Bioscience series<br> カルシウムのシグナル伝達機構

Bioscience series
カルシウムのシグナル伝達機構

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  • サイズ B5判/ページ数 201p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784498008946
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》 細胞内で多彩な機能を担うカルシウムシグナルをめぐっては様々な角度からのアプローチがなされており,研究の進展は著しい.細胞内でのカルシウム動態や受容体の構造と機能をはじめとして情報伝達を司る細胞内機構から,受精・ホルモン分泌・リンパ球の活性化などにおける生理的役割までを明快に解説し,カルシウムが創り出す複雑で精緻な世界をわかりやすく紹介した. 序  ゾウリムシなどの単細胞の生物から哺乳動物のあらゆる臓器の細胞に至るまで,細胞の運動は細胞内のカルシウムイオンによって制御されている.今ではどんな教科書にも記載されているこの事実も,約30年前この分野のパイオニアによって骨格筋の収縮機構が解明されるまではまったく予想すらされていなかったのである.1960年代に江橋節郎博士により骨格筋の収縮,弛緩を制御する因子,さらには刺激,収縮連関の細胞内メッセンジャーとしてしカルシウムイオンの役割が確立された.その後垣内史郎博士によりカルモンジュリンが発見され,筋肉の収縮にとどまらず,刺激,分泌連関を始め多くの細胞機能がカルシウムイオンによって制御されていることが次々に明らかにされてきた.今日ではカルシウムイオンは多彩な細胞機能を調節するもっとも普遍的な細胞内メッセンジャーとして広く認識されるようになっている.  生命は30億年以上前の太古の海で発生したとされている.カルシウムイオンは海水の構成成分として豊富に存在していたと予想されるので,初期の生物が簡単な構造でかつすぐ手にはいるカルシウムイオンを細胞内の情報分子として利用したとしても不思議はない.とにかくカルシウムイオンはシグナル物質としての地位を得,進化とともに多くの生物の中で細胞内シグナルとして働いてきたわけである.しかしカルシウムイオンには同時に細胞毒という側面があり,長時間にわたって細胞内濃度が増加し細胞内に蓄積すると危険な状態を招いてしまう.細胞毒を情報物質として利用してしまった細胞はこうして「カルシウムイオンによる障害」をなるべく少なくしかつ効率よく(切れ味よく)利用するための様々な知恵を身につけてきたのである.本所ではシグナル物質としてのカルシウムイオンについて様々な角度から解説していただいた.カルシウムを巧妙に利用する細胞の知恵を理解していただければ幸いである. 1993年9月 小島 至    《目次》 目次 1.細胞内のカルシウムイオン動態とその調節〈最上秀夫〉 1 A.細胞内外のカルシウムイオンの分布とその制御 1 1.カルシウムイオンの細胞外への排出機構 1 2.細胞内のカルシウムイオンプール 3 3.細胞膜のカルシウムイオンの流入機構 4 4.小胞体のカルシウムイオン放出機構 4 B.カルシウムイオンによる調節様式 4 2.細胞内カルシウムイオンシグナリング 6 1.受容体の構造と機能〈峯岸 敬〉 6 A.GTP結合蛋白質とカップルする受容体 7 B.リガンド結合部位 8 C.細胞内ドメイン 10 D.糖鎖 11 2.G蛋白質を介する細胞膜内情報伝達〈飯利太朗/堅田利明〉 15 A.G蛋白質を介する情報伝達系のonとoff 15 B.G蛋白質の構造と機能的部位 17 1.グアニンヌクレオチドの結合部位 17 2.受容体およびエフェクター系との相互作用部位 17 3.αとγサブユニットへの脂肪酸付加 18 C.ADPリボシル化とG蛋白質の機能変化 18 D.G蛋白質によって制御されるカルシウムイオン系 20 1.ホスホリパーゼCの活性化とG蛋白質 20 2.G蛋白質によるカルシウムイオンチャネルの開口制御 22 3.カルシウムイオンによる情報伝達とPIレスポンス〈加納宏行/野沢義則〉 26 A.膜リン脂質代謝とカルシウムイオンとのかかわり 26 B.カルシウムイオン動員とPIレスポンス:その主役ホスホリパーゼC 28 1.PO-PLCの多様性 28 2.PI-PLCの活性化機構 28 C.アラキドン酸カスケードとホスホリパーゼA2 31 1.分泌型と細胞質90kDa型のPLA2 31 2.アゴニスト刺激によるPLA2活性化機構 31 D.レシチン分解を介する情報伝達 32 1.レシチン分解の生理的意義 32 2.レシチン分解系酵素の活性化機構:PLDを中心に 33 E.スフィンゴミエリンサイクル 35 4.イノシトール1,4,5-三リン酸によるカルシウムイオン動員〈平田雅人〉 40 A.Ins(1,4,5)P3によるカルシウムイオン動員 41 1.Ins(1,4,5)P3とは 41 2.Ins(1,4,5)P3作用 41 3.Ins(1,4,5)P3作用機序 42 4.Ins(1,4,5)P3作用の調節 42 B.Ins(1,4,5)P3受容体 43 1.受容体の精製と構造 43 2.受容体の再構成 45 3.受容体の多様性 45 C.Ins(1,4,5)P3代謝と他のイノシトールリン酸の機能 46 1.Ins(1,4,5)P3代謝 46 2.イノシトールリン酸の機能 46 5.受容体によるカルシウムイオンチャネルの調節〈河西春郎〉 51 A.受容体カルシウムイオンチャネル 52 B.間接的なROCCの調節 53 C.VDCCのG蛋白質による直接調節 54 D.VDCCのセカンドメッセンジャーを介する間接調節 56 6.カルシウムイオン依存性プロテインキナーゼ〈田中利男/加藤晶俊〉 61 A.ミオシン軽鎖キナーゼ 61 1.分子構造とドメイン機能 61 2.調節機構 62 3.ミオシン軽鎖リン酸化反応と平滑筋収縮弛緩 64 B.カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII 64 1.分子構造と調節機構 64 2.生理的役割 65 C.プロテインキナーゼC 66 1.分子構造とドメイン機能 66 2.生理的役割 67 7.細胞内カルシウムオシレーション〈丸山芳夫〉 70 A.細胞内カルシウムオシレーションの定義と形式 70 B.カルシウムイオンシグナル伝達機序の概要 72 C.オシレーター 73 1.カルシウムポンプ 73 2.Ca-induced Ca-release(CICR) 74 3.IP3受容体の感受性変化 74 4.IP3生成変動 74 5.IP3の生成を伴わないオシレーション 75 8.カルシウムイオンによる遺伝子転写調節―副甲状腺ホルモン遺伝子の抑制的調節 〈五十嵐徹也/ 雄一/西下聡英/岡崎具樹〉 78 A.副甲状腺ホルモン遺伝子の転写調節 79 B.サイレンサー様エレメントoligo A,oligo Bに結合する特異的核蛋白 81 C.カルシウムイオンと遺伝子 82 3.カルシウムイオンの生理的役割87 1. 受精とカルシウムイオン波〈宮崎俊一〉 87 A.カルシウムイオン波 87 B.細胞内カルシウムイオン遊離機構 88 C.IP3の注入 88 D.IP3受容体抗体によるIICRの抑制 90 E.受精卵のカルシウムイオン遊離反応のブロック 90 F.見かけのCICR:Ca2+-sensitized IICR 92 G.カルシウムイオン波の成立機序 92 H.カルシウムイオン振動 93 I.IP3産生までの信号伝達 94 J.カルシウムイオンと細胞周期進行 94 2.グルタミン酸受容体チャネルとカルシウムイオン〈小澤 司〉 98 A.グルタミン酸受容体チャネルのカルシウムイオン透過性 98 1.グルタミン酸受容体チャネルのサブタイプ 98 2.NMDA型受容体チャネルのカルシウムイオン透過性 100 3.non-NMDA型受容体チャネルのカルシウムイオン透過性 101 B.シナプス伝達と可塑性変化 102 2.長期増強 102 3.血小板活性化機構とカルシウムイオン〈久米章司/尾崎由基男/矢冨 裕〉 108 A.血小板内カルシウムイオン 108 B.カルシウムイオン動員に関与するメディエーターとしてのイノシトールリン酸 109 C.細胞膜を介してのカルシウムイオンの流入 111 D.カルシウムイオン流入の経路 111 1.受容体作動性カルシウムイオンチャネル 112 2.セカンドメッセンジャー作動性カルシウムイオンチャネル 112 3.カルシウムイオン貯蔵部位のカルシウムイオン枯渇状態に依存するカルシウムイオン流入 113 4.好中球の活性化とカルシウムイオン〈光山孝志/竹重公一朗/水上茂樹〉 117 A.好中球における[Ca2+]iの調節 117 B.好中球の活性化とカルシウムイオン 120 1.NADPH oxidaseの活性化 120 2.脱顆粒 124 3.食作用 124 4.接着・遊走 125 5.アラキドン酸代謝 125 5.リンパ球の活性化とカルシウムイオン〈佐々木輝捷/佐々木洋子〉 131 A.Tリンパ球の活性化とカルシウムイオン 131 1.T細胞受容体(TCR)-CD3複合体 131 2.TCR-CD3複合体の架橋刺激に伴う非受容体型蛋白質チロシンキナーゼ(PTK)の活性化 132 3.TCR-CD3複合体に共役するPTKにより活性化されるシグナル伝達路 132 4.Tリンパ球の活性化に伴うIL-2遺伝子発現の誘導とカルシウムイオン 134 5.Tリンパ球の活性化に伴うRas,RafおよびMAP2キナーゼの活性化 137 B.Bリンパ球の膜免疫グロブリン(mlg),肥満細胞,塩基好性白血球のFcεRI,およびNK細胞のIgG-Fc受容体,FcγRIIIa(CD16)の架橋刺激に伴うPLC-γチロシン残基のリン酸化と[Ca2+]i上昇応答138 6.成長ホルモン分泌と細胞内カルシウムイオン濃度の調節〈加藤昌克〉 144 A.GH分泌の促進と細胞内カルシウムイオン 144 1.高濃度K+刺激 144 2.GRFにうるGH分泌の促進 146 B.SRIFの作用機構 150 7.ゴナドトロピン分泌とカルシウムイオン〈廣田憲二〉 153 A.GnRH受容体 153 B.GnRHによるゴナドトロピン分泌 155 1.GnRHとサイクリックヌクレオチド 155 2.GnRHとPIレスポンス 155 3.Cキナーゼ 156 4.カルシウムイオン 156 5.アラキドン酸とその代謝産物 157 C.その他のゴナドトロピン分泌促進因子 158 8.インスリン分泌とカルシウムイオン〈柴田 宏/鈴木洋一〉 161 A.生理的なインスリン分泌の刺激因子 161 B.グルコースのインスリン分泌刺激作用 162 1.膵ラ島B細胞のグルコース認識機構 162 2.グルコースによる膜電位の調節 163 3.グルコースによる細胞内カルシウムイオン濃度の変化 165 4.グルコース刺激によるインスリン分泌 165 5.グルコースとインクレチンによるインスリン分泌 169 9.胃酸およびペプシノーゲン分泌調節とカルシウムイオン〈的崎 尚/木下芳一〉 173 A.壁細胞からの酸分泌と細胞内カルシウムイオン 173 B.主細胞からのペプシノーゲン分泌と細胞内カルシウムイオン 176 C.受容体とG蛋白質の連関 177 D.アゴニスト刺激による[Ca2+]i変化 177 10.膵外分泌とカルシウムイオン〈菅野富夫〉 180 A.膵外分泌腺の構成 180 B.CCKなどの濃度差と標本の差による刺激-放出連関の相違 180 C.Ca2+-PI回転系モデル 181 D.膵腺房の刺激-分泌連関 185 11.平滑筋収縮とカルシウムイオン〈多久和 陽〉 189 A.セカンドメッセンジャー産生機構 189 1.受容体・G蛋白質・ホスポリパーゼC 189 2.カルシウムイオンチャネル 190 3.細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i) 191 B.セカンドメッセンジャー産生以後の機構 192 1.20kDa MLCリン酸化とその調節 192 2.Cキナーゼの活性化とその役割 195 索引 198

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