出版社内容情報
コロナ禍で日本の医療・社会保障はどうなるか。根拠なき悲観論を排し、民主主義のため社会保障とは何かを考える。
内容説明
社会保障のあり方がこの国の未来を左右する。異能の元厚労官僚による憂国の書、第2弾!
目次
第1部 社会保障の基礎(社会保障に何ができるのか)
第2部 到達点から考える―ポスト社会保障・税一体改革の課題(社会保障・税一体改革の総括;年金をどう維持していくか;医療・介護改革は避けて通れない;家族支援の拡充―少子化克服のための取り組み)
第3部 経済・財政をどう立て直すか(日本再生の基本条件―経済・財政・社会保障を一体で考える)
第4部 民主主義のための社会保障(ガラパゴス日本「精神の鎖国」―二つの海外勤務経験から見えてきたこと)
著者等紹介
香取照幸[カトリテルユキ]
1980年旧厚生省入省。在フランスOECD事務局、内閣参事官(総理大臣官邸)、政策統括官、年金局長、雇用均等・児童家庭局長等を歴任。その間、介護保険法、子ども・子育て支援法、国民年金法、男女雇用機会均等法、GPIF改革等数々の制度創設・改正を担当。また、内閣官房内閣審議官として「社会保障・税一体改革」を取りまとめた。2016年厚生労働省を退官。2017年在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使。2020年4月より上智大学総合人間科学部教授、同年8月より一般社団法人未来研究所臥龍代表理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kei-zu
23
真摯な社会保障論。制度の意味から将来の課題、それへの必要な対処まで解説する。 もちろん、将来における現実の姿は不透明なので確定的にあるべき姿は断じえない。だが、必要なのは、「不透明である」という前提で「最善の手立て」を行おうする姿勢であろう。 MMTの否定など前著より財政論にも踏み込み、読みごたえがあります。2021/10/18
Francis
21
著者は元厚労省官僚。年金局長などを歴任され、年金改革、介護保険、男女雇用機会均等法などの諸改革に取り組まれた方。権丈善一先生と東洋経済オンラインなどで対談され、その見識を存じ上げていたので購入。社会保障は「弱者救済」のためのものではなく、先進国の国民の大半を占める中間層の生活を支えるために必要不可欠なものであること、望ましい社会保障を実現するためにどうすべきかを分かりやすく書いている。アゼルバイジャン大使を務められた経験から、日本が世界から取り残されつつあることに警鐘を鳴らしてもいる。この本は読むべき。2021/01/26
jackbdc
10
社会保障を論じる意義を再考させられた。著者が指摘するように自分の得にならない事象に関心を持つ人は稀。社会保障全体を論じる機運が低いというのは事実。公共心の欠如に原因があるのか?制度側の複雑性が問題なのか?確かに社会保障は目的も手段も恣意的で捉えどころ無く複雑性も凄まじい。しかしこれは構造的な問題であり不可避ではないか。唯一の可能性は、制度が投票を通じて統制され得る事かもしれない。それだからこそ将来世代につけまわしが続く構造が温存されているともいえるが…。社会保障の問題と民主主義の問題の連続性を感じ入った。2021/06/26
awe
8
前著『教養としての社会保障』の内容のおさらいをしつつ、各論を掘り下げるという形で展開される。ミクロでは個々人では対処できないリスクを社会連帯の仕組みにより軽減し、マクロではそれにより社会の安定を図るという社会保障の意義を抑えた上で、「少子化対応戦略」と「少子化克服戦略」の違いを意識した政策立案をすべきということ、また社会保障を経済成長可能な分野とみなし、医療、介護、子育て支援等を雇用創出につなげていくこと、、などは前著でもあったような内容。◆5章の議論は面白い。仏では、保育サービスと育休給付に相当するもの2024/06/13
chiro
5
社会保障が個人がヘッジしきれない生活上のリスクを賄う為にあるという事が今ほど求められている時代はないと感じた。この国にも確実に格差と貧困が蔓延し始めている中で社会のセーフティネットとしての社会保障が機能不全に陥るとこの状況はますます悪い方向に進みかねない事を我が事として自覚するとともに積極的にその基盤を確かにする事によって民主主義がより健全に機能しうるのだという事が理解できた。2022/10/26