出版社内容情報
ナショナリズム再燃。米中対立激化。気候変動、宇宙、サイバー空間、感染症をめぐる衝突。人新世で激化する国境紛争のゆくえを探る
内容説明
イーロン・マスクが「月の大統領」就任を宣言したらどうなるのか。「気候変動」による海や河川の変化は「境界線」を移動させるのか。「スマートボーダー」は収益性の高い国境ビジネスを生み出すのか。「新型コロナ」は「資源の争奪戦」を加速させるのか。従来型からウイルス、気候変動、宇宙、サイバー空間、南極まで、今後数十年で激化する「国境紛争」4つの類型。「人新世」が揺さぶる「国境」の概念、地政学研究の第一人者が迫る。
目次
序章 「人新世」で激化する国境紛争
第1章 国境の問題
第2章 動く国境
第3章 水の国境
第4章 消えゆく国境
第5章 ノーマンズランド
第6章 承認されざる国境
第7章 スマートボーダー
第8章 宇宙空間
第9章 ウイルスの国境
終章 迫り来る「国境紛争」の4つの類型
著者等紹介
ドッズ,クラウス[ドッズ,クラウス] [Dodds,Klaus]
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校教授。地政学研究に関する英国の第一人者の一人。グローバルな地政学と環境安全保障の専門家。フィリップ・レバーホルム賞の受賞者でもある
町田敦夫[マチダアツオ]
翻訳家。雑誌記事の翻訳も手がけるほか、映像メディアの翻訳も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
91
国境とは自然環境や民族言語宗教で区分けしたり、国の大小強弱により人工的に引かれたものという常識の変更を迫る。岩礁を埋め立てて島嶼化したり、目に見えないネット上や海底資源を巡り他国を排除する新たな国境紛争がナショナリズムの名の下で公然化している。紛争は南極や宇宙にまで広がり、動員される軍隊や技術開発のため膨大な予算が費やされている現状を一般人はほとんど知らない。国境など無視する温暖化での水没地拡大やウイルスによるパンデミック下の今日、人や国が生き残るための新しい地政学はいかにあるべきか考えるべき時代なのだ。2022/02/11
Sam
56
「国境」と聞いて我々が思い描くのは、地図上に描かれた無機質な一本の線。しかし現実の「国境」はそれを成す陸や海、氷河の変動と共に動き、新たな紛争を招く。米墨間の3千キロを超える国境管理やテクノロジーを活用した「スマートボーダー」は巨大なビジネスを生み出す。公海は漁業権と海底採掘という利権に狙われ生態学的回復力の危機に瀕している。急速に進展する宇宙開発において「人類の共同財産」という理念は維持可能か?あらゆる局面で権益拡張を図る中国への対処は?まさに「新しい地政学」の必要性を痛感させられる、刺激的な一冊。2022/03/21
confusion_regret_temptation
23
山岳地帯、深海、果ては宇宙に至るまで、人は境界を作ろうとする。確かにベルリンの壁の崩壊から始まった90年代は楽観的なムードであったが、人口の増加や911テロ、中国の台頭などによって情勢はより複雑になった。隣人同士だけでは済まなくなってきた国境の問題は、今後さらに複雑怪奇になっていくだろう。ちょっと暗い気持ちになった。2022/07/21
kan
21
原題のBorder Warsがしっくりくる。伝統的な国境紛争に加え、スマートボーダーや宇宙、ウィルスといった現代ならではの国境の流動性にいたるまでカバーしていて勉強になった。国境の争いと思惑は複雑化する一方であるうえに、気候変動や資源の争奪、AIドローンや個人の行動を監視できるテクノロジーの発展、さらにはパンデミックと戦争、高まるナショナリズムも考えると、border warsは苛烈になる以外ない。20年後の国境どころか地球を想像することさえ難しいのではないかと感じた。2022/04/17
Cervelo
5
国境は何で規定されているか。河川や山脈、氷河など地理的なものを含むが、それは絶対的では無く移動しうる。中国-ロシア、インド-パキスタンなど今もなお国境に関する係争は続いている。日本で言うと北方領土問題や竹島、尖閣諸島の問題は認識していたが、世界中あらゆる場所でも国境論争は絶えない。国益に関わるので当然。 スマートボーダー、宇宙空間の境界線はどこか? ウィルスに国境は無い。今後各国は、スマートボーダーを強化するか、自由な国境を進めるか、選択を迫られている。2022/09/14