出版社内容情報
創元SF短編賞正賞・優秀賞(佳作)受賞者が勢揃い。〈時間編〉では松崎有理(第一回正賞)、空木春宵(第二回佳作)、高島雄哉(第五回正賞)、門田充宏(第五回正賞)、石川宗生(第七回正賞)、久永実木彦(第八回正賞)、八島游舷(第九回正賞)の七名が競演。正統派のタイムリープものから、古典落語をモチーフにした幽霊譚、VR世界での”引っ越し”騒動まで“東京創元社生まれ”の気鋭・新鋭作家たちが贈るアンソロジー。
内容説明
創元SF短編賞正賞・優秀賞受賞者、佳作入選者が集結、新作短編で競演。“時間編”には松崎有理(第1回正賞)、空木春宵(第2回佳作)、高島雄哉(第5回正賞)、門田充宏(第5回正賞)、石川宗生(第7回正賞)、久永実木彦(第8回正賞)、八島游舷(第9回正賞)の7名の作品を収録。2020年代の日本SF界を担う“東京創元社生まれ”の気鋭作家たちが贈る、オリジナルアンソロジー。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Fondsaule
23
★★★★☆ 松崎有理「未来への脱獄」 空木春宵「終景累ケ辻」 八島游舷「時は矢のように」 石川宗生「ABC巡礼」 久永実木彦「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」 高島雄哉「ゴーストキャンディカテゴリー」 門田充宏「Too Short Notice」 7編の書き下ろしSF短編集。 時間がテーマ。 松崎有理さん、相変わらずユニーク。 門田充宏さんの「何か残したい」っての好きだな。2023/08/13
もち
22
「待ちに待った夢の機械を動かそうとする人間にはみえなかった」◆刑務所で同室になった、250年後から来たと嘯く男。進まない塀の中の時間は、タイムマシン作りによって飛び去って行く。どうしても時間を跳びたかった男の、凄絶な目的とは。(『未来への脱獄』)■よくある時間SFにしてたまるか、という気迫を参加者全員から感じる。時間跳躍の意味が、仄暗くも鮮やかに反転する松崎作品、死の間際の一刹那が、思わぬ舞台と意味にまで拡がる門田作品に心奪われた。2019/11/01
そふぃあ
21
ある旅行記の聖地巡礼が流行し、いくつもの後追い作品やブログが拡散された結果、やがてオリジナルとパロディの境界が無くなっていく石川宗生「ABC巡礼」/時間遡行技術の発見により、過去に戻り死傷事故や殺人を無かったことにするのが公務員の業務になった世界で、生の実感を得るため死を渇望する久永実木彦「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」が面白かった。 それから、八島游舷「時は矢のように」/門田充宏「Too Short Notice」は、主観的な時間を引き伸ばすことで永遠を手に入れようとするアイデアが良かった。 2022/09/25
宇宙猫
20
★★★ 時間の捉え方はさまざまで面白い。前半は好みじゃなかった 未来への脱獄:既読 終景累ヶ淵:怪談の殺戮場面の繰り返し2 時は矢のように:AIの人類破滅予測を受け人の思考を強制加速。結末が予想できるのが残念3 ABC巡礼:旅本に感銘を受け巡礼した本に感銘を受け...と巡礼は混沌とする。訳の分からなさが好き3 ぴぴぴ・ぴっぴぴ:過去に戻って悪事をする誘惑2 ゴーストキャンディカテゴリー/高島雄哉:電子化され不死になった意識。こういうのが好き5 Too Short Notice/門田允宏:思考加速5 D2021/04/26
シタン
16
八島游舷「時は矢のように」が面白い。この人の短編はハズレなし。ある時点で全人類の意識が止まることが予見された世界で、停止を回避するために考え出されたのが意識を加速するというアイデア。二倍にし、四倍にし、と加速させることによって、主観的な時間は伸びてゆく。加速の果てに主人公たちが到達する結末とは。エレン・クレイジャズ「ミセス・ゼノンのパラドックス」なども思い出すがこのパラドックスは優れた題材。 次点は松崎有理「未来への脱獄」。タイムマシンで刑期満了後の未来に脱獄しようとする突飛な話にみえて、実に切ない物語。2023/03/13