内容説明
戦争を繰り返しつつ近代化への道を歩む蜘蛛族の世界に一人の天才科学者が現れ、今まさに原子の火を発見しようとしていた。一方、軌道上でエマージェント船団に制圧されたチェンホーたちは長い雌伏の時を過ごす。蜘蛛族世界への侵攻の時がせまるなか、宇宙の深淵で3000年を生きてきた伝説の男が、ついに反撃に立ちあがった!ヒューゴー賞、キャンベル記念賞に輝く、宇宙SF巨編。
著者等紹介
中原尚哉[ナカハラナオヤ]
1964年生まれ。1987年、東京都立大学人文学部英米文学科卒
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k16
18
蜘蛛族子供達の誘拐から始まる下巻。 軌道上人類の思惑とは異なる蜘蛛族との邂逅。 ブルーゲルに対する処遇には笑ってしまう。 エマージェントの技術コアにあたる集中化による愚人(特定能力に特化集中させた奴隷)ネットワークは先日読んだ小川一水「アリスマ王の愛した魔物」での人力計算機想いだした。2021/11/12
本の蟲
11
ほぼ現代地球の水準まで近代化した蜘蛛族。しかし同時に国同士の全面核戦争の危機に陥っていた。軌道上で蜘蛛族の進歩を観察してきた人類の生き残り、エマージェント、チェンホ―船団は、これを機会に姿を現し、戦争回避のための介入を行おうと計画していた。ところがそれは表向きの偽装。エマージェント上層部は逆に核戦争を誘発し、蜘蛛族世界への侵攻を企んでいた。エマージェント支配下にある船団のなか、銀河交易史に残る伝説の男、ファム・ヌウェンの反乱計画は成功するのか。そして蜘蛛族とのファーストコンタクトの結果は如何に。(続①2020/11/26
あかつや
8
面白かった。ひとりの天才の登場によって文明の段階を一気に進めていく蜘蛛族と、その動静を軌道上から見守り続ける人類、なかなか説明のしにくい関係の両者が、ついに交わることになる終盤の展開が熱いのなんのって。そこに至るまでに溜めに溜めたエネルギーを開放するかのような盛り上がり。グロテスクな姿をしているはずの蜘蛛族の面々がなんと頼もしいことか。そしてこんな銀河の果ての果てまできているにもかかわらず、さらに先の世界に飛び出していこうという希望に満ち溢れたラストがまた素晴らしい。やっぱSFってのはこうじゃないと。2019/05/04
スターライト
5
後半の怒涛の展開は、すごかった!正義と悪をはかりにかける天秤が、シーソーのごとく揺れ動くように、ナウの思惑通りになるのか、ファムの経験と知恵が勝るのか予想がつかず、まさに手に汗握る。頼りなかったエズルも、ストーリーが進むに従って隠された能力が次第に目覚め、ファウをも驚かすことになる。ヴィンジの未来史は面白く、もっと読みたいと思わせる作品だった。2013/05/14
はあびい
4
古き良きSF。読みやすかったです。ヒューゴー賞長編部門受賞作。2023/09/03