内容説明
あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
245
読んでいる最中は何となく語り手の少女は子供だと思っていたが、読み返してみて、18才と知って、余計恐ろしくなった。白雪姫で、小人達が王子を撃退しようとして戦うという設定だったら、こんな話になったかも。2008/07/29
kariya
144
惨劇の起きた屋敷で、姉妹は幸福に暮らしていた。憎悪を向ける村人達からは閉じた世界へ、従兄が訪れて綻びが生まれ始める。閉鎖した空間での幸せを誤りと断じ、外界に踏み出す姿を描くのは、物語の常道の一つ。けれど、あの「くじ」の作者がそんなありふれた話を書く筈がない。静かに内圧を高めていく緊迫感が融点を迎えた時に、一つの崩壊が小さな世界を襲う。だがこの物語が奇妙な後味を残すのは、狂気の境目の曖昧さにある。より狂っているのは外の世界では? そう思わせる程に、二人の幸せは割れた硝子の欠片のように歪んで不穏で美しい。2009/08/22
優希
135
どこまでも広がる美しくも歪んだ世界。家族が殺された屋敷で姉のコニーと暮らすメリキャットは悪意から目を逸らし、自らの空想の彩る世界の中で暮らすことで幸せの中にいられたのだと思います。外部から閉ざされた世界が彼女たちの全てだった中に従兄・チャールズが来たことで不穏な音楽が流れ始めたように見えました。崩れていく世界と箱庭のような世界を見ていると、どちらが罪の象徴なのかと考えてしまいます。少女であるが故の狂気は閉鎖された中でこそ純粋な輝きを放つのかもしれません。2017/01/21
星落秋風五丈原
127
タイトルだけ聞けば深窓のお嬢様が主人公の、優雅なロマンスものとも思える。だがその想像は冒頭そうそうに打ち砕かれる。なぜならば、主人公のメアリ・キャサリン(愛称メリキャット)・ブラックウッドが好きなのは、所謂お嬢様が好きそうなドレスや男の子達ではなく「妻を毒殺した噂のあるリチャード・プランタジネット」「毒キノコ」そして「一家を毒殺したとされる姉コンスタンス」なのだから。皆が恐れる「毒」を怖がらないメリキャットが恐れるのは、村の子供達や、子供達の後ろにいる大人達の笑顔の下の悪意だ。メリキャットの武器は想像力。2007/11/14
ケイ
121
ああ、私はこのタイプのお話はダメだな。メリキャットがメリキャットなのはもう仕方ないのだけれど、私としてはコンスタンスを引きずり出したい。メリキャット、ただじゃ済ませないからね!と毒づきたくなる。他の方の感想とは、随分と違うみたい。2017/02/18