出版社内容情報
小泉八雲の全訳や『吸血鬼ドラキュラ』の訳出などに代表される翻訳ほか創作、書評、編纂を通じて本邦における西洋怪奇小説の紹介に尽力し、一家をなした名匠・平井呈一。H・P・ラヴクラフト「アウトサイダー」、ジョン・ポリドリ「吸血鬼」などのアンソロジーピースから、M・R・ジェイムズ、オスカー・ワイルドなどの13編に、生田耕作との対談や伝説の同人誌「THE HORROR」掲載のエッセイ・書評を通して名伯楽の全貌に迫る。まさに集成と呼ぶべき愛好者必携の一冊。
内容説明
『吸血鬼ドラキュラ』に代表される西洋怪奇小説の紹介と翻訳、洒脱な語り口のエッセーに至るまで、その多才を以て本邦における怪奇翻訳の礎を築いた巨匠・平井呈一。名訳として知られるラヴクラフト「アウトサイダー」ほか、ポリドリ「吸血鬼」、ベリスフォード「のど斬り農場」等この分野のマスターピースたる13篇に、対談やエッセー・書評を付して贈る、怪奇小説読者必携の一冊。
著者等紹介
平井呈一[ヒライテイイチ]
1902年東京に生まれる。早稲田大学中退。67年、“小泉八雲作品集”12巻完成により日本翻訳文化賞を受賞。76年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
121
西洋ゴシックホラー翻訳の大家である平井呈一による作品集です。翻訳作品が13収められていて、ラブクラフト、表題作の作家のブラックウッド、M.R.ジェイムズ、オスカー・ワイルドなどです。よく平井さんの訳をけなす人がいますが私はこのような訳で読むと本当にこわさが身に迫ってくるような感じです。そのほか付録として対談やエッセイなどが収められていて大満足でした。ただいつも思うのですが、字を小さいままでできるだけ頁を増やさなくして値段を押さえようとしてくれるのは有難いのですが、年寄りには結構つらいものがあります。2019/09/12
紅はこべ
118
平井氏の訳文は特に風景情景描写に威力を発揮すると感じた。怪談なのに、笑ったのは「カンタヴィルの幽霊」英国の伝統VSアメリカの合理主義科学万能主義、そして愛は勝つ。恐怖とユーモアは両立する。ドラキュラともカーミラとも違う吸血鬼ものが数編。平井生田対談に挙げられた作家作品、読んだものもあるけど、未読未訳も多数と思われるので、出版社の奮起を促したい。ラヴクラフトの復権は平井先生もお喜びかな。2019/10/10
sin
78
私見だがラヴクラフトの存在への飢餓感、未知への憧憬とは対称的に当時のゴーストストーリーの作家たちには腰の引けた怪談趣味という手触りを感じて止まない。それは持って回った表現や否定しながらの肯定に生じたぎこちない恐怖と云う印象から窺える。とはいえ怪異と目される説明のつかない事象が異のほか身近で紳士としては笑い飛ばす他ない立場に置かれた時代としては宜なるかな…いっそジェイムズのように収集家としての割り切った眼差しで怪談を語る手管がどんなにか好ましいことか…ともあれこの本の得難さは後半を締める平井翁の緒評にある。2020/08/14
コットン
67
HANAさんのおすすめ本。平井呈一翻訳による13の短編集。言葉の表現において一部今にそぐわないものがあるものの、古い言い方であるからこそ味わえる雰囲気がありました。最後にエッセー・書評がありそこでのラフカディオ・ハーンの話など面白い。2021/08/22
HANA
67
平井呈一の翻訳を怪奇小説中心にまとめたアンソロジー。著者の翻訳は怪奇小説愛好家にとっては避けては通れないもので、その為収録作ほとんどは既読。それでも二読三読に耐えうるのは作品の魅力か訳者の文体故か。以前読んだ矢野目源一とか対談している生田耕作もそうだけど、この時代の特徴ある翻訳家って外国語はもちろんながら江戸期や明治初期の文体も自由自在に操るイメージがあるね。しかもそれが内容にマッチしてる。泰西の怪奇小説黄金時代やそれに関するエッセイ、さらには詩まで。訳者の業績と怪奇小説を同時に堪能できる一冊であった。2021/08/05