出版社内容情報
新たな中東の火薬庫として注目を集めるシリアとレバノンの現代史を描く力作。レバノンの繁栄と転落、謎の独裁者アサド・シリア大統領の人物像などが明かされる。
内容説明
戦争・テロ・陰謀…。内戦の舞台と化したレバノン。アサド・シリア大統領の野望は達成されるのか。中東動乱の震源地として注目を浴びる二つの国家の悲劇と諸勢力の興亡を描く、もう一つの中東現代史。
目次
シリアとレバノン
文明の十字路
オスマン・トルコの支配
宗派主義のモザイク
独立闘争
軍人アサドの誕生
シリア・バース党
権力への道
独裁者二つの顔
ハマの論理
レバノン繁栄の影
内戦への序曲
レバノン内戦勃発とシリアの介入
イスラエルのレバノン侵攻
破棄されたレバノン・イスラエル和平条約
湾岸戦争と内戦の終結
シリアは何を得たか
シリアとレバノンはどこへ行くか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中島直人
12
20年前の本だが、アサド大統領亡き後を予言しているよう。その主張するアラブナショナリズムが、マイノリティ政権存続の正当性を確保するための戦略だったという視点は非常に分かりやすい。それが湾岸戦争と冷戦終結を機に転換。その結果、アサドはレバノンを確保したが、その政権の正統性を自ら失うこととなった。それが現在の混乱の最大の原因だったと考えると、すんなりその後の経過が理解出来るのではないか。2016/08/15
印度 洋一郎
7
シリアとレバノン、歴史的には一体だった二つの国の戦後史。中東の中枢に位置し、交通の要衝であった事で古代から多くの民族が興亡。その結果民族的にはほぼアラブ人で均等なはずが、異なる宗教と同じ宗教内の宗派が混在し、それぞれ排他的なコミュニティを形成した事で極めて複雑な社会を形成した。20世紀前半のフランス委任統治下で、各宗派間で権力を分掌する政治体制の原型が出来た。これはフランスの分割統治政策だったが、地元の社会構造に配慮した結果でもあった。この社会構造は、近代の国民国家とは極めて相性が悪かったのが悲劇を生む2022/05/07