出版社内容情報
植民地教育で、基本となるのが民族関係であることまでは大方の論者も認めるであろう。しかしその関係のあり様や本質を「相克」と捉えることには批判があるだろう。何故なら、植民地においては、抑圧民族と被抑圧民族の日常的敵対関係が基本であり、「相克」という価値中立的で相対的な表現ではその肝心の関係が隠蔽され、曖昧にされ、そして抑圧民族が免責されかねないからである。……それを前提になおこの書名で言いたかったの……一つは、植民地を上のような二つの民族関係で見ると、時に歴史的事態の正確な評価を見誤るおそれがある、と言うことである。……二つには、抑圧民族にせよ、被抑圧民族にせよ、その内部における諸矛盾を……「相克」によって表現できないか、という思いである。……三つには、植民地解放後から今日までの諸事態、諸現象を説明する際にも、「民族的相克」は有効ではないか、と思う。(「序」より)
内容説明
本書は、「日本植民地教育史論」の第一巻として編まれた。時期的には19世紀末から20世紀の半ば、日本国家の植民地領有期をカバーしており、方法論上の特徴として、帰納的な「実事求是」の精神による論文集となっている。
目次
台湾(日本統治下台湾の子どもと日本の学校―1895年(明治28)~1904年(明治37))
朝鮮(植民地朝鮮における教育の支配とその抵抗;日帝下朝鮮における実業教育政策―1920年代の実科教育、補習教育の成立過程)
「満洲」「満洲国」(満洲国と朝鮮族の教育;偽満洲国の高等教育について(一)―「九・一八事変」以前の東北高等教育を中心に
「在満」日本人の音楽教育と教科書―『満洲唱歌集』の改訂過程を中心に
満鉄学務課長保々隆矣小伝(一))
中国(20世紀前半の中国におけるキリスト教学校の展開―「奴隷化教育」の源流に関する研究;日本占領下の北京における回民教育)
著者等紹介
渡部宗助[ワタナベソウスケ]
1940年生。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位修得退学。国立教育研究所部長。主要論著に「在外指定学校の法制度と諸調査」(’83年)「府県教育会に関する歴史的研究」(’91年)「日本植民地教育史研究」(’98年,編著)がある
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