内容説明
宋版に代表される中国の貴重書「善本」とは?第1部「書誌学のすすめ」では、その価値観と見方を懇切に講義。第2部「書物の生涯」では、台北・故宮博物院につたわる善本の旅に思いを馳せ、書物の誕生から終焉、再生と流転までのドラマをたどる。第3部「書誌学の未来」では、古来、隆盛と破壊を繰り返してきた中国の書物文化史を概観。清末の学者・楊守敬が日本で蒐集した典籍のその後を追跡しながら、現代の書誌学による調査の実例を紹介する。さらに中国で進行中の国家プロジェクト「中華再造善本」「古籍普査」など最新の動向にも触れる。今に受け継がれる愛書の志とともに、中国と日本を結ぶ書物文化の水脈に迫る。
目次
第1部 書誌学のすすめ(「書誌学」とは何か;中国「文献学」の現況;「善本」の意味するところ ほか)
第2部 書物の生涯(書物と旅;書物の誕生;書物の終焉と再生 ほか)
第3部 書誌学の未来(楊守敬の購書;典籍の聚散―焚書から『四庫全書』の受難まで;日本に渡った典籍の帰郷;古籍の流通史研究と古籍普査 ほか)
著者等紹介
高橋智[タカハシサトシ]
1957年仙台市生まれ。1986年慶應義塾大学文学研究科修士課程修了。1986~1988年上海復旦大学古籍整理研究所高級進修生。1990年慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学。現在、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hyena_no_papa
3
書名に『書誌学のすすめ』とあり、「あとがき」に「特に若い人や一般の方にも向け」と書かれるように、専門畑内に向けて書かれた本でないことは確かなんだろう。しかし、恐らく多くの古代史ファンにとっては読んでも〝ナンノコッチャ〟という印象を持たれるのかも知れない。中国では古来様々な書物が書かれてきたが、それらが今日に伝わる過程においてどれほどの困難な運命を辿ったのか。校勘学の奥深さとともに榎一雄氏の論考にも触れてきて、それを知らないわけではなかったが、この書に描かれる世界は、まさに〝未踏の大陸〟を眼前にする思いだ。2024/06/24
黎明 曉
2
まーじーで、現役院生で書誌学演習やってた時に読みたかったぁ・・orz(世にこれを勉強しない学生という) ここに書かれている版本の概念と歴史は基礎中の基礎。勉強の足りなさを痛感させられる1冊でありました。書誌学の技術ではなく概念を知る良書。これ読んでやっとスタートライン、そして果てしなく広がる学問の広野・・中国文学は本当に奥深いですね。2021/08/10
kure
1
東アジアのビブリオフィリアによる気の遠くなる営み。読んでいくうちに書誌学の奥深さに引き込まれていった。東方選書の帯にある「学術エンターテインメント」の看板に偽り無し。2024/11/20