出版社内容情報
《内容》 Interventional Radiologyは次々と新しい方法が開発され,また各施設で種々の,工夫がこらされている.本書は本邦で最も症例数,経験の多い諸施設の第一人者が,自らの最新の方法,手技,その特徴,長所を症例を示して具体的に解説したものである.既に手がけている方々にも初心者にも役立つ実践的な指南書である.序MARGULISがInterventional Diagnostic Radiology(1968)という医学的用語を提唱してから4半世紀が過ぎた.MARGULISが使ったInterventionはInterpretationと区別する言葉であり,DOTTER(1964),BAUM(1971),SERVINENKO(1976),WALLENCE(1976),GRUNZEG(1978)など多くの先駆者による新たな放射線診療的操作であり,その後WALLENCEによって作られたInterventional Radilogy(IVR)として集約されるに至った. 本邦でも,その発展はめざましく,1982年には脳外科を中心に血管内手術研究会が発足し,1985年には放射線科を中心とした,日本血管造影・Intervenional Radiology研究会が生まれた.また,延吉ら(1986)によって導入されたPTCAはまたたくうちに日本中に拡がり,1992年には日本心血管インターベンション学会が誕生した. 従来からSurgical intervention(外科的処置)という用語があったにせよIVRは放射線診断技術から出発した新しい技術であり,手術的操作あるいは放射線診断学と一線を画した専門の分野である.IVRの多くが一見簡単な操作手順にみえるが,症例ごとに新しい工夫が織り込まれ,各施設によって様々な方法がとられている. 本書を作るきっかけは,1990(平成2)年に放射線科医を中心とした埼玉IVR研究会を発足させ,6カ所の病院の20数名の医師が集まり,年間3~5回,生のデータを持ち寄り,症例検討会の形で自由に話し合った.その結果,4年間に集まった125症例を基にいくつかの症例を選び,さらにその範囲を拡げ,新しい視点で脳神経外科,循環器内科,心臓外科,腹部外科,婦人科の領域のIVR症例をまとめて一冊の本にすることを思い立った.執筆して戴いた先生方も北海道から九州まで35ケ所,64人に及んだが,今までにはないユニークな本が出来上がった. 本書では,基本的な操作を1.塞ぐ.2.拡げる.3.その他,生検,ドレナージ,薬剤注入など3つのセクションに分け,IVRの手技を中心に現在行われている総ての分野のIVRを症例ごとに提示し,適応,リスク等多角的に説明した. このなかにある多くの知恵を汲み取って,日常の診療に生かして欲しいと切に望むものである. 医師の仕事は一義的には技術であり,常に技術の向上を心がけなければならない.また,診療の大部分は「ヒトの病気の処置」であることは確かであるが,医者が日常診ている患者さんが「悩みをもっている人間である」ことを忘れてはならない.したがって,その悩みを聞き,分かりやすく説明することを忘れると医術は自滅する. 最後に医聖ヒポクラテスの指導原理である「助力せよ,せめて損うな」をIVRを行う医師の自戒としたい.1994年春岩崎尚彌 《目次》 目次Interventional Radiology(介入的放射線医学)とは…… 11 塞栓術総説……〈岩崎尚彌〉 41.出血,血管性病変 A.頭頸部・脊髄 1.脳動脈瘤:液体塞栓物質……〈根本 繁〉 8 2.脳動脈瘤:detachable balloon……〈町田 徹〉 13 3.外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻:detachable balloon……〈牧田幸三〉 18 4.脊髄動静脈奇形:液体塞栓物質……〈宮坂和男〉 23 5.顔面の動静脈奇形:ゼラチンスポンジ……〈手島泰明〉 27 6.舌切断による大量出血:ゼラチンスポンジとコイル……〈山内禎祐〉 30 B.肺・心臓 1.大量喀血:ゼラチンスポンジ……〈松田啓次〉 33 2.肺動静脈奇形:detachable balloon……〈岩崎尚彌,田中淳司〉 37 3.FALLOT四徴症術後のB-T短絡:コイル……〈村上保夫〉 41 4.Major aort-pulmonary collateray(MAPCA):コイル……〈村上保夫〉 45 C.腹部 1.上部消化管出血:ゼラチンスポンジとIvalon……〈関 達夫,橋本 統〉 50 2.下部消化管出血:ゼラチンスポンジ……〈関 達夫,橋本 統〉 54 3.PTCD後のHemobilia(肝動脈塞栓術とPTCD瘻孔の塞栓術):コイル……〈鈴木 賢,酒井 洋,鈴木文直〉 60 4.肝動脈瘤:ゼラチンスポンジとコイル……〈森田 穣,宮田睦彦〉 63 5.脾動脈瘤:コイル……〈牧田幸三〉 68 6.胃静脈瘤(流入路・流出路同時性バルーン閉鎖下塞栓術):コイルと液体塞栓物質……〈森田 穣,山田政孝〉 71 D.腎・生殖器 1.外傷性腎出血:ゼラチンスポンジとコイル……〈松枝 清,小林尚志,倉本憲明〉 76 2.腎動静脈奇形:ゼラチンスポンジ・コイル・エタノール……〈佐藤幸彦〉 80 3.精索静脈瘤:detachable balloon……〈牧田幸三〉 84 E.骨盤・その他 1.骨盤骨折:ゼラチンスポンジとコイル……〈坂本 力〉 87 2.外腸骨動脈からの出血(F-Fバイパスの併用):コイル……〈竹下浩二〉 91 3.内腸骨動脈瘤:コイルとdetachable balloon……〈仙田哲朗,澤田 敏〉 94II.腫瘍その他:動脈科学療法を含む 1.進行肝細胞癌(Vp3破裂症例):リピオドールとゼラチンスポンジ……〈岡崎正敏,東原秀行〉 98 2.小型肝細胞癌(亜区域性塞栓化学療法):リピオドールとゼラチンスポンジ……〈中村仁信〉 102 3.肝細胞癌:経上腕動脈間欠的動注療法……〈藤原弘道〉 105 4.転移性肝癌:リザーバー留置による動注療法……〈荒井保明〉 109 5.腎血管筋脂肪腫:エタノールとゼラチンスポンジ〈鈴木孝司,関 達夫,谷本信弘〉 113 6.腎細胞癌の腰椎骨移転:ゼラチンスポンジ……〈岩崎尚彌〉 117 7.脾機能亢進症(部分的脾動脈塞栓術):ゼラチンスポンジ……〈宮内輝幸,鈴木 賢,鈴木文直〉 122 8.脾機能亢進症(脾動脈塞栓術):ゼラチンスポンジ……〈谷川 昇,澤田 敏〉 1262 拡張術総説……〈古井 滋〉 132 A.頭頸部の血管 1.クモ膜下出血後の脳動脈攣縮:バルーン……〈土屋一洋,牧田幸三〉 136 2.脳梗塞急性期:血栓溶解療法……〈黒川重雄〉 141 3.鎖骨下動脈狭窄:バルーン……〈森 耕一〉 149 4.鎖骨下動脈閉塞:バルーン……〈牧田幸三〉 151 5.維持例の鎖骨下静脈狭窄:バルーン……〈佐々木靖,石原保之〉 154 B.心大血管 1.冠動脈狭窄:レーザーPTA……〈鈴木 紳〉 157 2.冠動脈狭窄:aterecomy……〈鈴木 紳〉 161 3.冠動脈狭窄:メタリックステント……〈山口 徹〉 165 4.冠動脈狭窄:血栓溶解療法……〈鈴木 紳〉 170 5.経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術:PTMC……〈山口 徹〉 176 6.経皮的大動脈弁形成術:PTAV……〈大滝英二〉 183 7.大動脈縮窄症:バルーン……〈村上保夫〉 189 8.純型肺動脈弁狭窄症:バルーン……〈村上保夫〉 194 C.腹部,骨盤,四肢の血管 1.上腸間膜動脈狭窄症:バルーン……〈森田 穣〉 198 2.上腸間膜動脈血栓塞栓症:血栓溶解療法……〈森 耕一〉 202 3.腎血管性高血圧(腎動脈のPTA):バルーン……〈福田穂積〉 205 4.総腸骨動脈狭窄:バルーン……〈森岡伸夫,澤田 敏〉 209 5.下肢動脈閉塞:血栓溶解療法とPTA……〈竹下浩二〉 213 6.下肢動脈閉塞:atherectomy……〈橋本 統,平松京一〉 218 7.透析グラフトの閉塞:パルススプレー血栓溶解療法……〈橋本 統,平松京一〉 222 8.BUDD-CHIARI症候群:レーザーPTAとステント……〈古井 滋〉 226 9.急性下大静脈血栓症:経カテーテル血栓除去……〈山内禎祐〉 231 10.膵癌による門脈閉塞:メタリックステント……〈森田 穣,齋藤博哉〉 234 11.門脈圧亢進症:TIPS……〈木村誠志,山田龍作〉 239 12.門脈圧亢進症:TIPS……〈本田 実,宗近宏次〉 245 D.気管 肺癌による気管,気管支狭窄:メタリックステント……〈澤田 敏〉 250 E.胆道 1.胆管癌:腔内照射とメタリックステント……〈齋藤博哉〉 225 2.胆管癌:メタリックステント……〈吉岡哲也,打田日出夫〉 260 F.尿道・生殖器 1.前立腺肥大症による尿道狭窄:レーザー拡張術……〈田原達雄〉 250 2.女性不妊:卵管開通術……〈林 雅敏,岩崎尚彌,矢追良正〉 270 3 その他のIVR 解説……〈岩崎尚彌〉 276 A.血管 1.下大静脈フィルター……〈入江敏之〉 277 2.血管内異物除去……〈似鳥俊明〉 280 B.非血管 1.縦隔腫瘍:CTガイド下生検……〈小林正美,澤田 敏〉 284 2.肝細胞癌:PEIT……〈友田 要〉 284 3.胆嚢癌に伴う腹痛:腹腔神経ブロック……〈林 信成〉 292 4.肝嚢胞:エタノール注入療法……〈藤原義夫,澤田 敏〉 295 5.肝腫瘍ドレナージ……〈岩宮孝司,澤田 敏〉 299 6.膵偽嚢胞ドレナージ:経皮的膵偽嚢胞胃瘻造設術……〈倉本憲明〉 303 7.心嚢液ドレナージ……〈澤田 敏〉 307 8.胆管ドレナージ:PTCD……〈鈴木 賢,酒井 洋,鈴木文直〉 311 9.経皮的胃瘻造設術……〈倉本憲明〉 316索引…… 320