内容説明
日本が戦争へと傾斜していった昭和初期にあって、ひとり敢然と軍部を批判し続けた石橋湛山(後の第55代内閣総理大臣)。その壮烈なる言論戦を、戦争を煽りに煽った大新聞との対比で描き出した不朽の名作。
目次
序章 その男性的気概
第1章 「大日本主義」を捨てよ
第2章 統帥権干犯の残したもの
第3章 日本は満洲を必要とせぬ
第4章 理想国家とは何なのか
第5章 天下を順わしむる道
終章 醜態を示すなかれ
著者等紹介
半藤一利[ハンドウカズトシ]
1930年東京向島生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家。『漱石先生ぞな、もし』で第12回新田次郎文学賞を、『ノモンハンの夏』で第7回山本七平賞を、『昭和史』で第60回毎日出版文化賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
17
ジャーナリズムの本質を問う。事実に基づく客観性と公共性。第二次大戦の前・中・後の時間を横軸、そして、石橋氏のジャーナリズムを縦軸。結果は、反比例かな・・・。世論(売上げ)という数字に踊らされ、”本質”を失う過程。軍との力関係の逆転も、ある意味当然かもしれない。挙句、国際連盟に、全国新聞132社が連名で抗議?!戦後の反省が、どこまで真摯になされたのかも疑問・・・。”反比例”の過程が興味深い一冊。2013/12/07
Tomozuki Kibe
4
以前から気になる政治・経済思想家石橋湛山。本書は彼の言論を満州事変から日中開戦までを切り取る。 この時代に軍の帷幄上奏権や統帥権を正面切って批判しているのはすごいし、また他のマスコミの弱腰っぷりは歯痒いばかり。 暴走を止めるどころか煽り立てていたのはマスゴミであり、国民であった。逆にどれほど政治に無力さ・経済に暗さを感じていたのか。この辺現在と照らし合わさざるを得ない。 それだけに「プラグマティズムの裏打ちされた湛山の正論」が正論であるほど歯が通らないのだ。 2023/05/03
三上 直樹
4
戦前はジャーナリストとして、戦後は政治家として小日本主義と平和を希求した石橋湛山の評伝を、今だからこそ読了。 満州事変を機に転向した新聞社と湛山率いる東洋経済新報との違いも詳しく描かれているだけに、マスコミが真実を伝えないたった今と重なってしまいます。 マスコミも暴走する自民党も、この大先輩の存在を思い出してほしいです。2015/09/18
じろう
2
半藤さんの書いた石橋湛山の本を櫻井よしこが解説書いててワロタ。2000年はまだいい時代だったんだなあ。2019/11/29
D.Okada
2
石橋湛山の(途中観念せざるをえない状況もあったようだが)ほぼ一貫した信念というのがよく伝わり、まさに先見の明ある人物だと思う。ただ、些か楽観的側面が強い人物でもあるようだ。また、本文でも触れられていたが、国際法的視点というのが欠けているのも事実らしい。それ以上に、湛山自身の確固たる国家間があるということであろう。2010/03/08