出版社内容情報
中国の古典を学び、そこから現在の自分の生き方や世相を考えるヒントを得るために、編者主宰の中国古典読書会に所属する研究者が「中国の古典と現代」をテーマに、各々の専門分野から考察を加えた論文集。第1部には中国古典読書会『会報』に発表された論考10篇を、第2部には「中国の古典と現代」というテーマについて人文科学・社会科学・自然科学の各方面の研究者が書き下ろした論考8篇を収録。
“桃源郷”は、言うまでもなく現実には存在しない。しかし、陶淵明は五言古詞「飲酒」では、「心遠地自偏」と言っている。それを心の持ち方次第で住む所が自然に桃源郷になると解釈すれば、それは人間の内なる自然「心」と、人間の外なる自然「地」とを見事に融合調和させていることに気づかされる。言い換えれば、理想と現実・古典と現代とは、二律背反するものではなく、相即不離な関係であると言えよう。……私たちが古典を心静かにひもとく時、もし淵明の顰みに倣い、“小国寡民”を下敷きにして対策を考えれば、大国多民を望まず、少数の民が一丸となって、戦争や紛争を避け、清貧に甘んじて資源を大切にし、子育てを助け高齢者に安心して戴けるような心(理想・古典)を持ち、それを地(現実・現代)と調和させることによってはじめて、そこが自分自身の桃源郷となるのはもはや明らかであろう。(「まえがき」より)
目次
第1部 古典と現代(説一;中庸思想と現代;中国思想と日本思想―宣長の朱子学受容の三段階と「もののあはれ」論;「続黄梁」篇に見られる中国人の死生観;擬態語のサ変複合動詞化―その成立不可の要因について ほか)
第2部 今、なぜ中国研究か(「宗族考を称す」(『論語』子路)
自然法としての「中庸」思想とその宗教的起源(序論)
“好色”と「色好み」について
漱石と子規の漢詩における老荘思想からの受容への一考察―用語・詩趣・詩境を中心に
辜鴻銘と大正期作家 ほか)