出版社内容情報
文学を論理的に読み解く汎用的な読みのスキルを身に付けられる
本書の概要
あなたはどんな文学教材の国語授業を目指していますか?
生徒同士で活発な話し合いが行われ、豊かな解釈が生まれる授業。教師からの魅力的な発問によって、生徒がわくわくしながら登場人物の心情解釈を披露し合う授業。
それは一見理想的な授業です。でもその授業で、生徒にはどのような「国語科として必要な力」が身に付いているか教師自身が説明できるでしょうか?同時に、生徒はその力を自覚的に獲得し、その他の教材でも使える力になっているでしょうか。
生徒自身の学びのメタ認知なくして、それは授業として成り立っているとはいえないのではないでしょうか。
本書では、汎用的な力となる「読むための認知スキル」を獲得する方法を提案しています。
本書からわかること
観点=見方
本書では、学習指導要領で示された「言葉による見方・考え方」を、観点と思考モデルとして示しました。
対象の文学教材の特徴を一般化して捉えるものとして【観点】があります。それは文章中に繰り返し出てくる【反復表現】であったり、【文体】であったりします。
また【観点】には「何を見るか」「どこから見るか」という側面ももっています。「少年の日の思い出」で「チョウ」に着目するのが前者で、「誰の立場から見たチョウか」に着目するのが後者です。
テキストを特徴付ける【観点】を捉えることで、教材(文章)の特性をあぶり出すことができるのです。
本書では、他にも【視点】【修飾語・接続語】など、文学的文章を読みとるための14の観点を示しています。
思考モデル=考え方
観点に沿って情報を取り出したら、それらを関係付け、図式化していきます。それが<思考モデル>です。例えば「少年の日の思い出」で、【言動・態度】の観点から「押し潰して」を取り出して、「押し潰して」と「潰して」を<比較>することで、「押し」に込められた「僕」の強い気持ちを解釈することが可能になります。
本書では、他にも<類推><因果><帰納>など、9つの思考モデルを示しています。
個別最適な学びにつながる
観点と思考モデルを使った「読み方」は、汎用的な認知スキルを獲得することができるばかりではなく、どの観点を使い、どんな思考モデルで文章に向き合うかを、生徒に委ねることができます。
生徒は、既習事項や、それぞれの読書経験、生活経験をもとに「観点」や「思考モデル」を獲得、更新し、「自分らしい」豊かな解釈を生み出すことができるのです。
それはまさに学びの個性化=個別最適な学びの姿と言えるでしょう。
こんな方におすすめ
文学を読み浸り、解釈を響き合わせる教室には、豊かな国語授業の萌芽があります。その教室に「●●の色彩表現から」「●●を比較したら」という子供の言葉が加わることで、学びがメタ認知化された真の国語授業になるのではないでしょうか。
内容説明
文学こそ論理。「個別最適な学び」のカギは“認知スキル”の獲得にあり。
目次
第1章 認知スキルを育てる14の観点と9の思考モデル(画一的で力の付かない「読むこと」領域の授業;自分らしく読む力を付けるために;文章を読み取るための二つの技;文学的文章を読み取るための14の観点;思考モデルがあることの利点 ほか)
第2章 思考モデル×観点で論理的に読む授業づくりのポイント(14の観点と9の思考モデルを活用した授業展開の基本;14の観点と9の思考モデルを活用した個別最適な単元デザイン)
著者等紹介
小林康宏[コバヤシヤスヒロ]
和歌山信愛大学教授。長野県出身。横浜国立大学大学院修了後、長野県内の公立小中学校に勤務し、2019年4月より現職。元長野県教育委員会指導主事/和歌山市客員指導主事/きのくに国語の会顧問/日本国語教育学会理事/全国大学国語教育学会会員/夢の国語授業研究会幹事/東京書籍小学校国語教科書「新しい国語」編集委員/東京書籍中学校国語教科書「新しい国語」編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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