出版社内容情報
《内容》 遺伝子の核酸レベル,蛋白レベルの解析は今や医学,生物学のあらゆる領域の研究に必須のものとなっている.本書はこれらの進歩に即応して分子生物学,遺伝子工学分野の具体的実験法を初心者にもわかり易く解説したものである.各項は「原理」「準備する物」「実験操作」「結果と考察」につき,単なる手技の説明のみでなく,失敗の落し穴,それを乗り越えるコツなど,実践的な注意点が示されており,必ずや多くの方々に役立つものと思われる.序 現代の医学,生物学は遺伝子解析をその基本として,歴史上かつてなかった大きな発展の時期を迎えている.その象徴的な研究は,約15年前のがん遺伝子srcの発見であった.それ以前には,がん細胞の内側で生じている分子レベルの異常についてはほとんど不明であったのに対し,src発見以後のヒトのがんに関わる多くのがん遺伝子,がん抑制遺伝子の発見は,がん研究の様相を大きく転換させ,「がんは多段階の遺伝子変異の結果である」との概念を定着させた. 一方,嚢胞線維症や糖尿病の一部など,さまざまな遺伝性疾患,内分泌性疾患,神経疾患に関して原因遺伝子が明らかにされ始めており,新しい診断法,治療法の開発も期待できる時代に入っている. このように,遺伝子の核酸レベル,タンパク質レベルの解析は今や医学,生物学のほとんどあらゆる領域で研究に必須のものとなっており,進歩に即応した具体的な実験法の解説書,手引書は多くの研究者にとって,大変有用なものと考えられる. 本書はこのような研究者の期待に添えるよう,現在第一線で活躍されている多数の研究者の方々にお願いし,貴重な時間を割いて実験の解説をしていただいた.各項が「原理」,「準備する物」,「実験操作」,「結果と考察」に分かれ,単なる手技の説明のみでなく,どのような点に失敗の落し穴があるか,また,それを乗り越えるコツなども解り易く示してある.是非,多くの方々に利用していただくことを希望すると同時に,執筆して下さった国外の研究者を含む多くの先生方に厚く御礼を申し上げる次第である.また,中外医学社編集部の方々の粘り強い努力なしには本書は完成しなかったものであり,ここに深く謝意を表したい.1994年9月 編者 《目次》 目次I.遺伝子の検索法 1 1.DNAの調製法 〈渋谷正史〉2 ・付 DNAの微量迅速調製 2.RNAの調製法 〈渋谷正史〉8 ・グアニジン/超遠心法 ・グアニジン/酸性フェノール法 ・細胞質RNAの微量迅速調製法 3.プラスミドDNAの調製法 〈渋谷正史〉15 ・アルカリSDS法 ・煮沸法 ・大量調製法 4.ファージDNAの調製法 〈渋谷正史〉20 5.サザンブロッティング 〈渋谷正史〉24 6.ノザンブロッティング 〈渋谷正史〉32 7.サザンブロッティング,ノザンブロッティングのプローブの調製法 〈渋谷正史〉36 ・ランダムプライマー法 ・ニックトランスレーション法 8.2次元DNA解析法 〈畑田出穂・林崎良英・広常真治・向井常博〉40II.遺伝子の単離法 49 1.ゲノムDNAライブラリー 〈松七五三仁〉50 2.cDNAライブラリーλ 〈松七五三仁〉56 3.cDNAライブラリープラスミド 〈横田 崇〉62 4.コスミドライブラリー 〈坂本裕美〉70 5.YACクローンの解析法 〈今井高志・飯田有俊〉81 A.パルスフィールドゲル電気泳動によるYACクローンの構造解析法 81 B.コスミドライブラリー作成のための高分子DNAの調製法 85 C.ベクトレットPCR法を用いたYACインサート末端フラグメントの単離法 87 6.スクリーニング法 92 A.ウエストウエスタン法 〈田中伸哉・松田道行〉92 B.パンニング法 〈伊藤直人〉99 C.ソーティング法 〈中村幸夫〉107 D.フィルムエマルジョン法 〈北村俊雄〉113 E.発現スクリーニング 〈原 孝彦・宮島 篤〉123 F.マクロオートラジオグラフィーによる受容体cDNAのスクリーニング 〈石原 健〉127III.遺伝子の解析法 133 1.蛍光法自動シークエンサーによる塩基配列決定法 〈服部正平〉134 2.転写プロモーター解析法 144 A.S1マッピング法とプライマー伸長法 〈吉田哲郎〉144 A.S1マッピング法 144 B.プライマー伸長法 148 B.CATアッセイ法 〈吉田哲郎〉152 C.ルシフェラーゼアッセイを用いた転写活性の測定法 〈大倉永也・藤原佳浩・武部 豊〉158 3.転写因子解析法 167 A.DNase I protection法 〈正井久雄〉167 B.gel retardation法 〈井上純一郎〉175 A.転写調節因子を含む分画の調製 175 B.プローブの調製 178 C.gel retardation実験 179 C.South-Western法 〈正井久雄〉183 D.in vitro転写系 〈坪井昭夫〉188 4.アンチセンス配列を用いた解析法 〈横山一成〉196 ・構成的遺伝子発現抑制系 ・アンチセンスオリゴマーの選択と合成,精製 5.SH2, SH3ドメインを介するタンパク質間相互作用の検出法 〈BRUCE J MAYER(後藤典子 訳)〉204 A.大腸菌中での発現 204 B.相互作用するタンパク質の検出 206 ・アフィニティークロマトグラフィー ・フィルターバインディング C.タンパク タンパク会合の阻害 209IV.細胞への遺伝子導入法 213 1.動物細胞系 214 A.発現ベクター系の概説 〈小田鈎一郎〉214 A.薬剤耐性プラスミドベクター 214 B.広い宿主域の細胞で高レベルに発現するベクター 216 C.プロモーター活性を制御できる発現ベクター 218 D.休止期の細胞で強く発現するベクター 220 E.エピソームベクター 221 B.方法 226 (1)リン酸カルシウム法 〈清水憲二〉226 (2)エレクトロポレーション法 〈北村俊雄〉231 (3)リポソーム法 〈保田立二〉238 2.GST融合によるタンパク質精製法 〈山本克也・高橋知子・渋谷正史〉245 3.バキュロウイルス発現系 〈松浦善治〉251 4.PCR法によるin vitro変異導入法 〈後藤典子〉260 ・部位突然変異 ・欠失,挿入変異およびキメラ遺伝子の作製 5.DNA配列に基づいた遺伝子産物に対する特異抗体の作成法 〈大海 忍〉265 A.合成するペプチドのアミノ酸配列の決め方 265 B.ペプチドの合成 267 C.ペプチドのキャリアタンパク質への結合 268 D.抗原の動物への免疫と抗血清の調製 270 E.ドットブロット法とウエスタンブロット法 272 F.ペプチドを固定化したアフィニティーカラムによる抗体の精製 278 G.リコンビナントタンパク質を用いた抗体の作成法 280 H.ブロッティング膜を利用した抗体の精製法 281V.個体レベルの遺伝子解析 285 1.トランスジェニックマウス 〈山田純子〉286 2.ジーンターゲッティング 〈花岡和則〉298VI.その他 309 1.PCR-SSCP法 〈八島一夫・関谷剛男〉310 2.in situ hybridization法 〈尾上 均・山崎 大・磯崎耕次・実宝智子・廣田誠一・野村慎太郎〉319索引 329
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