感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
20
古めかしい怪談譚が読みたくて手に取ったアンソロジー。その意味では期待通りで、そうそう、こういう感じで長々と前置きがあって始まるんだよな、あんがい身もふたもない現れ方するんだよな、と楽しみました。個人的なお気に入りは、ちょっとユーモラスでもある幽霊譚「慎重な夫婦」、主人公の追い詰められ方が、主人公以外にははっきりと分かる流れとラストが怖い「手招く美女」でした。2022/06/07
Ribes triste
17
怪談ともSFともミステリともいえそうな不思議な短編たち。どこかユーモラスな「象牙の骨牌」「慎重な夫婦」が好みでした。平井呈一さんの選出の妙、堪能しました。2020/01/26
Kouro-hou
12
古典怪奇小説アンソロジー1/2。平井呈一先生全編訳という事で大変粒の揃いがよろしいです。コワイ!寝られない!みたいなのは今となってはあまりないですが、古典怪奇小説の底にあるエレガントさが好きな当方としてはたまらないセレクトであります。 ウェイクフィールドの「防人」は一歩間違うとギャグになりそうですが、そんなネタ一点豪華全力投球なところが大好きです。ミセス・ヴィール、クロウル奥方、ラント夫人と嫁の幽霊多すぎですよ、奥さん! しかし表現がダブらないように全編的に配慮されているのもなかなか凝ってて良いです。2014/01/05
三平
11
西洋の怪談小説を集めたアンソロジー。明治生まれの訳者による翻訳だけあって古臭さはどうしても感じるのは否めない。 正直、あまり恐怖を感じるものはないな……と読み進めていったのだが、最後の『手招く美女』(オリヴァー・オニオンズ)だけが桁違いに怖かった。古典恐怖小説の傑作『黄色い壁紙』を彷彿とさせる精神崩壊系の作品。ちょっとした音、微妙な光と闇の揺らぎ、どことなく感じる気配。実物そのものは現れないものの、確かに“何か”がいる。家の魔力に取り込まれ少しずつ狂っていく主人公。最後まで目に見えない恐怖の方が怖い。2016/09/24
歩月るな
11
85年初版。読んでみたかったものが詰まっている素晴らしいアンソロジー。平井訳の『消えちゃった』もさすがに小気味いい。『象牙の骨牌』はとてもクールで鮮やかな話。怪談話としても結末の纏めが簡潔で素晴らしい。『ブライトン街道で』は本当に読んでみたかった。滅茶苦茶短いため思わず三回読んだ。シンクレア作品が読めたのも嬉しいしウェイクフィールドも手応え十分。『手招く美女』は小説家の物語でマッケンの『夢の丘』に並ぶ重く辛い話。あちらは幻想文学で小説家を志す若者、こちらは四十路を越えた作家で妙に対照的だが本当に息苦しい。2015/09/06