よくわかる酸塩基平衡

よくわかる酸塩基平衡

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  • サイズ B5判/ページ数 159p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784498023536
  • NDC分類 491.41
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》  序  この本の目的は,酸塩基平衡をなんとか読者の方々に“わかってもらうこと”です.全体を完全につかむことはできなくても,一部でもいいですから“ここはわかった”という状態になって頂くことです.  酸塩基平衡の本は多数あります.どれもなかなかいい本です.それなのに「酸塩基平衡は難しくてよくわからない」という声をよく聞きます.  たしかにそうです.酸塩基平衡の問題というのはなんとなくとらえどころがなく,スッキリと納得しにくい領域です.これは領域そのものの性格によっているのですが,その理由はこんなことでしょうか. 1.基本的に“量”を問題にする分野であること. 2.似た言葉や概念がたくさんあって混乱しやすいこと.たとえばpHと水素イオン濃度,炭酸ガスと重炭酸イオン,Buffer BaseとBase Excessなどすべて,酸塩基平衡で混乱を招きやすい点です. 3.多数の数式・ノモグラム・図を理解することが必要で,しかもそれらがどういう関係にあるかが,明確でないこと. 4.他の種々の分野と密接に複雑にからみあっていること,つまり電解質・血液ガス・肺機能・腎機能・内分泌・代謝などと関係しています.  こういう性格の領域を学ぶ際には二つの行き方があるでしょう.一つは正攻法で,がっちりと土台を固めていくやり方です.その場合は酸塩基平衡は領域が多岐にわたるのでとても大変でしょう.対数の勉強や電気化学の勉強がおっくうな人も少くないはずです.若さと才能と時間とによほど恵まれていない限り,がっちりと「基礎的な勉強」などするゆとりなどわれわれ医師にはないのが実情です.  もう一つの行き方はからめ手から,つまりわかりやすいところ,なんとかできそうなところを攻略し,そこを手がかりにして自分の“何とかなる”領域を広げていく行き方です.  この本の狙いは断然後者です.そもそも質問形式にしたということがそれを意味しています.小さなテーマを沢山提出して,読者の方々の要求にあった,わかりにくい質問になんとか答え,あるいは読者の方々が「よくわかっている」と感じていることもさらに明快に納得して頂くことによって,酸塩基平衡という難攻不落の城をなんとか攻め落とそう,と企んでいるのです.  私は自分が酸塩基平衡面の専門家だと思ったことはありません.理由はいくつかありますが,その一つは肺のことには詳しいが,酸塩基平衡に関するもう一つの重要臓器である腎の勉強が不足しているからです.それなのに本を書こうと決断したのには理由があります.  私は医師としての仕事の開始が電極による血液ガス測定の開発から普及の時期と一致しています.しかもちょうどその頃Trans-atlantic acid-base debate(あとで詳しく述べます.BUNKER, 1965)という興味をかきたてる事件に遭遇して,若い頃から酸塩基平衡を勉強はしてきました.それに血液ガス一般を学んでその面の本も書き,この領域に詳しいとみなされている関係で,血液ガスと密接に関連している酸塩基平衡の領域の文章や講義・講演を依頼されるチャンスも数多くありました.そのたびごとに血液ガス一般や,肺・呼吸に関する場合よりも聴衆や読者の反応がむしろ強いのに印象づけられました.それだけ私の方も勉強にも熱を入れ,講義の仕方や文章の構成にも工夫を凝らしてきました.本棚にある酸塩基平衡の本の数もふえ,酸塩基平衡のファイルも分厚くなっていくつかに小分けせざるを得なくなっています.つまり私の内部に熟するものがあったということです.  もうひとつ,御存知の方もいらっしゃるかと思いますが,1987年の秋に天皇陛下が手術を受けた際に麻酔と術後管理の面で,私も治療に参加しました.内容は喧伝されませんでしたが,この際に酸塩基平衡の問題はなかなか重大でした.このことも本書執筆を最終的に決断するきっかけの一つになっていたかとも考えます.  酸塩基平衡の本は数多くありますが,いずれも“読みやすく”はありません.私が読んだ酸塩基平衡関係の本は1冊目がDAVENPORTで,2冊目はSIGGAARD-ANDERSENの“The Acid-Base Status of the Blood”の第2版です.後者は1963年に出版されていますが,私のように数学の好きなものにとってもなかなかの難物で,てこずった記憶があります.書き込みが残っていますが,難航した様子がありありとしています.このほかに試みた何冊かの本にしても,基礎的な内容のものに関しては同じことが言えます.  それほど難しく解りにくいものならこれまでに工夫した講義や原稿の経験を生かしてみよう,というのが本書執筆の理由です.  基本方針として,一つのテーマは短く簡潔に終了すること,それに質疑の形式を採用したこと,などの理由は前に述べました.この本はそういう性格の本ですから,初めからがっちりと時間をかけて読まないで下さい.楽に読めるところをまず拾い読みして,納得して下さい.次にそれに関連したテーマを,とくに“これをわかりたいのだ”というのがあったらそれを,読んでみて下さい.本はこまかくわかれていますが,その代わりテーマ間の連絡は密で参照しやすくできています.これはパソコンにのる最近の優秀なワープロソフトのおかげでもあります.  テーマ一つに少くとも一つの図か絵を載せたいと意図しましたが,これは必ずしも狙い通りにはいきませんでした.それでもコンピュータで自作した図を多用したので,ほかの著書から引用した図はほとんどありません.この点もコンピュータのおかげをこうむっています. 1988年8月 諏訪邦夫    《目次》 目次 1 酸塩基平衡面の治療が結果に直接影響した症例 1.1 症例 代謝性アルカローシスの原因,診断,病態,治療 1 1.2 [手術と麻酔] 1 1.3 [術後の経過] 2 1.4 [原因] 3 1.5 [病態と症状と診断] 4 1.6 [酸塩基平衡の治療] 5 2 水素イオンとpH:なぜ酸塩基平衡を勉強するか 2.1 酸塩基平衡はなぜ重要か 8 2.2 pHの異常による身体機能の異常 10 2.3 pHの異常による代謝の異常 11 2.4 水素イオンをなぜ他のイオンと区別するか 11 2.5 pHとはなにか.水素イオンとの関係は? 12 2.6 pHと水素イオン濃度の正常値と変動の幅 13 2.7 動脈血以外の体液のpHと水素イオン濃度 14 2.8 酸塩基平衡に関係した単位 15 2.9 水素イオンと水素分子の関係.酸塩基平衡と酸化還元の関係 17 2.10 ミトコンドリアと水素イオン:電気浸透とイオンポンプ 17 2.11 酸塩基平衡の異常はなぜ有害か 18 3 酸と塩基・緩衝とは 3.1 「酸」と「塩基」の例と定義 20 3.2 「酸」と「酸性」の関係,「塩基」と「塩基性」の関係 21 3.3 「酸」と「アシドーシス」との関係 21 3.4 塩素イオンや乳酸イオンなどが塩基でない理由 22 3.5 「両性電解質とは」 同一の物質が酸にも塩基にも働く 22 3.6 塩基とは具体的にどんな物質か 23 3.7 “塩基”と“アルカリ”との差 24 3.8 「緩衝塩基」とは何か.「塩基」と「緩衝塩基」とは同じか 25 3.9 「緩衝」とは何か.化学の「緩衝」と医学の「緩衝」との差 26 3.10 「緩衝」の量的指標.「緩衝価」と「スライク」 27 3.11 緩衝価がわかると緩衝が理解できる 28 3.12 血液の重炭酸イオンの正常値は24mEq/l 30 3.13 重炭酸イオン24は血漿の数値で血液の値ではない 30 3.14 解離定数と解離指数 31 3.15 HENDERSON-HASSELBALCH式の表わすもの,導き方,由来 32 3.16 HENDERSON-HASSELBALCH式の分母の表現 33 3.17 HENDERSON-HASSELBALCH式と「質量作用の法則」の関係 34 3.18 HENDERSON-HASSELBALCH式の表わすもの 35 3.19 人体の緩衝塩基の種類と量 35 3.20 酸塩基平衡の式,グラフ,ノモグラムの表すもの 36 3.21 酸塩基平衡の数式の関係の面倒な理由と例 36 4 呼吸性アシドーシス 4.1 呼吸性アシドーシスの症例 39 4.2 呼吸性アシドーシスの意味とアシドーシスの種類 40 4.3 呼吸性アシドーシスと換気不足の関係 41 4.4 炭酸ガス平衡曲線の意味と種類 41 4.5 炭酸 重炭酸系のみの炭酸ガス平衡曲線 43 4.6 炭酸 重炭酸以外の緩衝系と炭酸ガス平衡曲線 45 4.7 ΔHCO3-/ΔPco2の計算法 45 4.8 炭酸ガス平衡曲線上では緩衝塩基は不変 46 4.9 全身の炭酸ガス平衡曲線と血液の炭酸ガス平衡曲線 47 4.10 急性呼吸性アシドーシスと慢性呼吸性アシドーシス 48 4.11 呼吸性アシドーシスと腎の働き 49 4.12 CO2ナルコーシスとは 49 5 代謝性アシドーシス(非呼吸性アシドーシス) 5.1 代謝性アシドーシスの典型例 51 5.2 代謝性アシドーシスと他のアシドーシス.その命名 51 5.3 代謝性アシドーシスとショック・酸素不足との関係 52 5.4 Base Excessとは 52 5.5 Base Excessの二つの定義 53 5.6 Base Excessの簡便計算法 54 5.7 希釈性アシドーシスとは 55 5.8 代謝性アシドーシスに重曹を与えることの意味 56 5.9 重曹の量の簡便計算法 57 5.10 Naイオンを与えずに代謝性アシドーシスが治療できるか 58 5.11 軽度の代謝性アシドーシスを重曹で治療すべきか 58 5.12 BE曲線のあらわすもの 59 5.13 全身のBEと血液のBEとの差.その理由 60 5.14 代謝性アシドーシスの急性と慢性の差とメカニズム 61 5.15 Anion Gapの意味と使用法 61 5.16 代謝性アシドーシスでの腎の働き 62 6 アルカローシス 6.1 アルカローシスとは何のことか 64 6.2 生体内の塩基の種類 64 6.3 呼吸性アルカローシスと代謝性アルカローシス 64 6.4 アルカローシスの診断 65 6.5 呼吸性アルカローシスの病態と診断 67 6.6 代謝性アルカローシスの病態と疾患 67 6.7 Kイオン不足による代謝性アルカローシス 68 6.8 代償性アルカローシスとは 69 6.9 アルカローシスで発生する身体の反応 70 6.10 アルカローシスの治療法 71 6.11 代謝性アルカローシスの治療に塩酸を使うか 73 6.12 おかしな血液ガス値の評価 74 7 酸塩基平衡と腎の働き 7.1 酸塩基平衡で腎の果す役割 76 7.2 腎が水素イオンを処理するメカニズム 77 7.3 Na+とHCO3-の再吸収のメカニズム 78 7.4 腎の重炭酸イオン再吸収の量 79 7.5 “腎の代償”とはどういうことか 80 7.6 腎の働きはなぜのろい 80 7.7 ダイアモックスの利尿作用と使い方 81 7.8 ダイアモックスの他の使い道と使い方 82 7.9 数値から腎の代償か呼吸の代償かわかるか 82 7.10 慢性呼吸不全患者の腎の働きをどう評価するか 83 8 酸塩基平衡の異常と酸素と炭酸ガスの運搬 8.1 酸素解離曲線の形がガス運搬と酸塩基平衡にかかわる意義 85 8.2 酸素解離曲線のpHによる移動の実際的な意味 86 8.3 酸素解離曲線の移動の仕方と程度 87 8.4 右方移動は本当に有利か 88 8.5 ボーア効果とは.その役割は.ボーアとは 89 8.6 炭酸ガスの運搬と血液 91 8.7 炭酸ガスの運搬と酸塩基平衡 92 8.8 ホールデン効果とその本態 93 8.9 FICKの原理と酸塩基平衡 94 8.10 酸素と炭酸ガスの解離曲線の血液による運搬の性質の差 95 8.11 ボーア効果とホールデン効果の差 96 8.12 代謝性アシドーシスが酸素と炭酸ガスの運搬に与える影響 98 8.13 心拍出量低下+代謝性アシドーシスのガス運搬への影響 99 8.14 ショックの過換気の意義 100 おわりに 101 9 データの評価とグラフのいろいろ 9.1 炭酸ガス平衡曲線の形と座標 102 9.2 炭酸ガス平衡曲線のpH-logPco2プロットの特徴 102 9.3 炭酸ガス平衡曲線のPco2-HCO3-プロットの特徴 104 9.4 その他の炭酸ガス平衡曲線 104 9.5 炭酸ガス平衡曲線に表れるほかのパラメーター 106 9.6 代謝性変化とBase Excessの表現 107 9.7 ヘモグロビンの緩衝能の炭酸ガス平衡曲線上での表現 109 9.8 in vitroとin vivoの緩衝能の差,急性と慢性の差の表現 112 9.9 炭酸ガス平衡曲線の勾配の覚え方の復習 112 9.10 Pco2一定でのΔpHとBase Excessとの関係 114 9.11 Pco2-HCO3-曲線を覚える方法 115 9.12 Base Excess曲線のほかのプロット 115 おわりに 116 10 酸塩基平衡と薬物の作用 10.1 酸塩基平衡の異常が薬物の作用に影響を与える例 117 10.2 解離型薬物と非解離型薬物の併存とpHの影響 117 10.3 薬物の解離と作用との関係 118 10.4 メピバカインの作用と酸塩基平衡 119 10.5 薬物の作用とpK 120 10.6 メピバカイン中毒ではアシドーシスが好都合か 121 10.7 メピバカインと酸塩基平衡 つづき 122 10.8 酸塩基平衡の異常と腎による薬物の排泄 123 10.9 薬物のpHと薬物同志の作用の関係 124 おわりに 127 11 酸塩基平衡のその他の問題 11.1 プライマリーパラメータとセコンダリーパラメータ 128 11.2 動脈穿刺の“コツ” 128 11.3 全自動機種は正確か 129 11.4 酸塩基平衡の基本数式とコンピュータプログラム 129 11.5 細胞内酸塩基平衡と血球の数値との関連 131 11.6 CO2ナルコーシスと脳脊髄液の酸塩基平衡 132 11.7 BE3とは.BEとの差 133 11.8 significance bandとは何のことか 134 11.9 “アストラップ”とは何のことか 135 11.10 HENDERSON-HASSELBALCHのpKは6.1 136 11.11 血液ガスの温度補正の問題 137 11.12 血液ガスの温度補正は裸の王様か 137 11.13 酸塩基平衡を苦しまずに勉強する法 138 11.14 輸血と酸塩基平衡 139 11.15 心停止・心蘇生の酸塩基平衡 140 11.16 不凍液中毒と酸塩基平衡 141 11.17 Dichloroacetateとは.その酸塩基平衡での使用 141 11.18 「アルカリ食品」,「アルカリ飲料」の意味 142 12 問題と症例 12.1 Base Excessに関する問題 144 12.2 HENDERSON-HASSELBALCH式の問題 145 12.3 pH-logPco2の直線性の根拠 145 12.4 ヘモグロビン緩衝系に関して 146 12.5 pH=7.25,Paco2=42mmHgの分類 146 12.6 急性呼吸性アシドーシスの治療 147 12.7 代謝性アシドーシスの原因 147 12.8 代謝性アシドーシスと電解質異常 148 12.9 心蘇生後の循環動態不安定状態での重曹投与量 148 12.10 Base Excessの欠点 149 12.11 体温30度の低体温の患者の動脈血 149 12.12 重炭酸イオンの量 150 参考文献 152 書籍 152 コンピュータソフト 152 雑誌の連載 152 一般論文 153 索引 157

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