出版社内容情報
地球随一の天才物理学者である気の強い姉に、なにかにつけて振りまわされるぼく。大学4年生だった夏に日本で行なわれた「あの実験」から3年、ぼくはまたしても姉に呼び出された。向かった先は宇宙空間――ラグランジュポイントL2に浮かぶ国際研究施設だ。姉はそこで誰にも知られることなく、宇宙論に関するある途轍もない実験を準備していた。第5回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる全3話。新時代のハードSF。星雲賞候補作。
内容説明
史上最高の天才物理学者である姉に、なにかにつけて振りまわされるぼく。大学4年生になる夏に日本でおこなわれた“あの実験”以来、ぼくは3年ぶりに姉に呼び出された。彼女は月をはるかに越えた先、ラグランジュポイントに浮かぶ国際研究施設で、秘密裏に“別の宇宙”を探索する実験にとりかかっていた。第5回創元SF短編賞受賞の表題作に始まる、新時代の理論派ハードSF。
著者等紹介
高島雄哉[タカシマユウヤ]
1977年山口県宇部市生まれ。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、「ランドスケープと夏の定理」で第5回創元SF短編賞を受賞(門田充宏「風牙」と同時受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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54
🌟🌟🌟🌟☆。エクストリームスーパーハードSF。三話構成+オマケの中篇集。巷の評判で「結構、手強い。」と聞いていたので長い間積みっぱなしにしておいた。確かに理数系の理屈を読んでいる時はさっぱり分からない事だらけ。特に第三話『楽園の速度』は文庫本書き下ろしなので書きたい放題書いていて何が起きているのか掴み辛かった。でもなんか良いんだよね、コレ。好みじゃない人もいるだろうから薦めないけど俺は好き。ちょっと考えが纏まらないのでとりあえずここまで。2023/06/02
シタン
23
世界を記述するのは理論であり、理論は世界を変革する。科学とは、面白いことを追究する心から生まれる(=知的な)、新世界を作る営みだが、SFはそれを現実から解き放ち虚構の世界へ自由に羽ばたかせる。宇宙論的に言えば、本作品は量子ゼノン技術、知性定理、情報=演算対といった概念が導入された本格的なハードSFで、科学的・哲学的アイデアの宝庫である。それでいて読み口はライトで個性が存分に現れており、あとがきにもあるイーガンなどとはだいぶ違う。散文的に言えば、天才物理学者の姉が一千兆個に分裂したりする姉SFともいえる。2020/12/16
ほたる
14
コテコテのハードSFながら姉と弟を繋ぐ良い物語だった。三部構成で進みに連れて徐々に考え方が複雑になっていき、この部分を理解するために必死に食らいついて行った。ここまで複雑に変化しても、姉に対する弟の想いは最後まで変わっていないことを感じられたのがとてもよかった。ボーナストラックの夏の定理もまた非常に感慨深い。2023/04/20
masabi
11
【概要】知性定理を証明したネルスとその姉テアの織り成す連作。【感想】イーガンを仮想読者としたハードSF。史上最高の宇宙物理学者と名高い姉が弟の数歩先を行き、弟は被験者だったり、課題を託されたりと振り回されるのだが、暴君ではなく弟のことも思っての行動である。その影響が時空間操作や情報機関の誘拐など壮大なスケールになるのだが。中核となる知性定理だけでなく人格のアップロード、コンパクトシティを極限にしたセクター都市など周辺の舞台設定も魅力的だ。 2020/11/21
みやしん
6
ゴリゴリのハードSFにしてしっかりとブラコンシスコン小説してる。宇宙を翻訳するという、お恥ずかしいことにサッパリ理解が及ばない数学物理には見て見ぬふりをしました。後書きからも察せられるように、作者がいかに微に入り細を穿つ世界観を練り上げていたかに驚嘆。作中日本が舞台になる場合が多々ある(しかしネームド日本人は殆どいない)が、未来の日本はディスカウントジャパンから脱却できているのだろうか?2023/12/01




