出版社内容情報
――ヴェルヌはぼくの父親、ウェルズはぼくの賢明なる伯父さん、ポオは蝙蝠の翼をもった従兄弟、シェリー夫人はぼくの母親だったこともある。バローズやハガード、スティーヴンスンの小説をむさぼり読んだ少年の日のぼく――。幻想と抒情のSF詩人が、読者を幼年時代へ、怪異な夢魔の息づく不可思議な世界へと誘う珠玉短編16編。まえがき=レイ・ブラッドベリ/訳者あとがき=一ノ瀬直二
目次
「さなぎ」
「火の柱」
「ゼロ・アワー」
「あの男」
「脱出する男の時間」
「孤独な散歩者」
「別れも愉し」
「透明少年」
「ぼくの地下室へおいで」
「遠くて長いピクニック」
「泣き叫ぶ女の人」
「微笑」
「浅黒い顔、金色の目」
「市街電車」
「飛行具」
「イカルス・モンゴルフィエ・ライト」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
113
ブラッドベリは、昔かなり読んでいてまた再読しようと思い少し奥の棚から取り出してきました。作者による自選短編集で、SFばかりではなく、幻想的あるいは怪奇的な話もあったりします。読んでいてコミックの諸星大二郎さんの作品を思い出していました。私は「火の柱」「孤独な散歩者」「透明少年」などが好みですが、特に「火の柱」などは後の「華氏451度」のもととなるような話です。また、作者がかなりポーやラブクラフトやマッケンなどが好みであったことがわかります。2025/01/18
めがねまる
20
ヴェルヌはぼくの父親、ウェルズはぼくの賢明な伯父さん...どの短編にも共通して、少年の日に読んだであろう小説のイメージが、形を変え叙情的に蘇る。私は全くSFを知らないのだけど、明るい科学に満ちている未来があると思っていた。しかしこの本は未来を恐れている、恐ろしい未来を描いているようだ。暗い影がなくなり光ばかりになった、想像力のない世界を。一方、子どもたちの懐かしい世界もあり、ノスタルジックな感情がそこかしこに溢れている。どの短編も印象深いが特に強く残ったのは「火の柱」だった。2014/09/27
ぜんこう
18
いっぱい既読のものもありました。 怖かったりワクワクしたりゾクっとしたり微笑んだり。 やっぱり火星が舞台になるとワクワクするします。 科学の発展を決して良しとしない話も好きです。2018/04/21
鯖
15
火星に移住した地球人が、火星の環境に適応して全く違う生き物の姿へと短期間で変わってしまう「浅黒い顔、金色の目」や宇宙へのはてなき憧れを描いた「遠くて長いピクニック」どの話も夢いっぱいで楽しかった。ホラー系はさらっと読みました。2015/02/26
スターライト
9
この短篇集には、ロケットや宇宙に対する憧れだけでなく、ホラー成分の濃い作品も含まれている。巻頭の「さなぎ」がまずそうだし、「ぼくの地下室へおいで」「泣き叫ぶ女の人」などもそうだ。個人的なお気に入りは、その傾向に属する「火の柱」。映像化したものを見たい気がする。2014/10/31