内容説明
バイオ研究所をのっとる計画を進める中でウサギが重要なターゲットと狙い定めた相手こそ、75歳の高名な詩人ロバートだった。ウサギは彼を、研究所に隣接するサンディエゴの大学図書館に誘導する。そこでは現存する本をすべて細断し、独占的にデジタル化するという暴挙がなされようとしていたのだ。反対運動が激化する中、計画の裏側で、ウサギは雇い主の思惑をこえた行動に…。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞。
著者等紹介
赤尾秀子[アカオヒデコ]
津田塾大学数学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
24
久しぶりのSFだった。テクノロジーにより実現した主人公の二度目の自我獲得。普通にサスペンス(謎は回収しきらないが)だけれど、でも、そうやって複数回の人生を生きることができるのは、ソーシャルキャピタルに恵まれた一握りの人間だけ、という世界造形と考えるとディストピアか。◇虹の終わりってことは向こう側の端っこ?うまく言えてるようなそうでないような。◇ただ、少しずつ姿をあらわす高齢女子たちの姿はとても魅力的。2019/08/04
本の蟲
15
知らずにバイオ研究所のっとりのための駒にされた、元高名な詩人ロバート。アルツハイマーから回復して年代ごちゃごちゃの職業訓練校に通う彼は、新世代が自然に使いこなしている技術・インターフェイスに驚き、振り回される、まさに読者の分身。謎が多く残り不完全燃焼感がある結末だったが、ARでファンタジー世界の戦争のガワを被ったデモや抗議活動。それが観客を集め、技術の宣伝効果や収益を生み出し、同時に治安組織の活動を妨害するネット上の負荷となる様は実に読み応えがある。高度に発達した科学は魔法と区別がつかない、を体現した作品2024/02/09
すけきよ
7
♪ぼ、ぼ、ぼくらは老年探偵団~。小説としては地味なんだけど、この未来の描写に引き込まれる。あるかもしれないことを書くのがSFなら、まさにこの作品は、今現在の空気感から見えそうな情景。これは今と同じく、シンギュラリティに向かっている最中の物語なんだよね。世界中のネットワークとコンピューティングが高速化する中で、まだ世代間は完全には別物にはなっていない。しかし、確実に次の段階へと進もうとしている、その夜明け前の一瞬の静寂を描いたと考えると、見事だと言うべきなのかなぁ。ホントに、予想外に地味なんだけど。2009/04/17
roughfractus02
5
本書のミステリと教養小説の2つの物語が合流する気配はない。おそらく、ウェアラブルコンピュータを装着し、ユビキタスネットワーク内にある大学にいる老人が、19世紀的人間ではなく、21世紀的マンマシン・システムだからだ。そしてこのシステムが人間のふりをした物語は19世紀小説の体裁で、人間と人間の生み出す技術のend(目的=終末)へと進む。作者はこのendを80年代に「技術的特異点(Technological Singularity)」と呼んだ。それが人間も物語も越えるのであれば、物語はその前夜までしか描かない。2018/12/12
スターライト
4
う~ん、何だか近未来の家族の肖像を描くのに、図書館を舞台にした騒乱だの、新兵器開発のヒントだのが使われている感じ。図書のデジタル化とかは作者の重要な関心事でもあるのだろう。タイトルにもっと深遠な意味があるのかと期待したが、そうでもないようだ。それとも虹が「七」色なのと、ヴィンジが「7」年ごとに長篇を発表することにひっかけて、もうそんなに待たせない=「エンド」にするっていうヴィンジの意気込みか(違)。ちょっと肩透かしだった。2013/06/08