内容説明
天をついて聳えたつ館。それは外界から隔絶され、ひとつ屋根で覆われた巨大な都市のごとくであった。果てしなく続く、見も知らぬ1000のフロア…。館の中、おれは記憶を失った状態で目覚めた。わずかな手掛かりから得られたのは、どうやらおれが探偵であること。名はピーター・ブローク。捜し求めるは失踪したタマーラ姫の姿。打ち倒すべきは館の主、神とも悪魔とも噂される全能の男オヒスファー・ミューラー。やがて館の中に蠢きはじめる叛乱の影…。この館がいざなうのは、はたして星の世界か、あるいは地獄か?迷宮さながらの世界を駆けめぐる、あなたの探索行が幕を上げる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
50
千階建ての建造物、迷宮の如きその中を探偵は姫を追って彷徨する。対するは館の主。という粗筋からヒロイックファンタジーを想像しつつ読んだのだが、実際は際限ない館内を彷徨わされる悪夢を覗いているような感覚を味わされた。ぶつ切りのフィルムみたいなストーリーと唐突な場面転換がそれに輪をかける。ただこういうの嫌いじゃない。戦前の作品にもかかわらず、館の主の行動といいある政党を連想させる行為といい、SF,幻想文学と同時に見事なディストピアものでもありました。あとラストある映画を想像したけど、こういうの流行ってたのかな。2017/11/24
山口透析鉄
22
これ確か、川又千秋氏がSFマガジンの書評記事で取り上げていて、それで図書館本を借りて読んだと記憶しています。 非常に不思議な幻想小説といった感じの作品で、ページのノンブルからして工夫されていて、もうその辺からお見事でしたね。 この塔って何かの暗喩なのでしょうが、あまりその辺を勘ぐっても面白くはないというか。 終わり方からすると、そりゃないよというようなオチではあるんですが、あまり意味はないんで、これ、再読したいですね。実はけっこうな傑作だと思いますよ。1987/09/12
るすみら
19
一人の男が目を覚ます。真紅の絨毯が敷かれている階段、大理石の柱、欄干。自分は誰なのか、ここは何処なのかもわからない中、彼は階段を登りだす…。1929年に刊行された本書。翻訳のせいなのか原文がそうなのか、古さを感じさせない事に驚いた。RPGゲームを思わせる物語がテンポよく進み、この先はどうなっているのかと先を読むのを急がせる。ただし、物語の終りはあまりに酷くてのけぞった。作者が存命なら、文句を言いに行きたい程。でも、ラストがダメでも何となく憎めない物語。人徳ならぬ「本」徳みたいなのがあるのかも。2010/06/10
KI
17
想像し得ることは、すべて起こり得ることなのか。2018/10/14
けいちゃっぷ
15
1000階建ての建物の内部は丸々一つの国か世界のよう。 階段で目覚めた男(探偵)はタイトル通り迷宮の世界を姫を守るために彷徨う。 90年前に書かれたことを肝に銘じて読むべきとは思うが、なんだかとっ散らかっている印象が。 ディストピアな恐ろしい世界ではあったが、ラストはご愛嬌かな(伏線らしきのは散見されたが)。 333ページ2018/01/30