EBM―FAQで学ぶ理論と実際

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  • サイズ A5判/ページ数 389p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784498009806
  • NDC分類 492
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 EBMを臨床の場で実践するために必要な知識を,FAQの体裁で具体的かつわかりやすく解説した書.初学者が知りたい点を質問の形でとりあげ,それぞれに読み切りの形で簡明な解説を付した.全体を通読せずとも,日常診療の現場で疑問を感じた折りに適宜確認できる.EBMを実践するためのレファランスとして便利な書.
刊行に寄せて
 本書は東京慈恵会医科大学 環境保健医学教室の縣俊彦助教授の編著による.
 縣氏はこれまでEBM(evidence-based medicine)に関する多くの著書を執筆しており,この分野で目覚しい活躍をしている研究者の一人である.現在,医療のあり方が社会的に大きな問題になっている.特に,患者さんが受ける医療の質が問われている.EBMは単なる個人的な経験に基づくこれまでの医療ではなく,質の高い臨床疫学研究で得られた情報(根拠)に基づいた最良の医療を患者さんに提供しようとするものである.しかし,EBMが広まるにつれ,いろいろな意味でEBMという言葉が使われている.また,EBMを取り巻く医学と医療のあり方も変容してきた.
 これまでも臨床疫学研究は行われてきたが,研究の質が高く信頼できるものばかりではない.質の高い臨床疫学研究を行うには,適切な研究計画を立て,結果を信頼性のある方法で評価する必要がある.情報の収集方法によって研究の質や信頼性が変わることもある.これまで日本でも多くの臨床疫学研究が行なわれてきたが,信頼性の高いものが少なかった.また,臨床疫学研究の認識もそれほど高くなかった.しかし,東京慈恵会医科大学の創設者である高木兼寛は100年以上前に臨床疫学研究を行い,脚気の原因が食事にあることを示唆したが,社会的に認知されなかった.臨床疫学の方法は,薬物の臨床応用や新しい治療法を臨床に応用する時にも必要で,今,多くの人がその必要性を認識している.
 臨床疫学研究にたずさわる人は,どのような場合にどのような方法を用いるのが妥当なのかなど,具体的なことを知りたいと思うことがしばしばある.普通の書物は系統的に書いてあるので,読者が疑問を解決するためには書物には書いていないより現実に即した具体的な説明が欲しくなる.
 本書はまさにこのような要望に対応して書かれたものである.読者が疑問に思うであろうことを想定して的確に答が書かれている.自分が知りたいと思うところを探して読んでもいい.これまで刊行された著書とともに本書を読むとより理解が深まるのではないかと思う.
 本書は単にQ&Aだけではなく,EBMの歴史やその意義,EBMをとりまく現代医療の問題点,医学に求められるものなどについても触れられている.単にEBMのQ&Aというだけでなく,医学と医療のあり方を考えさせられる著書である.座右において疑問が生じたら本書を参照するのもよい.この分野に興味をもっている多くの方に読んでいただきたい.
  2002年12月
    東京慈恵会医科大学学長 栗原 敏

 最近,疫学,特に臨床疫学,EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉を巷で耳にすることが多くなり,医学,医療の世界では特にその感が強い.
 編者らがカナダ マクマスター大学に始まったEBMの普及,啓蒙活動を始めて7,8年になる.そのような活動のせいか,ある出版社からの依頼で,5年前には日本で初めてのEBMのテキストブックを発刊することとなった.欧米のEBMの単なる受け売りではなく,日本の実状を考慮して内容を検討,選択,記述したものであった.その後多くの出版社から,EBMブームということでEBMの訳本,テキストブックが発売されているが,編者の目から見ると,日本の実状を考慮せず受け売り的に出版している感を強くするものが多い.幸い編者らのテキストブックは多くの支持を得,改訂,追加の要望もたくさんいただき,それらを考慮し,改訂版も出版された.
 その後も,日本の現状を踏まえつつ,「EBMのための新GCPと臨床研究」,「EBMのためのPubMed,Impact Factor」,「EBMのためのクリティカルパス」など,多数のEBM関連図書を上梓させていただく機会に恵まれ,微少なりとも,わが国のEBM実用の普及,発展,啓蒙に資する部分があったと自負している次第である.
 しかし最近,EBMという言葉が世間一般に流布するにつれ,その誤解,誤用ともとれる用法が巷に氾濫している状況もしばしば目にとまるようになった.これらの状況は大いに危惧すべき危機的状況である.
 そこで今回編者らは,EBM及びその周辺状況を確定した上で,EBMに関するFAQ(frequently asked questions)に回答させていただく形を取りながら,EBMの誤解を解き,正しいEBMの普及と実践のために本書を纏めることとした.
 内容的には,Part 1とPart 2に2分し,記載した.「Part 1.EBMとは」では,1章で「EBMの定義の変遷」と大原則を掲げ,2~11章では,EBMの関連,周辺領域である,臨床疫学,医学統計学,医学判断学,artとしての医学,医のart,ヘルシンキ宣言,インターネット活用,人種差・民族差,DRG/PPS,クリティカルパス等に関し,詳述した.
 「Part 2.EBM-FAQ」では,編者ら担当者が講義,講演の時などよく質問される問題について,28問をとりあげ,各執筆者が全精力を傾け,その問に回答する形で,真のEBMについて詳述させていただいた.
 また,本著は数名の著者で記載しているため,用語の統一,一冊の本としての流れの一貫性などには編著者,分担著者が細心の注意を払った.しかし,編集・校正期間が短かったため,不完全の部分があるやもしれない.この点に関しては読者の皆様方の忌憚のない御意見をいただきたい.
 また,類似した図表が何カ所かにみられるが,これは1カ所にまとめるよりも,適宜必要箇所で参照できた方が煩雑さがなくなり,理解を助けるものと判断したので,そのような形式とした.これらの点に関しても読者の皆様方の御批判,御意見をいただきたい.
 企画から,校正,編集に至るまで長期にわたり,ひとかたならぬ協力と激励をいただいた中外医学社の小川孝志氏を初めとする編集スタッフ一同には心から感謝を申し上げたい.また,著者らの原稿を精読し,貴重なコメントをいただいた東京慈恵会医科大学大学院 中村晃士医師,西岡真樹子医師,佐野浩斎医師をはじめとする皆様にも多大な協力とご援助をいただいた.記して感謝の意を表したい.さらに,資料整理,イラスト作成などにご協力をいただいた縣千聖嬢,縣賢太郎氏には最大の謝意を表したい.
  2002年12月
    縣 俊彦
    

《目次》
Part 1.EBMとは  1
1.EBMの定義の変遷  [松島雅人]  2
2.EBMの周辺-1 臨床疫学とは  [岡山雅信]  8
3.EBMの周辺-2 医学統計学とは  [縣 俊彦]  40
4.EBMの周辺-3 医学判断学とは  [大澤 功]  64
5.EBMの周辺-4 artとしての医学  [縣 俊彦]  80
6.EBMの周辺-5 医のart  [縣 俊彦]  92
7.EBMの周辺-6 ヘルシンキ宣言  [縣 俊彦]  106
8.EBMの周辺-7 インターネット活用  [西村理明,縣 俊彦]  115
9.EBMの周辺-8 EBMでの人種差・民族差  [縣 俊彦]  137
10.EBMの周辺-9 EBMとDRG/PPSの関係  [縣 俊彦]  153
11.EBMの周辺-10 EBMとクリティカルパスの関係
  [縣 俊彦,松島雅人,小路美喜子]  173
Part 2.EBM-FAQ  193
Q1.EBMはいつごろ始まったのですか?  [縣 俊彦]  194
Q2.EBMとは要するに何なのですか?  [縣 俊彦]  196
Q3.EBMは学問なのでしょうか?  [大澤 功]  199
Q4.EBMは誰に最も有効でしょうか?  [松島雅人]  202
Q5.なぜ今EBMなのですか? 以前も,皆,最良の医療を求め努力していたはずですが.  [縣 俊彦]  204
Q6.何がEBMで,何がEBMではないのですか?  [縣 俊彦]  209
Q7.EBMの根幹という臨床疫学とはどのような学問,方法論ですか?
  [縣 俊彦]  213
Q8.臨床疫学は疫学研究のタイプの中でどんな位置にありますか?
  [縣 俊彦]  217
Q9.誤差,バイアスはどんなものが考えられますか? 
  そしてその対策は?  [縣 俊彦]  221
Q10.EBMの根拠とその実践での活用法とはどんなものですか?
  [縣 俊彦]  228
Q11.EBMとガイドラインの関係はどうなっていますか?  [大澤 功]  241
Q12.EBMで医療資源の再配分は可能でしょうか?  [大澤 功]  244
Q13.EBMで日常の診療は可能なのでしょうか?  [松島雅人]  247
Q14.EBMで研修できるでしょうか?  [岡山雅信]  250
Q15.EBMで医療過誤はなくなるでしょうか?  [大澤 功]  254
Q16.EBMの根拠はRCTとメタアナリシスのみなのでしょうか?
  [松島雅人]  258
Q17.EBMの4つのステップの見直しについて教えてください.
  [岡山雅信]  261
Q18.EBMの回答可能な質問はどう作るのでしょうか?  [岡山雅信]  265
Q19.EBMのevidenceを探す時,The Cochrane Collaborationと
  The Cochrane Libraryが重要といわれますが,これを説明
  してください.  [縣 俊彦]  272
Q20.PubMedは世界最大の無料医学文献データベースといわれますが,
  これはどんなものですか?  [縣 俊彦]  281
Q21.構造化抄録という言葉をよく耳にしますがこれは何ですか?
  [縣 俊彦]  288
Q22.実際の臨床問題に対して,文献検索・評価はどのように行っていく
  のですか?  [縣 俊彦]  290
Q23.EBMのevidenceの批判的吟味・解釈はどのように行うのでしょうか?    298
【1】概論  [松島雅人]  298
【2】総説(メタアナリシス)  [松島雅人]  305
【3】原著(治療)  [岡山雅信]  309
【4】原著(診断)  [岡山雅信]  321
【5】原著(予後)  [大澤 功]  330
【6】原著(害)  [大澤 功]  337
Q24.EBMのevidenceの批判的吟味・解釈の具体例を示してください(1).
  [岡山雅信]  347
Q25.EBMのevidenceの批判的吟味・解釈の具体例を示してください(2).
  [松島雅人]  355
Q26.EBMのevidenceの臨床への応用時に何を注意すべきでしょうか?
  [松島雅人]  368
Q27.EBMの自己評価のノウハウを教えてください.  [岡山雅信]  372
Q28.EBMのメーリングリストの活用法を教えてください.
  [柳 修平]  377
索引    381

目次

1 EBMとは(EBMの定義の変遷;EBMの周辺)
2 EBM‐FAQ(EBMはいつごろ始まったのですか?;EBMとは要するに何なのですか?;EBMは学問なのでしょうか?;EBMは誰に最も有効でしょうか?;なぜ今EBMなのですか?以前も、皆、最良の医療を求め努力していたはずですが. ほか)

著者等紹介

縣俊彦[アガタトシヒコ]
1976年東京大学医学部卒業。1981年東京大学大学院医学系修了。米国留学等を経て、1985年東京慈恵会医科大学講師。1998年同助教授。現在に至る。専攻は疫学方法論、医学統計学、EBM(Evidence‐Based Medicine)、臨床疫学

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