内容説明
19世紀半ばのアメリカで活躍し、偉大な足跡を残した夭折の天才オブライエン。顕微鏡学者が水滴の中に極小宇宙を見出す「金剛石のレンズ」、ロボット・テーマの古典「ワンダースミス」等の幻想科学小説から、魔法の支配する奇怪なホテルでの冒険を描く怪作「手から口へ」まで、“変幻自在の小説の魔術師”が33年の生涯のうちに物した傑作群から、本邦初訳作を含む14篇を精選する。
著者等紹介
大瀧啓裕[オオタキケイスケ]
1952年、大阪市生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
55
煌びやか且つ残酷な幻想小説集。表題作で思い出したのは、パタリロ7巻でのダイヤの美少年の話でした。でも顕微鏡のレンズの材料となるダイヤを手に入れるのに人を殺すのはいかんよ・・・。ダイヤの中の彼女は元の所有者であるシモンによって生かされていたのかもしれないと考えると主人公の末路は良い復讐となったのではないでしょうか。「失われた部屋」の不条理さ、未知の遭遇を描いた「あれは何だったのか」が好き。「手から口へ」は主人公の自意識過剰ぶりにムカつきながらもオチに驚愕。主人公はいいとして、残されたあの子はどうなるのさ。2014/10/12
miroku
23
書かれた年代もあり、表題作の疑似科学的部分はつらいものがあるが、その幻想は美しい。2018/05/22
星落秋風五丈原
20
「From Hand to Hand手から口へ」 作家ウルマン氏はオペラの帰りに鍵を開けようとするが、なぜか開かない。外は雪で寒い。ぼろを着た少年達の所にでもしけこもうか、と考えていた時に「私のホテルでただで一晩過ごさない?」と、めっちゃいい話を持ち掛けられる。はい、いい話には裏がある。そのホテルの壁には目、口、鼻、手がついていた(キモすぎる!)。そしてウルマンに課されたのは、毎日コラムを書く事だった。作家とはいえ気難しいウルマンは、原稿なんてまっぴら御免だったが、何とそこで金髪の美女ロザモンドと出会い。2023/07/15
相楽(twitter:sagara1)
8
表題作、これが1858年の作品なんだ!?乱歩『鏡地獄』でも1926年だっていうのに。/『墓を愛した少年』の凝縮された哀感は、そのいかにも古風なところ(最後の一行に顕著)も含めて美しいと思う。/『手から口へ』の「手」と「口」がなんだか好きでたまらない。そして、締めくくりの投げやりっぷりもむしろ妙に楽しい。各章題も「十三、莫迦らしい章、わたしもそれはよくわかっている」を始め、面白いものが多い。2009/03/22
乙郎さん
8
今から150年も前にこんな小説があったのか。ポーより断然現代に通用すると思う(ポーは狂気が強すぎる)。そこはかとなく漂うダメ人間的思考が魅力的。「ワンダースミス」は冒険小説の王道といえば王道だが面白い。これがマイベストかな。2009/02/14