出版社内容情報
かっぱは人間よりもずっと長生きだ。池にも何百年もすむことになる。おれは、あちこちさがしていちばん気に入ったこの池をすみかに決めた。近くに村があるから、よく子どもたちがのぞきにくる。
ある日、おれは池に落ちた女の子を助けた。女の子の名前は、ちよ。家族とはなれてひとり、この村に疎開してきたという。いまこの国では戦争をしていて、大きな町には爆弾が落とされているらしい。ちよは学校のことをいっぱい話してくれた。ちよは、いっしょに学校にいこうと言ってくれた。学校にも池があるらしい。ところが、雪が舞う季節になって、ちよはぷっつり姿を見せなくなって……。
内容説明
「コケマル。あなたは、これからもここにいてね。子どもたちを見まもってね。ずっと」ちよは、おれの手をぎゅっとにぎった。「わかった。おれはがっこうのかっぱになる。がっこうかっぱだ」
著者等紹介
山本悦子[ヤマモトエツコ]
愛知県生まれ。『神隠しの教室』(童心社)で第55回野間児童文芸賞を受賞
市居みか[イチイミカ]
兵庫県生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マツユキ
14
シリーズ三作目は過去編。戦争で家族と離れ、一人で疎開してきた女の子と、池に住む小さな河童の物語です。女の子が健気なんですが、こんなことまで我慢させるのは、戦争って、酷い。過去だけではなく、現代の物語でもあります。怒りや悲しみは消えないけれど、穏やかに、楽しい日々を過すのも、大切。もう一年が終わりますね。入学、進級の季節にぴったりのシリーズです。2023/03/21
のり
10
がっこうかっぱのイケノオイ0ともいえる話。日本が戦争中に疎開してきたチヨと小かっぱが出会う。都会から来たチヨは疎開先で意地悪されたり、孤児になったり…。戦争による悲しさと小かっぱとの友情。 終わりがいい!泣いてしまった。すごくいい児童書だった。2023/07/01
sugar
6
「せんそうはぜったいにしない」山本悦子先生の願いが子供にもわかりやすく伝えられていると思います。ちよちゃんの家族は戦争で亡くなってしまったのに、お母さんの約束を守ってちよちゃんは泣きません。かっぱのコケマルがちよちゃんに「がまんしなくていい。おまえは子どもなんだから、なきたいときにはなけばいい」と伝えたシーンは胸が熱くなりました。戦争が子供の心を奪ってしまう、戦争は絶対しない。コケマルとちよちゃんが抱き合って喜んでる挿絵、凄く良いです☺️2025/02/18
★なおぴんコ★
6
図書館本。がっこうかっぱ3冊目。今回は過去に遡ってがっこうかっぱの生まれた日のお話です。戦争時代に出会った疎開中の3年生ちよとがっこうかっぱ。過去と現在の2人の出会い。作者さんの絶対戦争反対の気持ちが伝わります。平和の大切さを子どもたちにも伝えたい熱い思いが伝わってきました。あとがきが必読です。あとがきより「学校に、子どもたちのわらい声が、いつもひびいていますように…。がっこうかっぱのねがいは、平和へのねがいなのです。」2023/03/15
遠い日
5
シリーズ3ですが、時系列的には学校かっぱ誕生編の位置付けです。戦争の頃の疎開先での切ない気持ちを抱えたちよと知り合ったかっぱのコケマル(ちよの名付けだ)。戦争の無慈悲さ、戦争の不条理をちよを通して感じ取ったコケマル。ちよから話を聞き、学校というものに憧れるようになったコケマルの長い長い眠りという現実逃避。やりきれない気持ちを処理できなかったのだ。今の世界の戦争に置き換えて、この先の未来を考えてみるといい。力強い訴えがここにある。2023/04/08