出版社内容情報
《内容》 免疫の生体における意義・免疫現象に関与する細胞・抗体・リンパ球・補体の働き・アレルギーとは・感染防御のメカニズム・免疫担当因子の発達・免疫学的記憶・免疫応答の調節機構・組織適合抗原と免疫応答遺伝子・腫瘍と免疫・免疫不全・自己免疫など,今日の免疫学のエッセンスを第一人者が初めて学ぶ方々に理解できるよう,初学者と専門家の問答形式によって解説した.今回,最新の知見により改訂した.
第9版の序
本書の初版は1981年に刊行された.当時はB細胞,T細胞を中心とする免疫担当細胞の相互作用の研究が盛んであった時代である.その後そうした細胞の時代から,自動細胞解析装置の導入による細胞表面分子の研究,次々と同定されてきたサイトカインの研究,そして分子生物学を中心とする機能分子の解析,細胞内シグナル伝達,遺伝子機構の研究へといくつかの大きな流れがあった.そのような免疫学の進展に対応すべく,2~3年ごとの改訂を行ってきたが,部分的取りつくろいでは対処しきれないと考え,7版ではほとんど書き直しをした.本版はそれに新しい情報,その後気付いた点を付加し,手直ししたものである.問答形式でポイントを明確にしつつ,複雑な免疫機構をなるべく分かりやすく解説したつもりである.免疫学に関心をお持ちの方の入門書として御利用頂ければと思う.
2002年7月
著 者
初版の序
国外から国に危害を与えるようなものが攻め入ってきたらそれを防がねばならない.国内においても秩序を乱すようなものが現れたらそれを抑えなければならない.免疫は生体においてそれと同じような働きをしている.免疫のメカニズムやそれを担当しているものについての知識はこの10~20年の間に飛躍的に増してきた.実にユニークな機構が存在することが次々に明らかにされてきたのである.
免疫学についての関心は高く,知識をえたいという人は多い.しかしながら,難しくてよくわからない,とりつきにくいというような声もよく耳にするのである.近年とみに脚光をあびた学問の分野である.できるだけ多くの人にその内容を知って頂けたらと思う.
筆者も免疫学の各領域に詳しい知識をもっているわけではないが,初学の方々に専門知識への橋渡しができたらというような気持ちでこの本を書いた.できるだけ親しみをもって頂けるようにという目的で問答形式で書かれている.このような形式は親しみやすいというばかりでなく,問題点をはっきりさせるということにも役に立つと思う.本書を気楽に読み流して頂けば,免疫学のアウトラインが頭に入り,専門用語についての理解もできるのではないかと思う.更に詳しい知識をえたい方はその上で本格的な免疫学の書物にとり組んで頂けば,当初とりつきにくいと思った本も身近なものに感じられるようになっているであろう.免疫学に興味をお持ちの方々にお役に立てば幸いである.
1981年10月
著 者
《目次》
目次
1.免疫とは何か 1
自己と非自己
自己と非自己の識別
抗原レセプター
非自己の排除
T細胞の抗原認識とMHC
非自己細胞の破壊
大まかな非自己の認識
免疫とアレルギー
2.抗体の構造と機能 17
抗体の構造
抗体の抗原結合部の多様性
-どうして無数に近い種類の鍵穴が用意できるのか
免疫グロブリンとそのクラス
抗体の働き
3.白血球の種類 40
4.リンパ球の種類と働き 43
B細胞
T細胞
NK細胞
NKT細胞
LAK
5.T細胞と抗原との反応 54
6.T細胞の分化 64
7.B細胞からの抗体産生 72
B細胞の分化
T細胞による抗体産生補助
抗体産生
8.異物の除去と食細胞 77
9.異質細胞の破壊 81
キラーT細胞
NK細胞
抗体の関与する細胞傷害
輸血反応
移植拒絶反応
移植片対宿主反応
がん免疫
10.免疫反応の調節 97
抗イディオタイプ抗体
Fcレセプターを介する制御
細胞死による制御
負のシグナルによる制御
サプレッサーT細胞
11.免疫細胞の動態 106
12.サイトカイン 114
サイトカインとサイトカインネットワーク
インターロイキン
13.補体の働き 121
活性化の古典経路
活性化の二次経路
補体の制御
14.感染をどうやって防ぐか 129
局所免疫
化膿菌の防御
細胞内寄生菌の防御
ウイルスの防御
予防接種
免疫不全
15.免疫反応が起こす病気 143
アレルギー
免疫トレランス(免疫寛容)
自己免疫
索 引 156
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- 和書
- 持続的開発と生命系