感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
31
2つの区別のつかない世界を与えられ、仮想空間の方が心地よい居場所だった時に、その人にとって現実とは果たしてどちらなのか。これが作者の本書におけるメッセージであると思う。1977年に書かれた本書は今のネット社会を予見させる内容だ。現にネット社会に耽溺し、廃人となる人々もいる。しかしこの2つの世界を行き来するという設定の基礎となるウェセックス計画と云うのが今いち弱いと感じる。また結末近くになると本書こそ『逆転世界』という題名が相応しいように思った。ともかくもなんとも厭世観濃いこの結末にまだ戸惑っているのだが。2013/09/01
へくとぱすかる
27
夢と現実という古くからのテーマを、投射器というシステムによって、夢を現実として最後に成り立たせた小説。でもラストの世界は果たして現実と言えるのだろうか? ハッピーエンドなのか? 未来と過去と言いながら、実はタイムトラベルではないことを、忘れるわけにはいけない。意味深な記述があちこちに散りばめられているので、読み終わってもまだ謎に包まれているような感じが残る。そして作品を貫いて描かれる、二人の恋が何よりも切なくて美しい。2014/06/22
スターライト
5
1985年(原書刊行は1977年なので”近未来”)、未来予測のための画期的装置リトバスによって進められているウェセックス計画。1985年の”現代”パートから、説明もなくいきなり意識が投射された22世紀のウェセックスに行くので困惑したが、未来へ行ったきり行方不明になったハークマンの捜索と彼が発見した1985年の新聞記事から浮かび上がるウェセックスの存在の意味、そして22世紀の人々が理想とする1985年の社会の実現の計画など、単なる時間旅行ものに終わらせず、現実と虚構の境界があいまいになり読者は幻惑される。2024/06/20
あや
4
私にとっては、プリースト=“語り=騙り”の作家というイメージがかなり強いので、本書のストレートさに驚いてしまった。でもこういうのもいい。終盤は頭がぐるぐる。面白かった。2009/06/24
ちょろいも
3
ある意味読者にいろんな努力を強要する、そういう力のある物語。2008/07/14