内容説明
人類は星間戦争に敗北し、焦土と化した地球に爬虫類生命が侵攻した。ある日エイリアンの部隊長フランは、生き延びた地球人の子供と遭遇する。殺戮の掟にもかかわらず、彼は子供の命を救ってしまう。狩る者が狩られる者となり、ここに人間とエイリアンの望みなき逃走劇がはじまった。雪と闇の果てに待つものは?巨匠クーンツのヒューゴー賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
104
アメリカのベストセラー作家クーンツの初期の作品。クーンツの作品はホラーが多いが、これはSF。エーリアンのフランと人間の少年レオの心の通い合いを描く物語。フランは人間と敵対しているナオリ族に属しており、トカゲのような外見をしている。フランはレオに命を救われて恩義を感じるようになり、レオの命を守ろうとする。物語の後半では、ハリウッド映画のような追跡劇が描かれて、サスペンスたっぷり。非常に後味の良い話で、クーンツ特有の人情話の要素の織り込み方が巧い。後年ベストセラー作家になる萌芽の感じられる作品だった。2017/11/30
ざるこ
58
穏やかでないタイトルだけど、まさかの友情物語。銀河系ナオリ族との戦争に敗北した人類。少年レオに窮地を救われたナオリ族のフランがレオを匿ったことで始まる2人の逃亡劇。知性を有した爬虫類生命体・とかげ人である。長い尾、緑色の目。服を着たり運転したり甘美麻薬にうっとりしたりする。「それってほぼ人やん!」とツッコミたくなる序盤だけど、脳に擦り込まれる人類への敵意に対する疑問や戦争は正しかったのか、なぜレオを助けたのかと苦悩するさまは人間感情そのままで同情しちゃう。緊張感ある逃亡と温かい情が交わる関係に一気読み。2020/01/28
hit4papa
33
異星人の攻撃により殲滅されてしまった未来の地球。探索に訪れた異星人フランは、偶然、地球人の少年レオを発見する。地球人の抹殺指令に背むきレオを見逃してしまったフランは、主任精神科医によってその罪を暴かれてしまう。フランは衝動的に同胞を裏切り、レオを連れて地球人の暮らす避難所へと旅立つのだった…。異星人と地球人の少年との逃避行が物語の大半であり、彼らと追手との攻防戦が見所です。クーンツ 全盛期までとはいかずとも、ハラハラは撒き散らしてくれます。ありがちな締めくくり方ではあるものの、今でも十分に読める作品です。2024/10/01
ホレイシア
14
これは爬虫類系の知的生命体と人類の物語だが、キーワードは「罪悪感」であろう。侵略した側の罪悪感をここまで描いた作品には出会っていない。あとは想像の域を越えないが、これを読んだ作家の多くが無意識に影響を受けているように思う。邪推かな(笑)。2009/05/16
Tetchy
11
面白かった!!かなり高く評価できる。なぜなら設定、ストーリー展開に破綻がないからだ。SFということで作者なりの世界観が構築されたところがその要因だろう。しかし、クーンツは異質な物を組み合わせ、そこから人情話を作るのが非常に巧い。今回も地球を滅ぼした異星人と人類の子供との交流が素晴らしい。結末はやや急ぎすぎた感があるが、何よりもSFをも手中にしてしまうこの作家の力量に改めて脱帽。2009/05/16