内容説明
人はだれもが、自分の原風景をもっているように思う。普段は意識することはないが、自分のずっと深い部分に静かに、そして確かに広がっている風景である。私の場合、そのひとつは子どもの頃の川のある風景である。あまり大きな川ではない。川幅は三間ばかりだろうか。土手には草が生い茂り、その先が淀んだ川面にまで垂れている。素朴な木の橋があり、その向こうに遠くの山が見える。懐かしいというのと違う。自分がものを考えたり、感じたりするとき、ずっと奥の方でそれを支えている風景である。論理的なものではない。だから、そのつながりを言葉で表すことはできない。しかし、確かに自分の根源にずっとあり続けた心の像である。本書に集めた文章は、そのような著者の原風景に近い部分をじっと見つめることによって滲み出たものである。
目次
1 落羽松―「教育研究」巻頭言より
2 春夏秋冬―「算数授業研究」巻頭言より
3 風紋―「教育研究」随想より
4 若桐―文集「若桐」より
5 ひとこと