出版社内容情報
心に傷をかかえた書物の魔道師キアルス、心に闇をもたぬ大地の魔道師レイサンダー、若きふたりの運命が太古の闇を巡り交錯する。『夜の写本師』の著者が放つ闇と魔法の物語。
内容説明
こんなにも禍々しく怖ろしい太古の闇に、なぜ誰も気づかないのか。繁栄と平和を謳歌するコンスル帝国の皇帝のもとに、ある日献上された幸運のお守り“暗樹”。だがそれは次第に帝国の中枢を蝕みはじめる。闇をもたぬ稀有な魔道師レイサンダー、書物の魔道師キアルス。二人は人々を破滅に導く太古の闇を退けることができるのか。『夜の写本師』で読書界を瞠目させた著者の第二作。
著者等紹介
乾石智子[イヌイシトモコ]
山形県生まれ。山形大学卒業。1999年教育総研ファンタジー大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
63
前作で老練な印象のあったキアルス、若い頃は突っ走っていたのだなぁ。自身の編み出したギデスディン魔法を四苦八苦しながら完成させようとする成長譚と、能天気なレイサンダーの内面を見つめる過程、更にテイバドールの闘いを避ける為の闘い。三者三様に読み応えあった。ちらりと語られた暗樹と闘い命を賭けた魔道師たちの物語も、散りばめられた宝石のよう。ラストも悪くない、好き嫌いは別れるかもしれないけれど。2015/05/17
penguin-blue
48
前作「夜の写本師」の完成度と作品世界が衝撃的だったのがかえって災いして二作目を読むまで時間が空いてしまったが、前作とまではいかないまでもこちらも十分好み。まだ若く自分の道や魔術を模索中の二人の魔道士レイサンダーとキアルスが太古からの暗黒の象徴「暗樹」を滅するため共に闘う。登場人物の若さ故か、頁数の問題か、ふたりのキャラやストーリーにもう少し描きこみが欲しかったが、交錯する遠い時代の話も含め世界観は好きなのでまた少しおいて続編も読むと思う。しかし、レイサンダーは劇薬飲んじゃったようなものだけど大丈夫なのか?2017/10/15
tom
45
ファンタジーって世界観が気に入るかどうか、が大きくて、そういう意味ではやっぱりとても好み。ただ自分が読んだタイミングが悪くてどっぷり浸かりきれなかったので、余裕ができた時にしっかりまた堪能したいです。2018/03/06
くたくた
41
『夜の写本師』でシルヴァインが惨殺されたすぐ後のキアルス。苦しみ悶えながら酒に逃げ、酔った勢いで貴重な『タージの歌謡集』を燃やしてしまう。以降、タージの歌謡集の復元が彼の使命になる。一方、太古の闇〈暗樹〉が時の権力者の手に渡るところに居合わせてしまったレイサンダー。キアルスが復元を試みる本が実は〈暗樹〉を封じる方法を記した本だと分かり、二人は協力して暗樹に対抗する。キアルスとレイサンダーの性格の対比と二人の友情、軍人ムラカンの正義と潔さ、緻密な世界観と幻視の情景。どんどん引き込まれ一気に読了。面白かった!2025/01/20
Haru
36
『夜の写本師』の世界の前、ギデスディン魔法を作り出したキアルスと、魔導師としては異端の「闇を心に持たない」レイサンダーの物語。太古から存在し誰の血の中にも流れ込んでいる「闇」。自分の一部である「闇」とどう付き合っていくかが人間性を形作るのだろう。その「闇」そのものである「暗樹」と二人の魔導師との攻防。光なくして闇なし。逆もまたしかり。人として不安定だった二人の成長譚でもある。作中、「胡桃の殻のような一部分があって、中にはどうやら侮蔑の実がつまっているらしい」とジアトルスの心を表すところが素晴らしい。2014/12/28
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