内容説明
クトゥルー?ヨグ・ソトト?意味不明の言葉が連なる古い手紙。屋根裏部屋に鎖で固定された一対の手錠。片田舎の屋敷を相続した牧師リーランドが見たものは、父の死と関係があるのか?繰り返す悪夢。妻への殺意。やがて彼は、魚類を思わせる異様な容貌の娘ミナに、なぜか心魅かれていく。それが魔界への第一歩とも知らずに…。異端の詩人がラヴクラフトに捧げる恐怖の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
21
クトゥルフ神話を元にしているのに、いわゆるクトゥルフ神話的なコズミック・ホラー感は無い。描かれているのは狂気と正気の間でたゆたう力無き人間の精神。主人公が聖職者として人間として纏っていたものが剥ぎ取られていき、行き先さえ知れぬ道行の中で壊れていく変化の様を読む小説。訳者あとがきの物語解明が深く、〈レビアタン〉としての神話的・心理学的解釈は実に興味深い。ただ、ラストは単に超宇宙世界に行っちゃったのだと思うけれど。2015/10/17
マーブル
16
不気味な湿度と理由なき汚臭を感じさせる気配の中、ストーリーは淡々と進む。唐突に終わりを告げた日常。そして説明も与えられず落ち込む地獄のような暗闇・・・。なんだ、こいつは?。「この小説がなんのか、あなたにはわかりますか?」そんな挑戦状を突きつけた作品、と解説で述べている。確かに多くのことが理解できぬまま気味の悪い描写の印象だけが残る読書となった気もした。クトゥルフ神話との関連をどこに見ればいいのか不明なまま読み進んだ。しかし一見遠回りのような解説を読み、その深き暗い闇の底をもう一度潜り込んでみたくなった。2021/08/29
茶幸才斎
3
その部屋の微に入り細を穿つ不穏な描写が、彼の行く手の不吉さを最初に暗示する。ピーター・リーランドは亡き祖父母の農場と屋敷を相続し、妻のシーラと移り住んだ。しかし、敷地内の借地人小屋には謎めいたモーガン一家が住んでおり、ピーターは魚のような顔立ちの娘ミナに何故か惹かれる一方、妻との間には諍いが徐々に募る。そして、全てが一変する。広大無辺の宇宙にあって、人の心に兆す幸福や苦痛に一体どんな意味があるのか。永劫の時の流れの果てに死を超ゆるものの視点とは、狂気の詩人による不健全な思索の先にしか見果て得ないのだろう。2025/07/18
ブー
3
衝動買いの一冊。タイトルから直ぐに「クトゥルー神話」系を連想し、買ったが・・・邪神系ではなく、どちらかっていうと、人間の内なる狂気と狂喜と正気とが入り乱れ、一人の人間の心が壊れそして、暗黒神を見る【感じる】ことによって、無限の境地へと導かれて行く。おそらく「クトゥルー神話」を知らなくても面白い。知っていればもっと面白く読める作品。おそらく主人公は肉体をなくし、魂だけの存在となりアカシック・レコードを垣間見たのであろう・・・2010/09/22
不以
2
わりと官能的だったような気がしなくもない2012/05/05