内容説明
フラニー・マケイブ。クレインズ・ヴューの警察署長で、元不良少年。目の前で死んだ三本脚の犬を埋葬して以来、彼の周囲で奇妙な事件が続く。美しい羽根を残して忽然と家から消えた夫婦。なぜか戻ってくる犬の死体。その上変死した女子学生のスカートから同じ羽根が見つかる。いったい誰が、何を企んでいるのか?そして彼のもとに、使命を携えて謎の男が訪れる。鬼才の新たな傑作。
著者等紹介
市田泉[イチダイズミ]
1966年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪紫
65
「木でできた海をボートでこぐにはどうすればいい?」クレインズ・ビュー三部作完結編にて全編に登場した元不良の頼れる警察署長フラニーの物語。キャロル自体少し読み落とすと、立ち位置わからなくなるのは珍しくないのにこれは他の比じゃない。いや、不思議な現象やフラニーの今昔人生物語からなんでこう、ジャンルごった煮ダークファンタジーが産まれるのだ。未来、宇宙人、昔の自分が現れるなんて聞いても結末込みで予想出来ない。そしてフラニーの周りへの愛情や女性陣がなかなか良い味。ラストの少し前の彼女が本編と合わさると、な。2023/05/11
星落秋風五丈原
16
クレインズ・ヴュー三部作の『蜂の巣にキス』『薪の結婚』では、フラニー・マケイブは事件を捜査する側ではあったが、当事者ではなかった。しかし本作では当事者&捜査する側となり、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ばりの活躍を強いられる。『バック・トゥ~』が引き合いに出されたことからストーリーは想像がつくでしょうが、かなり時制がいったりきたりします。これまで何でもありのアクロバット的展開をやってきたキャロルだけれど、さすがにあの存在が登場したのは本作が初めて。2011/02/02
メイ&まー
16
タイトルの不思議な雰囲気とあらすじが気になって手に取った一冊。最初はミステリなのかな?という感じだったのが、物語が加速するにつれいろんな人間やらそうでないのやらが出てくるわ、時をかけるわ、おっさんが空を飛んじゃうわで混沌としたSFに。おーい、ダレに操られてんの?俺の人生…な感じは『タイタンの妖女』を思い出したりしつつ。本は読み終えたけど、フラニーの難儀な人生双六ははまだまだ続きそう。愛すべきマグダとポーリンの側で。タイトルのような神秘的さはないけど(笑)、ノリがよくて面白かった。2015/03/23
kariya
15
クレインズ・ヴュー三部作最終巻は、比喩や皮肉ではなく至って真面目にSF用語が頻出するが、SFというよりキャロルの小説としか呼びようがない、要するにいつも通りのジャンル・キャロル。他作家が使ったら陳腐でしかない数々の単語も、軋みを上げる現実の異様さを高める一要素となる。そして現と幻どころではなく、過去と未来も判別できない濁流に飲み込まれた先の、奇妙な味わいの感動。残された謎はまだ多く、いずれ再読を心に決めつつ。取りあえずは、スプーンを手に木でできた海へと船を出そう。2009/07/25
訪問者
7
フラニー・マケイブ署長が大活躍する本作。吹っ飛んだ展開はさすがジョナサン・キャロルであり、遂には地球外生命体まで登場する。マケイブがこの異星人の能力を証明させるための要求が何とも面白い。彼らの登場シーンにはびっくり。それにしても本作に続くキャロルの新作が翻訳されていないのは、一体どういうことだろう。確か長編が4作ほどあるはずだ。創元社によると「売れないんですよ、キャロルは」と言う事らしいが。求む、キャロルの日本語訳新刊!2018/12/28