出版社内容情報
《内容》 本書は問診,診察法から,各種検査の進め方,赤血球,白血球とリンパ球,血小板と凝固,線溶などに関わる各疾患の診断,治療の実際,輸血,骨髄移植まで,血液疾患診療における新しい時代に即応した今日のスタンダードを簡潔な叙述,明快な表など,新しい知見を充分整理した記載により,中身の濃い診療マニュアルとしてまとめたものである.序 血液学は極めて重要な臨床分野ですが,しばしば難解な分野と考えられがちです。血液学は大ざっぱに言って,赤血球の以上をとり扱う領域 それは主として血液中の赤血球数の低下することによって生ずる貧血ですが と,白血球の異常をとり扱う領域 それは白血球の腫瘍性増殖によって生ずる白血球が臨床的に重要視されていますが,最近免疫との関連も大いに注目されています と,そして血小板や血液凝固をとり扱う領域 臨床的には出血性素因と血栓症が問題となります に分けられます。このそれぞれの領域については,最近著しい発展がみられていて,その一つの領域の専門家であっても,他の領域を理解することがだんだん難しくなっています。 本書は,このような最近の血液学の発展を踏まえ,血液疾患の診療について必要な知識をできるだけ判りやすく整理し,実地に役立つようまとめたもので,これらの各分野の第一線で実際に多数の患者の診療にあたっておられる若手の臨床家に御執筆を頂きました。血栓症関連の領域については,循環器学,また脳卒中に関連して神経内科学とも密接に関連し近年注目されつつあるので,これまでの成書に比べ充実するよう心がけました。また,近年,白血病の重要な治療手段として確立されるようになった骨髄移植についても,多くのページを割きました。 なお,近年,すべての臨床分野において,略語がさかんに用いられるようになっています。これはある面では便利ですが,一面,同一の略語が異なった分野では全く別の意味に用いられることにもなり,理解を困難にしている面もあります。この点を考慮し,本書では,巻頭に略語表を付しました。 本書が血液学の入門書として,また,血液学の知識の整理にいくらかでもお役に立つことができれば幸いです。1986年1月松田 保 《目次》 §1 問診と診察1.問診 〈松田 保〉a.主訴 1b.現病歴 1c.既往歴 22.診察 〈松田 保〉a.視診 4b.顔面,口の診察 4c.頸部の診察 4d.胸部の診察 5e.腹部の診察 5f.四肢の診察 5§2 検査のすすめかた1.採血 〈大竹茂樹〉a.毛細管血 6b.静脈血 6c.特殊な採血法 7d.抗凝固剤 72.一般検査 〈大竹茂樹〉a.血球計数法 8b.塗抹標本の作製 14c.血球染色法 15d.溶血性貧血に関する検査 17e.その他の一般検査 183.末梢血形態 〈大竹茂樹〉a.赤血球 20b.白血球 20c.血小板 254.骨髄検査 〈吉田 喬〉a.骨髄穿刺用器具 26b.骨髄穿刺の実際 28c.骨髄穿刺液の正常値 31d.骨髄生検法 33e.骨髄塗抹標本の見方 355.血球の生化学 〈北尾 武〉a.赤血球の生化学 43b.白血球の生化学 51c.血球の生化学検査 526.免疫 〈塩原信太郎〉a.体液性免疫検査 54b.細胞性免疫機能検査 56c.遅延型皮膚反応 687.血小板の機能 〈塚田理康〉a.血小板の粘着能 71b.血小板の放出反応 73c.血小板凝集 76d.血餅退縮 77e.血小板と血液凝固 78f.血小板と動脈硬化 79g.血小板と動脈血栓寒栓 818.血液凝固・線溶 〈松田 保〉a.凝固機序 84b.線溶機序 89c.凝固線溶阻止機序 89d.凝固検査 93e.線溶検査 95f.凝固線溶阻止物質の検査 95§3 赤血球1.鉄欠乏性貧血 〈小峰光博〉a.鉄欠乏と鉄欠乏性貧血 96b.鉄代謝の生理 96c.鉄の体内分布と回転 97d.鉄欠乏とその病期 98e.鉄欠乏の原因 100f.頻度と疫学 102g.鉄欠乏性貧血の臨床症状 103h.診断 104i.鑑別診断 107j.鉄欠乏性貧血の治療 1092.溶血性貧血 〈小峰光博〉a.定義と分類 113b.病態生理 113c.診断 116d.疫学 118e.治療:一般的原則 118f.先天性溶血性貧血 1201)赤血球膜の異常による溶血性貧血 1202)赤血球酵素異常症 1233)ヘモグロビン異常症とサラセミア 124g.後天性溶血性貧血 1251)免疫機序による溶血性貧血 1252)発作性夜間血色素尿症 1323)赤血球破砕症候群 1333.巨赤芽球性貧血 〈浅野茂隆〉a.定義 137b.原因と発症機序 1371)ビタミンB12欠乏 1372)葉酸欠乏 140c.症状と徴候 142d.検査所見と診断 142e.診断上の注意点 145f.治療 1454.再生不良性貧血 〈原田実根〉a.疫学および成因 148b.病態生理 149c.診断 153d.治療 1565.多血症 〈幸道秀樹・浅野茂隆〉a.定義・分類 165b.症状と徴候 166c.検査のすすめかた 166d.検査成績 166e.治療と予後 1696.その他 〈吉田 喬〉a.赤芽球癆 171b.鉄芽球性貧血 173c.症候性貧血 174§4 白血球とリンパ球1.白血病 〈中村 忍〉a.概念および原因 180b.疫学 180c.分類 180d.急性白血病 184e.慢性白血病 1931)慢性骨髄性白血病 1932)慢性リンパ性白血病 197f.特殊な白血病 1991)赤血病,赤白血病 1992)成人T細胞性白血病 2003)hairy cell leukemia 2012.悪性リンパ腫(含類縁疾患) 〈中村 忍〉a.概念および疫学 202b.分類 202c.ホジキン病 203d.非ホジキンリンパ腫 208e.特殊型および類縁疾患 2121)成人T細胞性白血病リンパ腫 2122)皮膚病変を主徴とするリンパ腫 2123)BURKITTリンパ腫 2134)免疫芽球性リンパ節症 2135)細網症 2136)壊死性リンパ節炎 2143.多発性骨髄腫 〈戸川 敦〉a.概念・病因 216b.病型・病期 216c.臨床症状 219d.検査所見 220e.診断・鑑別診断 222f.治療・予後 2234.骨髄線維症 〈戸川 敦〉a.概念・病型 227b.病態生理 227c.臨床症状 228d.検査所見 229e.診断・鑑別診断 229f.治療 230g.経過・予後 2315.顆粒球減少症 〈戸川 敦〉a.概念 232b.成因・分類 232c.臨床症状 234d.検査所見 235e.診断・鑑別診断 235f.経過・予後 236g.治療 236§5 血小板と凝固・線溶1.血小板の量的異常 〈塚田理康〉a.血小板減少症 2371)分類 2372)血小板産生の低下 2383)血小板崩壊の亢進 2404)血小板分布の異常 249b.血小板増加症 2492.血小板の質的異常 〈塚田理康〉a.先天性血小板機能異常症 2521)血管内皮下組織への粘着の障害 2522)血小板凝集の障害 2533)血小板放出反応の障害 2544)先天性血小板機能異常症の診断 2565)先天性血小板機能異常症の治療 256b.後天性血小板機能異常症 2583.血友病と類縁疾患 〈吉岡 章〉a.診断 総論 265b.血友病AとVONWILLEBRAND病 270c.診断 各論 2741)血友病A 2742)血友病B 2783)VONWILLEBRAND病 2794)その他の血友病類縁疾患 281d.治療 総論 284e.治療 各論 2854.後天性出血性素因 〈松田 保〉a.肝実質障害 294b.ビタミンK欠乏 294c.凝固阻止物質 295d.lupus anticoagulant 295e.アミロイドーシス 296f.尿毒症 296g.骨髄増殖性疾患 296h.血管性出血性素因 2975.先天性血栓傾向 〈松田 保〉a.先天性アンチトロンビンIII欠乏症 299b.先天性ヘパリンコファクターII欠乏症 300c.先天性プロテインC欠乏症 301d.先天性プロテインS欠乏症 301e.先天性異常フィブリノゲン血症 301f.先天性第VII因子欠乏症 302g.先天性プラスミノゲン異常症 302h.その他 3036.DIC 〈松田 保〉a.概念 304b.原因 304c.臨床症状 305d.凝固異常 307e.診断 308f.治療 309g.病理組織学的所見 3117.抗血栓療法 〈松田 保〉a.ヘパリン 312b.経口抗凝血薬 313c.精製蛇毒 314d.抗血小板薬 314e.血栓溶解薬 316§6 輸血・骨髄移植1.輸血 〈森 孝夫〉a.供血者の選択 319b.輸血検査 3221)ABO式血液型 3222)Rh式血液型 3233)その他の血液型と抗体スクリーニング 3244)交差適合試験 325c.輸血の適応 3251)全血輸血 3252)成分輸血 328d.輸血副作用 3342.骨髄移植 〈原田実根〉a.骨髄移植の概念 339b.骨髄移植の方法 342c.移植成績 345d.新しい試み 356索引 359