出版社内容情報
《内容》 チーム医療の典型である透析治療に携わる医師・看護婦・技師などのかたがたに必要とされる知識を簡潔且つ具体的に解説したものである.透析医療従事者の役割,腎機能代行療法を要する病態,血液浄化法の種類と原理から本療法を行ってゆくための実践的知識,方法までを図・写真を多用して分かり易く述べている.透析治療の根本をなす重要な基礎知識と実践のための技術的知識の理解を図ることに重点を置いたもので,スタッフの方々は本書1冊で必須事項を要領よく学ぶことが出来る.序 透析療法は今や全国に普及し,きわめて一般的な腎不全治療法となっている. 慢性透析を継続する患者数は未だにプラトーには達せず,増加の一途を辿っている現況を認識いたしたい.透析療法を必要とする基礎疾患の変貌や高齢透析者の増加などに,近年の透析医療の特徴の一端を垣間見ることができる.透析医療はチーム医療を要する典型的な医療分野の一つであり,医師・看護婦・技師・栄養士・薬剤師・MSW・ボランティア等々の緊密な連携が欠かせない.私共はこの療法を社会的な見地からも検討しなおす時期にきていることをも痛感するが,本書は透析治療の根本をなすごく一般的だが重要な基礎的知識と技術などに的を絞った.慢性腎不全を病む方々に対して安定した透析技術を提供することが,透析療法のまず第一歩であると考えるからである. 在宅血液透析が保険上認可され,また一つ新しい波が透析医療に押し寄せている.在宅医療は患者と介護者とが自主的に行う治療であるが,この人々に十分で不安のない教育と実技を与えることも私共透析スタッフの大きな責務の一つであろう. その意味でも,幅広く正確な知識と実技能力を個々の透析関係者が身につけなければならないと痛感する. 1998年4月 日鋼記念病院 院長 大平 整爾 《目次》 目 次§1.腎機能代行療法の現況1 A.急性血液浄化法 … 1 B.慢性血液浄化法 … 2 C.腎臓移植 … 3§2.血液浄化療法に携わる医療従事者4 A.関係する医療スタッフ … 4 B.透析医療におけるチーム医療 … 5§3.医の倫理と透析におけるインフォームド コンセント6§4.腎機能代行療法を要する病態8§5.各種の血液浄化法とその原理11 A.血液透析とその変法 … 11 1.血液透析 … 11 a)拡散 … 12 b)限外濾過 … 12 2.血液濾過 … 13 3.血液透析濾過 … 15 4.直接血液灌流型β2-ミクログロブリン吸着器 … 16 B.腹膜透析 … 18§6.透析液組成と水処理19§7.透析療法の効果判定22 A.症候論 … 22 B.溶質の推移 … 23 C.適正透析 … 27 血液透析 … 27§8.血液透析用ブラッド アクセス33 A.ブラッド アクセスの意味と種類 … 33 1.外シャント … 34 2.内シャント … 35 a)単純吻合 … 35 b)血管移植法 … 36 3.非シャント … 37 a)穿刺法 … 37 b)動脈表在化法 … 38 c)ジャンピング グラフト法 … 38 d)血管内カテーテル留置 … 38 B.内シャントの作製法 … 40 1.内シャント作製の時期 … 40 2.内シャント作製の実際 … 41 a)術前の説明・同意と検査 … 41 b)術前準備 … 42 c)皮膚切開(皮切) … 43 d)血管の剥離 … 43 e)吻合の準備と吻合法 … 45 f)術後の管理と処置 … 48 g)内シャント作製の基本 … 49 C.内シャントの使用法 … 50 1.穿刺針 … 50 2.皮膚消毒 … 50 3.穿刺部位 … 50 4.穿刺操作 … 51 5.血流量不足と静脈圧上昇 … 52 D.内シャントの形態と機能の把握 … 53 E.内シャントその他の開存率 … 55 1.年齢と性 … 55 2.糖尿病性腎不全 … 56 3.非定型的内シャントの増加 … 56 F.内シャントの合併症対策 … 57§9.腹膜透析用ペリトネアール アクセス61 A.CAPD用カテーテル … 61 B.CAPDカテーテル挿入の手技 … 63 1.腹腔内の局所解剖 … 63 2.術前の準備 … 63 3.麻 酔 … 63 4.術野の消毒 … 64 5.皮膚切開 … 64 6.腹腔内操作 … 65 7.閉腹操作 … 65 C.腹腔内への液注入量の調整 … 68§10.抗凝固剤の種類とその使用法69 A.ヘパリン … 70 B.低分子量ヘパリン … 70 C.メシル酸ナファモスタット(MN) … 71§11.血液透析の実際73 A.開始の時期決定 … 73 B.体外循環(HD)の準備 … 73 C.患者の入室 … 74 D.穿刺と血液回路への接続 … 75 E.血液透析の開始 … 77 F.血液透析中の患者観察とケア … 77 1.血圧の変動 … 78 2.頻 脈 … 79 3.呼 吸 … 79 4.発 熱 … 79 5.疼 痛 … 80 6.掻痒感 … 80 7.不均衡症候群 … 81 G.血液透析中に起こりうる事故 … 82 1.透析液 … 82 2.血液漏出(リーク) … 83 3.ブラッド アクセス … 83 4.空気混入 … 83 5.針刺し事故および血液汚染物との接触 … 84 H.返血操作と透析の終了 … 84 I.基準体重の設定 … 85 J.心胸比(CTR)の算出での注意点 … 86§12.腹膜透析の実際93 A.患者の選択 … 93 患者の積極性 … 93 B.患者教育 … 93 1.導入前教育 … 94 2.導入後教育 … 94 C.CAPD開始の時期 … 95 D.CAPD用透析液の種類 … 95 E.バッグ交換システム … 96 1.接続システム … 96 2.バッグフリーシステム … 99 3.APD(autoperitoneal dialysis:自動腹膜透析)… 100 F.バッグ交換手技の実際 … 100 G.透析量 … 103 H.カテーテル ケア … 104 I.CAPDにおける食事のポイント … 104 J.CAPD療法の問題点・合併症 … 105 1.腹膜炎 … 106 2.出口部/トンネル感染症 … 106 3.透析量の不足 … 107 4.低栄養 … 108 5.限外濾過不全 … 108 6.体液過剰 … 109 7.低回転骨 … 109 8.脂質代謝異常 … 109 9.硬化性腹膜炎または硬化性被嚢性腹膜炎 … 111 10.患者および介護者の負担 … 112 11.使用物品の廃棄処分 … 112 12.腹膜機能の検査法 … 112§13.透析患者の合併症と治療概論115 A.合併症を生む基盤 … 115 B.具体的な合併症 … 116§14.透析患者と薬剤投与119§15.透析室の運営・管理121 A.「血液透析」業務 … 121 B.感染対策 … 122 C.患者・家族への指導 … 122 D.症例検討など院内勉強会と院外活動 … 123 E.透析チームの心身管理 … 124§16.透析患者のデータ整理と管理125文 献126索 引130