内容説明
発端はサッカーの試合で流れたCMだった。そこから人間をマインド・コントロールする細菌兵器開発の可能性を察知したEU諜報局は、これを阻止するため正体不明のハッカー、“ウサギ”を雇い、サンディエゴのバイオ研究所を一時的にのっとる作戦に出た。ネットワークとウェアラブル・コンピューティングが築き上げる近未来社会を描破する、ローカス賞・ヒューゴー賞受賞の大作。
著者等紹介
赤尾秀子[アカオヒデコ]
津田塾大学数学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
22
学生時代に読んだサイバーパンクを思い出す。ウェアラブル、VRなどのツールが実現した高齢者が加齢をハンディキャップとしない状況が、むしろ個人個人の年のとり方を言い訳の余地なく問うことが、認知症から復帰した元詩人の目を通して浮き彫りに。さて、下巻はどう持っていくのだろう?2019/08/04
本の蟲
12
殿堂入りSF『遠き神々の炎』作者の作品だが初読。危険度の低いウイルスの無症状感染と、あるCMでの異様な販促結果の関連に気づいた諜報局員。マインドコントロール細菌兵器の存在を知り、手に入れようと画策する情報局ボス。捨て駒として仕事を依頼されたハッカー。最先端治療でアルツハイマーから回復し、肉体も若返った元大学教授。ARが現実を覆い尽くし、ウェアラブルコンピュータ全盛の未来社会で進行する陰謀とそれぞれの思惑。こちらも殿堂入りのSFアニメ『電脳コイル』を見た人は、本作を思い出したとか…2024/02/08
roughfractus02
6
ユビキタスネットワークが整備され、老化も治療可能な21世紀前半の米西海岸で、19世紀的な人間中心の2つの物語が並行的に進む。一方では、マインドコントロールする細菌兵器をめぐって、諜報機関とハッカーが暗躍するミステリ小説が、他方では、老化の治療によって重度のアルツハイマーから復帰した主人公が、技術の進歩に戸惑いつつも大学で若者と交流する教養小説的物語が進行する。一見無関係な二つの物語だが、その背後には急激に小型化するIT技術が、BT(バイオテクノロジー)に及び、老人の体と物語を同時に支えていることがわかる。2018/12/12
スターライト
5
『遠き神々の炎』『最果ての銀河船団』と気宇壮大な本格宇宙SFから一変して、近未来の高度に情報が発達した社会が舞台。ウェアラブル・コンピュータが重要なガジェットになっているけど、そういえばそんな言葉もあったなあ。最近めっきり聞かない気が。それにしてもタイトルの由来は、そんなところから?と思わず口アングリ。アルツハイマーを克服したかつての有名詩人が主人公なんだが、その家族関係は冷え切っていて、病気を克服したのが良かったのか悪かったのか。今のところ、新しい兵器開発をめぐるスリルとサスペンスは、抑えめです。2013/06/07
poppen
4
イーガン・サッカーにニヤニヤ。2009/04/21