感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
18
手に取るのに30年以上かかった本。日本神話ファンタジーとありますが、冒頭から中国風のテイスト。世界創生期、両性具有の「黄」(後に鬼子母神)、無性の「黒」(後の愛染明王)の邂逅から、時空を旅する「大船」、海中の「黄泉の国」、遙か遠くに存在する「綱の国」への旅のなかで神話エピソードが生み出される。名前とキャラが不適合で、仏教・国史の史観が混ざり合い、挿し絵の力も相まって、かなりフリーダムな雰囲気になっています。ネーミングが違っていたら、永遠回帰の開始と解脱を描いた哲学的な作品として評価されたのではないかと。2019/06/05
スターライト
10
先日亡くなったルポフが、日本神話に材を採ったファンタジー。無性の黒の人影と雌雄同体の黄の人影が幻想的な「戯れ」を見せる冒頭から、大船と海賊船の戦い、「綱の国」の支配権を争う弥勒と愛染、醜目の頭目である茨木王子、八岐大蛇、竜宮城など、神話だけでなく古代の物語や平家伝説などもまじえている。アメリカ人が日本のことを学習して一大作品に仕上げたことは称賛に値するが、正直なんだか居心地の悪さも覚えてしまう。ネビュラ賞の候補になったそうだが、訳者あとがきにあるように日本神話に取材したことを知っていたのだろうか。2020/10/29