内容説明
日本人が“時代の空気”に流された一大転回期の真相。満洲事変に端を発し、破局への道を踏み出した昭和初期にあって、ひとり敢然と軍部を批判しつづけた石橋湛山(後の第55代内閣総理大臣)。その壮烈なる言論戦を、戦争を煽りに煽った大新聞との対比で鮮やかに描き出した感動の名作。
目次
序章 その男性的気概
第1章 「大日本主義」を捨てよ
第2章 統帥権干犯の残したもの
第3章 日本は満洲を必要とせぬ
第4章 理想国家とは何なのか
第5章 天下を順わしむる道
終章 醜態を示すなかれ
著者等紹介
半藤一利[ハンドウカズトシ]
作家。歴史探偵を自称。1930年生まれ。1953年東京大学文学部卒業。同年(株)文芸春秋入社。『週刊文春』『文芸春秋』各編集長、出版局長、専務取締役などを歴任の後、1994年に退社。著書に『聖断―天皇と鈴木貫太郎』(文芸春秋読者賞受賞)『漱石先生ぞな、もし』(新田次郎文学賞受賞)『ノモンハンの夏』(山本七平賞)『永井荷風の昭和』『日本のいちばん長い日』(以上文芸春秋)『日本海軍の栄光と挫折』(PHP研究所)など多数。最新刊に『歴史をあるく、文学をゆく』(平凡社)がある
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感想・レビュー
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ジャズクラ本
16
◎今年読んだなかで一、二を争う良著。文中「一城一城を抜かれながらも湛山は次善に踏みとどまって、また次の提案を試みる。それも効果なく、現実は湛山が憂えた方向に突き進む」。この姿は「城塞」の真田幸村や「峠」の河井継之助の姿に重なり合う。国家の変革一大事にはいつの世にもこういった男たちが現れる。惜しむらくはどうわけか天は彼らの命をあっさりと葬り去る。しかしその命の光芒は時代を越えて輝き続ける。先年、著者も鬼籍に入ってしまった。彼の作品群を通したその志も後代に受け継がれていくものにならなければいけない。2021/11/16
lovejoy
0
★★★2019/11/18
tecchan
0
選挙区が静岡県だというだけで唯一の静岡県出身総理大臣と言われる石橋湛山氏。病気のため僅か2カ月の在任ということぐらいしか知らなかったが、戦前、自由主義者ジャ-ナリストとして、大新聞などが軍部に迎合していく中、唯一、反軍を訴えていたとは知らなかった。本書は、石橋氏の満州事変から国際連盟脱退までを中心として、その論説による戦いを描いたノンフィクション。2023/07/28
MADAKI
0
石橋湛山といえば、戦前~戦中期の日本で雑誌「東洋経済新報」主幹として軍部や日本国民に植民地放棄を叫び続け、戦後総理にまで登り詰めた人物だが、作者は石橋を単なる行動家としてでなく、思慮深く現実主義的でリベラルな経済人、そして批判的な愛国者としても描いている。 日本を愛し、信じ続けた石橋の筆鋒は、混迷を極める当時の言論界において短くはあったが鋭い切れ味を誇った。世界にポピュリズムが台頭し、日本でも安全保障が政治の俎上に乗ることが多くなった昨今にこそ、石橋の示した批判的な愛国精神が大事なのではないか。