内容説明
186X年、フロリダ州に造られた巨大な大砲から、アメリカ人とフランス人の乗員3人を乗せた砲弾が打ち上げられた。ここに人類初の月旅行が開始されたのである。だがその行く手には、小天体との衝突、空気の処理、軌道のくるいなど予想外の問題が!19世紀の科学の粋を集めた本書は、その驚くべき予見と巧みなプロットによって、今日いっそう輝きを増すSF史上不朽の名作である。
著者等紹介
江口清[エグチキヨシ]
1909年生まれ、アテネ・フランセ卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
120
砲弾に乗り込みフロリダから打ち上げられて月世界旅行する3人。構想からして凄いが帰り方は誰も考えていないというギャップも然り、アメリカ人の無思慮と好戦性が鋭く諷刺される。代数の授業を皮切りに地球脱出速度、引力中立(無重力)状態、酸素濃度異常、軌道修正など科学的考察も1860年代にしては驚きの水準。こうした発展の予見性に加えて、ミシェルの機智に富んだ言い回しと度重なるアクシデントで冒険物として成立させる点や、舷窓からの光景に胸を躍らせる主人公らの知的興奮は著者ならではだろう。最後まで奇抜な軌道を描いた大旅行。2021/12/23
Tetchy
103
『月世界旅行』の続編。思わせぶりな前作の結末から5年を経た1870年に刊行された。当時の読者にとってその5年間はいかに長かったことだろうか。しかしヴェルヌの先見性には驚きを禁じ得ない。作中、乗組員の1人が今回の月世界旅行の目的について、全てはアメリカ合衆国が月世界を植民地として手に入れるためだと述べるが、これはまさに100年後、世界の覇者たるアメリカがソ連が有人による宇宙開発計画を打ち立て、そして見事月面着陸を成し得た雰囲気をそのまま備えている。なんとも恐ろしい予見性を感じてしまった。2018/01/05
やいっち
89
「186X年、フロリダ州に造られた巨大な大砲から、アメリカ人とフランス人の乗員3人を乗せた砲弾が打ち上げられた。ここに人類初の月旅行が開始されたのである。」奇想天外というか、奇想ではないが(大砲で宇宙船を打ち上げる宇宙旅行の物語もシラノ・ド・ベルジュラックが先んじていた)、当時としてのサイエンス知見を駆使してヴェルヌならではの空想科学冒険モノを作り上げた。2023/01/17
NAO
64
186X年、人類初の月旅行は、19世紀の科学の知識を総動員した上での作者の想像の産物だ。内部を居住可能にした巨大な砲弾を打ち上げて月まで飛ばすというなんとも驚きの発想だが、空を飛ぶには熱気球ぐらいしか考えられない時代に宇宙に飛び出す方法としては大砲ぐらいしか思いつかなかったのだろう。いろいろな突っ込みどころもあるが、「月には誰かが住んでいるのだろうか?」という素朴な疑問に対する答としては、これはなかなか面白い。そして、作者は、地球の未来まで想像してみせる。それは、未来の人々への警告なのかもしれない。2023/07/31
そばかす♪
26
このお話が書き上げられたのは1869年、なんとアポロが月へ行ったとされる100年前のもの。当時の最新科学ではあるけれど、現代では色々と明らかになった事もあり、その常識となった事が邪魔をするのか読み進めるのがとても難しかった。当時は新聞上で連載されていたとのこと。児童文学と思って読むには内容が高度かも。2015/01/27