出版社内容情報
《内容》 ◆本書は膨大な量の情報の中から,特に注目すべきトピックを選び,その分野の第一人者が内外の文献をふまえて最新の進歩を展望している.
序
IT革命ということが盛んにいわれて久しい.医学における現代の革命はゲノムの解読や今後の応用ということになる.生命科学の世紀といわれる所以である.なかでも,内分泌代謝学は生命科学の世紀において,感染症における抗生物質の発見とともに,主要なホルモンの発見と根治的治療への応用により先駆的役割を果たしつづけている.インスリンの発見は多くの糖尿病患者を救命しつづけており,最近では患者さんの立場にたった新たなインスリン製剤へと発展している.新しい生理活性物質も続々と発見されており,その領域も肥満,食欲,神経調節,循環動態,老化,再生医療など様々な分野へ発展している.
からだの機能についていえば,臓器の働きとともにそれを支える内分泌,代謝などの調節機構の精妙な情報処理により健康は維持されている.診療においても,臓器主体の診療と調節機構を主体とする診療形態が存在して,二極化と協調のあいだを行きつもどりつしているように思われる.臓器を主体とする診療ではテクノロジーの進歩とともに臓器へ直達する技術が先鋭化して,診断・治療のみならず移植や再生医療までが関心の対象となっている.一方,調節機構の異常を主体とする診療では多くの画期的な診断法や治療法が発見されているが,根治的治療法は糖尿病や肥満などの生活習慣病では依然として不充分であり,対症的な診療を継続する場合がしばしばである.ITにたとえれば,ソフトとハード,ネットワークと末端機器の関係に似ている.当然のことながら,システム全体の正常な機能にはどちらも相補的かつ欠くことのできない主要なパートナーである.あえてITをたとえとして持ち出したが,健全な診療や教育機能を維持するためには,臓器主体の診療では臓器を支えるネットワークを意識した診療,ネットワーク主体の診療ではネットワーク異常により生じる臓器障害を意識した診療を心がけるべきであり,二極化のなかで密接な交流と相互評価が望まれる.このような環境のなかで内分泌代謝学は,内分泌臓器を中心とした診療・研究やネットワーク異常としての内分泌代謝異常に関する診療・研究のみならず,内分泌代謝異常にもとづく臓器障害まで全身をくまなく関心領域としており,今後の医学において先導的役割を果たすことが期待されている.
本書では,多くの専門家の御尽力により,最近のトピックスのみならず,内分泌代謝領域の進歩や最新の主要文献が網羅されている.編集者一同,本書が日常の臨床や教育のみならず,最新の研究の一助になることを期待している.
2001年12月
編者一同
◆文献抄録ではなく,その内容,評価が理解できる.
◆どのような重要な業績,文献があったかを確実にフォローできる.
◆主要文献を網羅しているので,reference sourceとしても極めて便利である.
《目次》
目 次
I.トピックス
A.代 謝
1.糖・脂質代謝における転写調節機序 <島野 仁> 1
2.成長ホルモン分泌と摂食調節に機能する新しいホルモン--グレリン <中里雅光> 7
3.酸化LDL測定の意義 <木下 誠 寺本民生> 14
4.CETP阻害薬--HDLを上げることの意義 <柴 学 齋藤 康> 20
B.糖尿病
1.1型糖尿病の発症関連遺伝子 <池上博司 荻原俊男> 26
2.2型糖尿病の発症関連遺伝子 <堀川幸男 武田 純> 32
3.インスリン抵抗性の新しい分子病態 <荒木栄一 吉里和晃 堺 弘治> 39
4.インスリン分泌の分子機構 <加計正文 中田正範 矢田俊彦> 46
5.膵臓移植の現況 <金澤康徳> 55
C.内分泌
1.胎児期における卵子数調節機序 <森田 豊 久具宏司 堤 治 武谷雄二> 59
2.coactivator病--新しい疾患概念 <足立雅広 高柳涼一 後藤公宜 柳瀬敏彦 名和田 新> 66
3.hepatocyte growth factor(HGF)の臨床応用 <青木元邦 森下竜一 荻原俊男> 75
4.klotho遺伝子--臨床的意義 <鍋島陽一> 81
5.精子幹細胞研究の現状とその展望 <篠原隆司 篠原美都> 86
6.骨代謝と脂質代謝 <井上大輔 松本俊夫> 91
II.代 謝
1.高脂血症
a.成因・病態 <塚本和久> 97
b.治 療 <小竹英俊 及川眞一> 103
2.プリン代謝異常 <谷口敦夫> 109
3.先天代謝異常症 <粟田久多佳 太田孝男> 114
III.糖尿病
1.成 因
a.糖尿病の発症機構 <内田 亨 春日雅人> 118
b.疫 学 <西村理明 田嶼尚子> 123
2.病 態 <小田原雅人> 128
3.治 療
a.食事療法 <鹿住 敏 芳野 原> 134
b.薬物療法 <植田浩平 岡 芳知> 139
c.運動療法 <奥田諭吉> 145
4.合併症
a.神 経 <新藤英夫 多和田眞人> 152
b.網膜症 <北野滋彦> 156
c.腎 症 <荒木信一 羽田勝計> 162
d.動脈硬化症 <橋本重正 川上正舒> 167
IV.内分泌
1.視床下部-下垂体
a.成長ホルモンとGHRH <高野加寿恵 肥塚直美 齋藤由美子> 173
b.ACTHとCRF(CRH) <蔭山和則 須田俊宏> 180
c.TSHとTRH <佐藤哲郎 森 昌朋> 186
d.ゴナドトロピンとGnRH <田坂慶一> 193
e.プロラクチン <田中 実> 197
f.バソプレッシン(AVP) <石川三衛 本多一文> 202
2.甲状腺
a.甲状腺機能亢進症 <村上正巳> 208
b.甲状腺機能低下症と甲状腺炎 <伊藤光泰> 214
c.甲状腺腫瘍 <難波裕幸 山下俊一> 222
3.副甲状腺ホルモン <佐藤幹二> 228
4.副腎皮質
a.副腎アンドロジェン <青木一孝 関原久彦> 234
b.糖質コルチコイド <柴田洋孝 猿田享男> 239
c.レニン-アンジオテンシン-アルドステロン <此下忠志 宮森 勇> 245
5.副腎髄質 <村上英之 島本和明> 253
6.性 腺
a.男 子 <田中啓幹> 257
b.女 子 <峯岸 敬 中村和人 篠崎博光> 263
7.性分化・発達の異常 <諸橋憲一郎> 268
8.心血管ホルモン <平田結喜緒> 273
9.エイコサノイド <渡辺 毅> 282
索 引 289
目次
1 トピックス(代謝;糖尿病;内分泌)
2 代謝
3 糖尿病
4 内分泌
著者等紹介
金沢康徳[カナザワヤスノリ]
自治医科大学名誉教授
武谷雄二[タケタニユウジ]
東京大学教授
関原久彦[セキハラヒサヒコ]
横浜市立大学教授
山田信博[ヤマダノブヒロ]
筑波大学教授
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