内容説明
恒星間を巡り、数多の異星生命体を捕獲してきた名うての狩人、ビリー。とうに引退した彼が、ある日国連から召喚される―通商条約締結を目前に相手星の過激派が送り込んできた暗殺者を阻止せよ。彼は任務遂行のため、かつて捕らえた最強の生命体、変身獣“キャット”に協力を乞う―彼自身の命と引替に。ビリーの最後の戦いが始まろうしていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
30
89年(平成元年)の税抜515円の文庫初版。米本国82年の本書はゼラズニイの実質的な最後の邦訳長編なのか…同年にセイバーヘーゲンとの共著「コイルズ」を上梓済み。本書はゼラズニイの面目躍如で、内省・神話的“引き裂かれた自己の再統合”が主題。背景として主人公のナヴァホ族としての生立ち、星間狩人(動物園用の生け捕り)としてのスキル、異星人暗殺者の活動阻止、キャットと呼ばれる不定形生物との共闘とその後の対決が詩編を挿みながら展開する。訳者によるナヴァホ族の解説は先に読んだ方が理解は間違いなく深まるよ。★★★★☆☆2025/01/28
スターライト
13
地球とストレイジ星との通商条約が結ばれようとする折も折、それを妨害しようとするストレイジ星の狂信的信者が地球へと向かったとの情報がもたらされる。その阻止のために、引退した異星生命体の捕獲のエキスパート、ビリーに白羽の矢が立てられたが…。よくあるSF的設定に最後のナヴァホ族である主人公を据え、狩る者狩られる者のスリリングな展開にナヴァホ神話をちりばめながら、アイデンティティの問題に迫った野心作。神話からの引用や、詩的な文章の挿入、句読点を用いない大胆な実験などゼラズニイの技巧も冴えわたる。埋もれた傑作。2018/06/07
しまっち。
2
正直あんまりよくわからなかった。題材になったインディアン神話の知識が全くなかったからかな。逆に全く縁のなかったインディアン神話というものへの興味は湧いた。2017/09/13
Zen-zen
1
三十年ぶりぐらいに読んだゼラズニイ。相変わらずカッコよくて、ちょっとわかりにくくて、でも読んだ後にはどこまでも続く道が目の前にのびていく。傑作「ロードマークス」を読み終えた後の満足感と同じ感じ。2017/12/12
三条院アルパカ
0
増田まもるとかいう翻訳者らしいが、前半の翻訳が出来の悪い高校生並みで読むのに骨が折れた。後半は良い。インディアンの価値観や世界観が幻視のように立ち上る描写は素敵だ。しかしだ。私が読み落としたのかもしれないが、この作品に何度も出てくるチンディという言葉の意味が分からず、訳者あとがきで少し解説が出てくるだけ。キャットがどこで明確に退場したのか、なにを象徴するものだったかわからない。小ネタのように挟まれるニュースのようなものは、面白いが文脈上の位置付けがわからない。だが疲労困憊してもう読み返す気にもならない。2017/05/06