)定期的使用 90 b)周期的使用 90 c)連日大量使用 91 d)強迫的使用 91 e)1回大量使用 92 f)反省休薬 92 C.覚せい剤精神疾患の診断 93 1.覚せい剤急性中毒 93 2.覚せい剤依存症 96 3.覚せい剤精神病 99 4.覚せい剤精神疾患の後遺症 103 a)残遺症候群 103 b)再燃現象 104 D.覚せい剤精神疾患の治療 107 1.中毒性精神病の治療 107 2.覚せい剤依存症の治療 108 a)脱慣期の外来通院治療 109 b)脱慣期の入院治療 109 c)断薬継続期のアフターケア 111 おわりに 113 6.覚せい剤乱用の社会的問題点 〈逸見武光〉 1.改版に際して 119 2.覚せい剤乱用者の社会的特徴 122 3.暴力団対策中心でよいのか 126 4.症例 127 5.覚せい剤乱用の社会的背景 132 おわりに 134 7.覚せい剤乱用の現状と対策 〈福井 進〉 A.第二次覚せい剤乱用前 潜伏期:1957~1969年 137 B.第二次覚せい剤乱用期:1970~現在 139 1)前駆期:1970~1974年 140 2)流行期:1975~1981年 143 3)稽留期:1982~現在 143 C.最近の覚せい剤乱用者の傾向 実態調査より 145 1.薬物別分布からみた覚せい剤依存者 145 a)覚せい剤依存患者の受診率の低下 145 b)長期乱用による症状遷延・再燃例の増加 146 2.性別特徴 流行病型薬物乱用 147 3.年齢別特徴 覚せい剤乱用者の高年齢化の傾向 148 4.乱用の長期化傾向 長期常用者の増加 151 5.長期乱用がもたらす症状遷延,再燃例の増加 153 a)症状還延例 153 b)症状再燃例 155 D.覚せい剤取締りおよび乱用対策 156 おわりに 161 付1.覚せい剤取締法違反検挙人数の推移 163 付2.覚せい剤取締法違反による覚せい剤(粉末・液)の押収量の推移 164 付3.覚せい剤取締法抜粋 165 付4.精神保健法抜粋 168 索引 179

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